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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル52巻5号

2018年05月発行

雑誌目次

特集 視床出血と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.385 - P.385

 視床出血のなかの約40%は四肢体幹の体性感覚の中継核である後外側腹側核を中心に発生する.しかし,その血腫は同核を越えてさらに広範囲に及ぶ.また,残りの60%の出血は他の視床核で発生する.視床核は脊髄,小脳,脳幹,大脳基底核,大脳皮質を中心として極めて機能的な線維連絡をなしている.さらに視床の周囲には内包や視床下部などが存在していることから,視床出血という診断には多種多様の病態が内在していることを知る必要がある.

視床と周辺の機能解剖

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.389 - P.396

はじめに

 視床(thalamus)はその解剖学的位置から若い女性の寝室や新婚の寝床という意味をもつギリシア語に由来している.もともと視ることにかかわる言語であるopticusが付いて視床と翻訳されたものであるが,視床の機能が明らかになり,英語ではthalamusのみの表現になっている.

 視床は脳幹と終脳との間に位置する間脳の中心的存在で,身体の内外から大脳皮質に伝えられる情報の中継核であり,また基底核ネットワークや小脳ネットワークの一部をなす神経核の集合体である.それらを結ぶ神経線維以外にも,視床の外側に位置する内包後脚および内包膝を下降する線維は視床出血により損傷される可能性がある.つまり,視床出血という診断には複雑多岐な障害を含んでいることになる.

 本稿では視床の機能解剖をはじめ,視床出血患者の理学療法に重要と思われる情報をできる限り簡潔に紹介し,各論の理解の一助とする.

後外側腹側核を中心とした視床出血と理学療法

著者: 山口祐太郎

ページ範囲:P.397 - P.406

はじめに

 視床出血の好発部位として視床膝状体動脈や視床穿通枝動脈が報告されている1).視床損傷では,感覚障害が表現されることが多いように感じる.それは,体性感覚の中継核である視床の後外側腹側核(ventral posterior lateral nucleus;VPL核)の灌流域である視床膝状体動脈は視床出血の好発部位であり,その灌流域の出血により感覚障害を伴う症例が多いからではないかと考える.そして,視床出血=感覚障害という病態のイメージが定着しているように感じる.しかし,視床損傷で生じる症状は感覚障害以外に多岐にわたる.

 本稿ではVPL核を中心とした視床出血の症例経験を通して,病態整理とそれに対する理学療法を解説する.

背側核群を中心とした視床出血と理学療法

著者: 中村学

ページ範囲:P.407 - P.413

視床の支配動脈

 視床の背側核群は傍正中動脈(脳底動脈の先端部もしくは共通幹から左右に分岐),視床結節動脈(後交通動脈の中央1/3から分岐),視床膝状体動脈(後大脳動脈の穿通枝)が灌流している(図1).傍正中動脈は(dorsal medial nucleus;DM核),髄板内核,束傍核に灌流し,傍正中動脈の閉塞により記憶障害や意識障害が生じる.また傍正中動脈は一側が両側の視床を支配している亜型が多数存在する1)

 一側の傍正中動脈病変で両側の視床への血流が途絶えてしまうと,記憶障害や意識障害がより重度となる.視床結節動脈は前腹側核,外側腹側核(ventrolateral nucleus;VL核),DM核腹側に灌流し,性格変化や時間や場所の失見当識,健忘がみられる.左病巣では言語性と視覚性の前向性健忘が,右病巣では視覚性前向性健忘がみられる.

前腹側核を中心とした視床出血と理学療法

著者: 野田裕太 ,   松葉好子 ,   萩原章由 ,   石田由佳

ページ範囲:P.415 - P.423

はじめに

 視床は大脳半球と脳幹を中継する間脳の大部分を占め1),内側面が第三脳室に,外側面は内包後脚に面し位置する神経核の集合体である.視床核は嗅覚を除くすべての感覚路や,小脳,大脳基底核を含むさまざまな求心路から入力を受け,これらを視床皮質路として大脳皮質の各所に中継するとともに,皮質視床路として大脳皮質からの投射を受けることで感覚や運動だけでなく,注意,記憶,言語や情動など大脳皮質が担う機能の多くに関与している1).視床はこのように多くの機能に関与しているため,出血による損傷を受けると多様な臨床症状を呈する.またその脳内における視床の位置から,血腫の進展やそれによる圧排や浮腫によって,内包を走る投射線維への影響も出現する.理学療法を行ううえでは,これら機能解剖を理解するとともに,臨床症状を考慮した施行が望まれる.

