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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル52巻2号

2018年02月発行

文献概要

講座 知的財産権を知る・2

医学研究と知的財産権との関係性

著者: 石埜正穂1

所属機関: 1札幌医科大学医学部先端医療知財学

ページ範囲:P.159 - P.164

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アカデミアの研究と特許

 筆者は大学院に入って以来20年余の間,大学の実験室でずっと基礎医学研究に没頭していました.しかし機会あって弁理士の資格を取得したことをきっかけに,大学の研究を有効な知的財産(知財)にして社会実装する産学連携の仕事を任されるようになり,現在に至っています.この仕事をしていてまず感じたのは,特許に対し誤解を抱いている研究者が多いということです.例えば少なからぬアカデミア研究者は,特許は技術の独り占めやお金儲けのためにある,という(漠然とした)イメージをもっています.そして,そういった商売的な臭いのする特許の出願を警戒します.

 ノーベル賞の授賞式などでも,「みんなに技術を活用してほしいから,特許をとらなかった」などと格好のいい発言をする研究者をときどき見かけます.「みんなに技術を活用してほしい」という気持ちは,もちろん真実だと思います.実際に研究が広く活用されたからこそノーベル賞をもらえたのも確かでしょう.でも本当に,「特許をとらなかった」から活用してもらえたのか.そこは,少し考えてみる必要があります.ちなみに,このような発言をしたノーベル受賞者のなかには,実際は特許を出そうと考えたものの,周囲にそれをサポートする環境がなかったために,結局叶わなかったというケースもあるようです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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