超音波による評価が理学療法に有効であった変形性足関節症の一症例
著者:
赤羽根良和
,
一氏幸輔
,
小瀬勝也
,
棚瀬泰弘
,
栗林純
ページ範囲:P.79 - P.84
要旨 変形性足関節症が起因となり,歩行時に足関節外側部痛と前方部痛を有した症例を経験した.X線所見ではthe angle between the tibial shaft and the tibial joint surface on the anteoposterior view(TAS)角の減少,距骨の内反化,踵骨の回外位が確認され,脛骨下端前方の骨棘と距骨頸部の変形によって足関節の背屈可動域を求めることは困難と判断した.理学所見では距腿関節の外側面に圧痛があり,歩行時にこの部位に疼痛を訴えたことから腓骨外果関節面と距骨外側面とが離解し,ここを連結する組織に牽引刺激が加わったと考えた.また,足関節背屈時に前方部痛を認めたが,これは距腿関節の前方インピンジメントが原因と考えた.
理学療法では回内可動域の増大を目的としたストレッチングと回外筋力のエクササイズを行った.足底挿板では踵骨および距骨下関節を水平位に矯正することで足関節外側部痛は軽快し,さらに足関節の背屈可動域の不足分をヒールアップで補正したことで足関節前方部痛は消失した.しかし,ヒールアップによって第1リスフラン関節の伸展が強要されて疼痛を惹起した.そのため,ヒールアップを除去し,母趾中足骨底の近位に中足骨パッドを貼付することで,リスフラン関節の伸展を制御し,疼痛は消失した.また,超音波画像から足関節の背屈に伴う前方インピンジメントが否定されたため,背屈可動域を増大させていった結果,前方部痛は消失した.今回,超音波画像を用いることで,可動域の増大が期待できると判断した.超音波画像は,関節内運動を視覚的に観察できるため,理学療法士にとって有用なツールになると考えられる.