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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル51巻9号

2017年09月発行

文献概要

特集 ACL損傷と動作

ACL損傷と評価すべき動作

著者: 森口晃一1 鈴木裕也2

所属機関: 1医療法人一寿会西尾病院リハビリテーション科 2社会医療法人製鉄記念八幡病院リハビリテーション部

ページ範囲:P.757 - P.762

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はじめに

 膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷は,スポーツ活動において発生しやすく,特にアスリートにとっては選手生命を脅かすことにもなりかねない,スポーツ外傷のなかでも重篤な疾患の一つである.その受傷機転は,選手同士の接触に加え,ジャンプ着地や急な方向転換など非接触場面でも多く発生することが知られている.

 ACL損傷のメカニズムについて,Kogaら1)は受傷場面をビデオ解析し,ジャンプ着地やストップ動作において接地後40ms以内に生じる膝関節の急激な外反と内旋がACL受傷と関係していると報告した.また,Bordenら2)は,ACL損傷時の足関節と股関節の運動に着目し,ACL損傷者は受傷時の足部・足関節の肢位・運動に問題があったことを指摘した.そのなかで,ACL損傷者は初期接地時に後足部か足底全体で接地し,足関節の角度変化がほとんどなかったのに対し,非損傷者は初期接地時に足関節を底屈し,足関節の角度変化が大きかったと述べている.

 ACL再建術後にスポーツ復帰をめざす場合,難度の高い課題動作において,脛骨の前方引き出しや膝関節の過度な回旋ストレスが生じるような身体機能を有していると,再受傷につながることになる.臨床場面では,再建靱帯のリモデリング過程や術後の経過期間ならびに関節機能に応じて,段階的に動作評価を行い,スポーツ復帰に向けた準備を図ることが求められる.そこで,本稿では筆者らが行っているACL再建術後症例に対する動作評価について述べる.

参考文献

1)Koga H, et al:Mechanisms for non contact anterior cruciate ligament injuries:knee joint kinematics in 10 injury situations from female team handball and basketball. Am J Sports Med 38:2218-2225, 2010
2)Borden BP, et al:Video analysis of anterior cruciate ligament injury:abnormalities in hip and ankle kinematics. Am J Sports Med 37:252-259, 2009
3)田中龍太,他:膝前十字靱帯再建術後における競技復帰時期の膝筋力の検討—性別・スポーツレベルを考慮した目標値.日臨スポーツ医会誌24:51-57,2016
4)浦辺幸夫:女子バスケットボール選手のスポーツ復帰,再発予防そして損傷予防へ.理学療法学40:618-623,2013
5)森口晃一:膝前十字靱帯再建術後患者の動作能力の調査.済八幡医誌1:53-56,2010
6)藤井康成,他:Knee-inのメカニズムの解明—動的Trendelenburg testを用いた骨盤機能評価とknee-inとの関連性.臨スポーツ医21:827-831,2004
7)森口晃一:knee-in現象を改善する.福井 勉(編):ブラッシュアップ理学療法—88の知が生み出す臨床技術.pp261-264,三輪書店,2012
8)森口晃一,他:片脚スクワット動作時の骨盤運動と膝関節伸展モーメントの関係—ACL再建術後の身体運動機能評価として.理学療法学39(Suppl 2):120,2012
9)森口晃一,他:膝前十字靱帯再建術後症例のスポーツ復帰状況と身体運動機能との関係.九州山口スポーツ医研会誌25:83-85,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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