 本稿では,視床前腹側核(ventral anterior nucleus;VA核)を中心とした視床出血の理学療法についての話を進めるにあたり,VA核ならびに周辺の解剖と機能について,神経核としてのVA核の損傷,中継核としてのVA核の損傷によって起こるネットワークの障害,VA核を中心とした出血による内包を通る投射線維の損傷という3つの面から述べる.その後,後方視的に調査したVA核を中心とする出血を呈した症例を通じて,臨床症状から考えられる理学療法のアプローチを提示したい.

視床・被殻混合型出血の理学療法

著者: 加賀野井博美

ページ範囲:P.425 - P.430

はじめに

 脳出血は出血の部位により,被殻出血,視床出血,皮質下出血,小脳出血,橋出血などに分類され,視床出血は脳出血全体の約35%を占めており,被殻出血に次いで多くみられる出血である1).脳出血の原因としては,高血圧性が80〜90%を占める.高血圧性脳出血は,長期にわたり高血圧にさらされた脳血管が変性してもろくなり,破綻することで発症する.穿通枝動脈などの比較的細い血管に起こりやすく,被殻や視床といった脳の深部に起こる頻度が高い2).そのため,大脳基底核部に原発した血腫が内包を破壊して視床まで伸展したもの,あるいは視床に原発した血腫が内包を破壊して基底核部に伸展した混合型出血となる.混合型出血は,血腫が大きい場合や内包が破壊されているために神経症状が重篤な場合が多い.本稿では右視床部に出血を認め,内包や被殻に伸展,脳室内出血を認めた高齢患者の理学療法を報告する.

とびら

目的と手段

著者: 二瓶健司

ページ範囲:P.383 - P.383

 「介護予防の目的は介護を予防することではない,それは手段であって目的ではない」.今から15年前,国策として介護予防事業が始まろうとしている頃の話です.当時,理学療法士による介護予防の支援体制を強化するという趣旨のもと,私は諸先輩方に囲まれながら介護予防の効果判定指標を調査研究する事業に携わっていました.その中心は効果判定をどのように行うのか,さらにはどの部分まで行うのかを検討することです.理学療法士は筋力や移動能力の向上という部分の効果判定は得意とする分野かもしれません.しかし,理学療法士であるが故にそこで満足してしまう傾向も否めません.そのため,介護予防事業がなすべき本来の目的は何かということについて,会議のなかで何度も議論されました.

 そんな折,公衆衛生分野を専門としている特別委員の先生から,冒頭に記した言葉が発せられます.さらに言葉は続き,「確かに運動機能を高めることで介護されることを予防できるかもしれない.でも本来の目的は地域の高齢者がいかに健康で,いかに活力あふれる人生であり続けられるか,介護予防はその手段に過ぎない.そのために何をアウトカムにすべきか,どのような評価指標を選択すれば本来の目的に導いてくれるのか,理学療法士の専門性が際立つようなアイデアを期待したい」.調査研究の根幹となる部分について,考える道筋を与えてくださった貴重な言葉でした.そして,高齢者の地域における活動状況を定量的に評価できる指標が含められたElderly status assessment set(E-SAS)が完成します.

新人理学療法士へのメッセージ

石の上にも“5年”

著者: 長谷川諒

ページ範囲:P.432 - P.433

 今春,晴れて国家試験に合格し,理学療法士になられた方々に心よりお祝い申し上げます.これからは社会人としてだけでなく,理学療法士としても周りから見られます.国家資格を有している自覚をもち,新たな人生を歩んでいってください.そんな歩き始めたばかりの皆さんにメッセージを送りたいと思います.

あんてな

第53回日本理学療法学術研修大会in茨城のご案内

著者: 豊田和典

ページ範囲:P.435 - P.440

 第53回日本理学療法学術研修大会(以下,本大会)は,「自立を支援する臨床技能を極める—豊かな理学療法士人生を送るために」(斉藤秀之大会長)をテーマに2018年5月25日(金)・26日(土)の2日間にわたり,つくば国際会議場(図1)をメイン会場として開催されます.

