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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル52巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 筋力低下と理学療法

筋力および筋力低下の生理学

著者: 後藤勝正123 吉岡利忠3

所属機関: 1豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学分野 2豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科 3弘前学院大学

ページ範囲:P.5 - P.14

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はじめに

 一般に,筋力は骨格筋の収縮力による.ただ,筋力=骨格筋の収縮力ではない.その理由は,私たちが測定する筋力は,骨格筋の収縮力により駆動されるモーメントを測定しているケースがほとんどだからである.このモーメントは,主動(作)筋と拮抗筋さらには共同筋など複数の筋の収縮力が作用した結果として発生する.

 また,モーメントはアーム長も大きな要因である.本稿では,筋力およびその低下を考えるが,そのような場合には,モーメントのアーム長は考慮しなくても問題はない.なぜなら,人体内ではモーメントのアーム長は短期間では変化しないからである.したがって,仮に筋力が低下した場合,それはモーメントの発生に関与する筋力(主動作筋や共同筋の収縮力から拮抗筋の収縮力を差し引いたもの)が低下したことになる.このように,筋力=骨格筋の収縮力と単純に考えるのは危険である.

 一方で,モーメントを発生させている複数の骨格筋の収縮制御機構は非常に複雑であり,それぞれを評価するのは困難である.そこで本稿では,骨格筋の収縮力を「筋力」として取り扱う.

 骨格筋の収縮は,中枢神経系からの収縮信号が末梢神経の運動神経を介して,骨格筋細胞(筋線維)に伝達され,収縮蛋白による力発生により具現化される(図1).本稿では,筋力の調節とその低下について,収縮蛋白から骨格筋細胞膜の興奮と筋細胞内Ca2+濃度の制御,神経筋接合部,運動単位,中枢神経という順に概説する.一般には,中枢神経系の制御からミクロな制御機構へ説明するのであるが,本稿ではミクロな視点での説明を多くするためにあえてこの構成としている.また,各項目ともに単独で読んでも理解できるような記述を試みた.興味がある部位における筋力の調節と筋力低下の要因について個別に参照していただければ幸いである.

参考文献

1)後藤勝正:神経—筋.大日方 昴(監),山田 茂,他(編):運動分子生物学.pp125-144,ナップ,2000
2)石原昭彦:運動神経細胞と筋力発揮の多様性.吉岡利忠,他(編):筋力をデザインする.pp33-49.杏林書院,2003
3)宮田浩文:神経筋伝達機構の疲労とトレーニング効果.吉岡利忠(監),山田 茂,他(編):分子の目で見た骨格筋の疲労.pp14-24.ナップ,2003
4)Henneman E, et al:Functional significance of cell size in spinal motoneurons. J Neurophysiol 28:560-580, 1965
5)木村瑞生:神経制御と筋力増強.吉岡利忠,他(編):筋力をデザインする.pp65-78.杏林書院,2003
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8)Hu X, et al:Assessing altered motor unit recruitment patterns in paretic muscles of stroke survivors using surface electromyography. J Neural Eng 12:066001, 2015. doi:10.1088/1741-2560/12/6/066001
9)Chou LW, et al:Motor unit rate coding is severely impaired during forceful and fast muscular contractions in individuals post stroke. J Neurophysiol 109:2947-2954, 2013
10)Hu X, et al:Altered motor unit discharge patterns in paretic muscles of stroke survivors assessed using surface electromyography. J Neural Eng 13:046025, 2016. doi:10.1088/1741-2560/13/4/046025

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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