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特集 理学療法と下肢装具
理学療法と下肢装具
著者: 吉尾雅春1
所属機関: 1千里リハビリテーション病院
ページ範囲:P.281 - P.289
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下肢装具は末梢神経障害や脳卒中・脊髄損傷などの中枢神経障害による下肢の支持性や歩行時の足部のクリアランスのため,下腿の骨折部の保護と免荷のために用いるなど,多岐にわたる.そのため,本稿では脳卒中患者に対する装具療法に絞って解説する.
脳卒中患者に対して用いる下肢装具についてはいくつかの視点がある.運動療法を行ったうえでこれ以上の機能改善は望めないということで,想定される生活のために用いる更生用すなわち生活用装具,歩行練習や動作練習の過程で下垂足や内反尖足による足先の引っかかりなどを制御して動作効率を上げるための装具,そして運動療法を効果的に進めるための道具として装具を用いる治療用装具である.装具療法とは効果的な運動療法を行う目的で装具を活用することと解釈でき,後者2つがそれに当たる.それぞれに相応の合理性をもつが,「脳卒中治療ガイドライン2009」および同ガイドライン2015において,装具を用いた早期からの立位・歩行練習が推奨された1,2)ことは特筆すべきことである.もちろん,運動麻痺が軽度で装具を用いなくてもよいと思われる症例も多い.しかし,脳のシステム障害を考えたとき,随意性だけでなくフィードフォワード制御の障害を含んでいることも少なくなく,確たる評価に基づく戦略の選択が必要である.
脳卒中患者が治療のために用いる下肢装具は,それ自体が治療的意義をもつものではなく,理学療法士が行う運動療法と併せてこそ機能が発揮されるものである.そのため,脳卒中患者の装具療法では,装具自体の機能特性について知るだけではなく,理学療法士が立てる治療戦略が科学的根拠に基づいていること,装具をうまく操作して運動療法を効果的に実践できることが求められる.
下肢装具は末梢神経障害や脳卒中・脊髄損傷などの中枢神経障害による下肢の支持性や歩行時の足部のクリアランスのため,下腿の骨折部の保護と免荷のために用いるなど,多岐にわたる.そのため,本稿では脳卒中患者に対する装具療法に絞って解説する.
脳卒中患者に対して用いる下肢装具についてはいくつかの視点がある.運動療法を行ったうえでこれ以上の機能改善は望めないということで,想定される生活のために用いる更生用すなわち生活用装具,歩行練習や動作練習の過程で下垂足や内反尖足による足先の引っかかりなどを制御して動作効率を上げるための装具,そして運動療法を効果的に進めるための道具として装具を用いる治療用装具である.装具療法とは効果的な運動療法を行う目的で装具を活用することと解釈でき,後者2つがそれに当たる.それぞれに相応の合理性をもつが,「脳卒中治療ガイドライン2009」および同ガイドライン2015において,装具を用いた早期からの立位・歩行練習が推奨された1,2)ことは特筆すべきことである.もちろん,運動麻痺が軽度で装具を用いなくてもよいと思われる症例も多い.しかし,脳のシステム障害を考えたとき,随意性だけでなくフィードフォワード制御の障害を含んでいることも少なくなく,確たる評価に基づく戦略の選択が必要である.
脳卒中患者が治療のために用いる下肢装具は,それ自体が治療的意義をもつものではなく,理学療法士が行う運動療法と併せてこそ機能が発揮されるものである.そのため,脳卒中患者の装具療法では,装具自体の機能特性について知るだけではなく,理学療法士が立てる治療戦略が科学的根拠に基づいていること,装具をうまく操作して運動療法を効果的に実践できることが求められる.
参考文献
1)脳卒中合同ガイドライン委員会(編):脳卒中治療ガイドライン2009.協和企画,2009
2)日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会(編):脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画,2015
3)木村忠直,他:大腰筋筋線維構成の比較解剖学的研究.昭和医会誌51:509-513,1991
4)吉尾雅春:装具療法.原 寛美,他(編):脳卒中理学療法の理論と技術,第2版.pp310-322,メジカルビュー社,2016
5)土屋和雄,他(編):シリーズ 移動知 第2巻 身体適応—歩行運動の神経機構とシステムモデル.オーム社,2010
6)河島則天:歩行運動における脊髄神経回路の役割.国リハ研紀30:9-14,2010
7)Schmahmann JD, et al:Cognition, emotion and the cerebellum. Brain 129:290-292, 2006
8)増田知子:回復期脳卒中理学療法のクリニカルリーズニング—装具の活用と運動療法.PTジャーナル46:502-510,2012
9)Turlough F,他(著),井出千束(監訳),杉本哲夫,他(編):臨床神経解剖学,原著第6版.医歯薬出版,2013
10)Jang SH, et al:The anatomical location of the corticoreticular pathway at the subcortical white matter in the human brain:A diffusion tensor imaging study. Somatosens Mot Res 32:106-109, 2015
11)Leichnetz GR:Connections of the medial posterior parietal cortex(area 7m)in the monkey. Anat Rec 263:215-236, 2001
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