 日本理学療法士協会がこれまで秋に開催してきた全国学術研修大会は本大会より春開催となり,研修内容もより臨床技能向上に焦点を当てた内容としています.茨城県での開催は2007年の第42回日本理学療法士協会学術研修大会以来11年ぶりであり,茨城県理学療法士会としては全国規模の学術研修大会の大きな変革期に担当できることを光栄に思い,本大会が素晴らしい大会となるよう本会一同鋭意準備を進めています.開催の日が近づいてきましたが,ぜひとも,行政・地域・社会から信頼され,豊かな理学療法士人生を送るために必要な臨床技能向上の場として,本大会にご参加いただけますよう何卒お願いいたします.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

信頼性と再現性

著者: 対馬栄輝

ページ範囲:P.443 - P.443

 信頼性(reliability)とは,取り扱う分野によって意味が異なるときもある.本稿では医学研究で扱われる測定の信頼性(reliability of measurement)を,信頼性と呼ぶことにする.

 信頼性は,正確度(または確度)と再現性(reproducibility,または精度,精密度)に分けられる.さらに再現性は,検者間信頼性と検者内信頼性に分けられる.このように信頼性は再現性を包含する概念である.

オリパラ関連企画 理学療法士が知っておきたい重要なスポーツ動作・5

腰部障害と水泳動作

著者: 成田崇矢

ページ範囲:P.444 - P.445

競泳における腰部障害と発生メカニズム

 水泳選手に多くみられる腰部障害は,① 筋・筋膜性腰痛と呼ばれる筋疲労性の腰痛,② 腰椎分離症,椎間関節障害さらには仙腸関節障害などの関節由来の腰痛,③ 椎間板障害や椎間板ヘルニアなどの椎間板性腰痛に大別される1).これらの発生メカニズムは,上肢で行うストローク動作と下肢で行うキック動作の基盤となる腰部へのメカニカルストレスの繰り返しによる,いわゆる「使い過ぎ症候群」が原因となる2)が,それぞれの病態により原因は異なる.① 筋・筋膜性腰痛の場合は,泳動作中の体幹安定のために背筋群を過剰に用いている可能性が高く,② 関節性の場合は,障害関節部に過度の負荷が加わる泳ぎ方,誤動作,③ 椎間板性の場合,無重力化で椎間板に栄養循環が行われない状態での腰部運動の繰り返しをもととする椎間板変性が影響している.

入門講座 筋力トレーニング・1【新連載】

筋力トレーニングの効果—神経因子の改善と筋肥大効果

著者: 横山茂樹

ページ範囲:P.447 - P.451

はじめに

 筋力トレーニングは,臨床のなかでは運動療法の主な手段として,さまざまな疾患をもつ患者に対して実施されている.この際,理学療法士は運動種目や筋収縮様式,負荷(量と回数,時間)などを考慮して,より効果的かつ効率的な筋力トレーニングを実施しなければならない.

 筋力トレーニングの効果は,急激に筋力増加を認める時期を経て,やがて緩やかに変化していく.このような過程には,“神経因子”の改善と“筋肥大因子”が関与している1,2)(表).

 本稿では,筋力トレーニングによる筋力増加に関する“神経因子”の改善と“筋肥大因子”の2つの機序に着目して解説する.

講座 理学療法に関するガイドラインup date・2

理学療法に関するガイドラインup date—糖尿病

著者: 片岡弘明

ページ範囲:P.453 - P.462

はじめに

 わが国の糖尿病患者は年々増加傾向にあり,厚生労働省から示された2016年度の国民健康・栄養調査1)では,2012年の前回調査から50万人増加し,1,000万人を超えたことが報告された.糖尿病は,慢性的な高血糖の持続により,糖尿病特有の合併症である細小血管合併症(神経障害,網膜症,腎症)や大血管合併症(脳血管疾患,心血管疾患など)を引き起こし,ADLやQOLを低下させてしまうことから,血糖コントロールを良好に維持することが糖尿病治療の主軸となる.そのため,多職種からなるチームアプローチが必須であるが,そのなかでも理学療法士は,生活習慣の改善による糖尿病の発症予防(1次予防),代謝の安定化と合併症の発症・進展予防(2次予防),合併症によって生じた身体機能および生活機能などの改善(3次予防)と果たすべき役割は大きい.

