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特集 理学療法と下肢装具
歩行獲得を目的とした装具療法—長下肢装具の使用とその離脱
著者: 大畑光司1
所属機関: 1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
ページ範囲:P.291 - P.299
文献購入ページに移動脳卒中後片麻痺患者の歩行機能改善に向けたトレーニングにおける最も重要なトレーニング戦略は高頻度の課題特異的アプローチである.日本脳卒中学会の「脳卒中治療ガイドライン2015」1)において,歩行トレーニングや下肢トレーニングの量を多くすることが歩行機能改善に有効であるとされており,高頻度課題特異的アプローチの重要性は強く認識されている.この理由として,下肢トレーニング時間を30分追加することで歩行機能改善に対して有効であったとする報告2)や,歩行速度の改善は歩行トレーニング時間に相関するとする報告3)などのさまざまな根拠が示されており,歩行機能を再建するための重要な指針であると言える.
しかし,歩行機能改善をめざすアプローチのなかでも,特に歩行が自立していない患者に対する歩行再獲得に向けたアプローチはどう考えればよいだろうか.急性期もしくは重症のため歩行ができない患者を想定した場合,この高頻度,課題特異的アプローチ戦略をそのまま当てはめることはできない.なぜなら,歩行をトレーニングしようとしても,トレーニング課題である歩行そのものを対象者が実施することができないからである.この矛盾に対応するための代替手段として,課題そのものの性質は異なるが類似した課題特性をもつようなトレーニングを用いて,その学習効果を転移させることをめざした練習が行われる.
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