 日本糖尿病学会が作成した「糖尿病診療ガイドライン2016」2,3)からは運動療法に関するエビデンス,日本理学療法士協会が作成した「糖尿病 理学療法診療ガイドライン(第1版)」4)においても,(網膜症や腎症に対する理学療法の科学的根拠はまだ不十分であるが)運動療法や理学療法の効果,療養指導や患者教育などに関するエビデンスが示されている.臨床現場では,これらの診療ガイドラインを参考に,どのようにして糖尿病患者の評価を行い,治療に結びつけていくかが重要となる.そこで本稿では,2症例を例に挙げて各学会・協会の診療ガイドラインを提示しながら,最近の研究報告も交えて糖尿病患者に対する理学療法の考え方・進め方について解説する.

臨床実習サブノート どうする? 情報収集・評価・プログラム立案—複雑な病態や社会的背景の症例・2

慢性閉塞性肺疾患を合併した大腿骨頸部骨折術後患者

著者: 大場みゆき

ページ範囲:P.463 - P.471

はじめに

 大腿骨頸部骨折は急性期,回復期の病期にわたり,学生が臨床実習において携わる機会が少なくありません.大腿骨頸部骨折の理学療法の目的は,受傷前の日常生活動作の再獲得です.各医療機関では独自のクリニカルパスが導入され,加速的なリハビリテーションが展開されるようになりました.しかし高齢者にはしばしば潜在的に何らかの併存疾患が存在し,理学療法に難渋する場合も少なくありません1,2).慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は発症要因である喫煙が胃腸の働きを悪化させ,カルシウムの吸収を妨げ,また呼吸困難による運動不足などが原因で骨粗鬆症を招きやすいとされています3).このため,COPDを合併している大腿骨頸部骨折は,頻度は低いものの臨床で経験することがあります.

 COPDは気管支や肺胞の炎症性疾患であり,気流制限によって換気・ガス交換の障害が引き起こされ,低酸素血症や呼吸困難感を呈します.主訴は労作時の息切れで,階段昇降など負担を伴う日常的な動作が困難となり,症状が進行すると歩行や更衣,会話でも息切れが生じます.進行したCOPDであれば運動耐容能が低く,呼吸困難感を呈することから,大腿骨頸部骨折術後の理学療法においてはADL獲得の遅延を来すことも想定されます.そのためCOPDの病態を把握して理学療法を進めることが肝要となります.

 本稿では,COPDを合併する大腿骨頸部骨折術後の患者を担当する際の情報収集,評価すべきことは何か,問題点,治療プログラムのポイントについて症例を提示し解説します.

甃のうへ・第58回

道はいろいろ

著者: 中嶋奈津子

ページ範囲:P.442 - P.442

 二十数年前,理学療法士として地元の病院に就職した.尊敬する上司や先輩,信頼できる同期同僚,また職場を越えた仲間もいてたくさんの刺激をいただいて,私は皆についていきたくて勉強した.恵まれた環境にあったと思う.ところが,そんな私に突然のスランプが.うまく表現できないのだが,ひと言で言うと「どの患者さんも評価と治療が同じ」になってしまって何かピンとこない.仕事に対する思いは変わらないが,なぜかしら気持ちを前にもっていけず焦った.

 そんなとき,恩師から「大学で勉強して視野を広げたら」と助言をいただいた.すぐにある大学のパンフレットを取り寄せて眺めると,興味をもったのは「地域文化学」,つまり「民俗学」であった.人の生活にかかわる習俗や地域の文化を学んでみたら,これが面白くて夢中になった.数年後に大学院に進学し,ふと気がつけば仕事もまた元のように興味をもって取り組めるようになっていた.

症例報告

透析関連低血圧に対する運動療法の可能性—症例報告

著者: 垣内優芳 ,   森明子 ,   井上達朗 ,   秋永美津江

ページ範囲:P.473 - P.477

要旨 透析関連低血圧に対する運動療法の報告は少ない.今回,透析関連低血圧を有する糖尿病透析患者に対して,透析開始前の運動療法を経験した.症例は60歳台男性である.透析中の血圧低下や透析終了後の起立性低血圧を認め,高血糖,肥満傾向であり,合併症予防のために筋力強化運動や有酸素運動を開始した.開始後,透析中の血圧低下は改善傾向であり,3か月後からは徐々にグリコアルブミンが改善した.しかし,運動後には口渇感により飲水量が増加していた.5か月後には筋力や骨格筋量,耐久性も改善した.振動覚は開始時から徐々に低下傾向であったが,5か月後には神経障害の進展が抑制された.血糖コントロールによる末梢神経障害の進展抑制と同時に自立神経障害改善の影響が考えられた.糖尿病透析患者に対する運動療法は,透析関連低血圧を改善する可能性があり,透析前に運動療法を実施する際は,運動後の口渇感による飲水量増加に注意する必要が示唆された.

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目次

ページ範囲:P.384 - P.384

文献抄録

ページ範囲:P.478 - P.479

書評 —Serge Tixa(著)/奈良 勲(監訳)/川口浩太郎,金子文成,藤村昌彦,佐藤春彦(訳)—「触診解剖アトラス 第3版」

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.434 - P.434

 「美しい本」というのが最初の印象である.

 統一された背景に,洗練された美しい男女のモデルと繊細なタッチのmasso-kinésithérapeute(理学療法士)の指先が,danse contemporaine(コンテンポラリー・ダンス)を思わせる.この「美しい本」の著者が,フランス人のSerge Tixa氏であると確認し,その印象に間違いがなかったと納得する.静止した写真であるにもかかわらず躍動感あふれ,舞踊芸術を観ているような錯覚にすら陥る.愛情表現豊かなフランス人らしさが感じられる.

書評 —伊藤利之(監修)/小池純子,半澤直美,高橋秀寿,橋本圭司(編)—「こどものリハビリテーション医学 第3版—発達支援と療育」

著者: 中村春基

ページ範囲:P.446 - P.446

 このたび,伊藤利之先生監修の下,小池純子・半澤直美・高橋秀寿・橋本圭司の4氏を編者に配した『こどものリハビリテーション医学—発達支援と療育 第3版』が医学書院より上梓された.表紙は淡いピンクを基調に,大きさの異なるさまざまな立方体が並んでおり,こどものリハビリテーションの個別性・多様性を表現しているかのようだ.

 400ページを超える本書は全11章で構成され,各章はさらに節・項に細分化され,医師を中心に理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などを含む62名の執筆陣が各テーマに関する最新の知見を過不足なくコンパクトにまとめている.一読してそのテーマの下に知っておくべきエッセンスを理解することができ,紹介されている成書や文献にも大いに興味をそそられる.

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.451 - P.451

第30回理学療法ジャーナル賞について

ページ範囲:P.481 - P.481

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.482 - P.482

 今年の桜は多くの地域で1,2週間早く開花し,あっという間に散ってしまったようですが,皆様の地域ではいかがでしたか? 私は移動中に満開の桜を観るという日々でしたが,4月2日の当院の新人歓迎会で夜桜を楽しむことができました.毎年,先輩セラピストたちが主催して夜桜の下で歓迎会を開くのですが,新人オリエンテーション2日目という,これまでで最も早い時期の歓迎会になりました.やはり,自然の営みには逆らえませんし,その状況をみながら臨機応変に計画を実行していくことが大切です.これは臨床家であれば誰もが心掛けておかなければならないことでしょう.

 さて,本号の特集では視床出血に焦点を絞ってみました.視床核は脳のシステムにおいて重要な位置を占め,相当な神経線維が直接的に入出力,かつ近傍を走行します.その構造上の特性から病態あるいは障害が多岐にわたる視床出血を単に視床出血として処理してはいけないのです.理学療法士はその結果起こる障害をみる専門家ですから,より細かい配慮が必要です.さらに視床出血後の経過は,その大きさや部位,さらには時間経過や環境などに左右されやすく,臨機応変に適切に対応していく臨床力を求められます.原因があって結果があるのです.その原因を知り,意味のある評価と有効な理学療法につなげるために,この特集は意義深いものになると期待しています.特に山口,中村,野田,加賀野井各氏には症例を提示して具体的に解説いただきましたので,読者の理解と臨床への展開を助けてくれるものと思います.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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