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特集 地域に広がる心臓リハビリテーション
回復期リハビリテーション病院での心臓リハビリテーションと理学療法—急性期病院と回復期リハビリテーション病院の連携
著者: 森沢知之1 上野勝弘2 岩田健太郎3
所属機関: 1兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科 2西記念ポートアイランドリハビリテーション病院リハビリテーション科 3神戸市立医療センター中央市民病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.505 - P.512
文献購入ページに移動現在,急性期病院では入院期間の短縮化が進められており,急性期治療が終了し状態が安定すれば,早期に自宅退院となるケースが多い.特に心疾患患者は,目に見える手足の障害が認められないため,急性期治療が終了すると十分な身体機能やADLが回復しないまま,早期自宅退院を余儀なくされるケースも少なくない.山田ら1)は急性心不全患者の急性期治療と並行して早期から心臓リハビリテーションを行っても,退院時の移動動作能力は入院時と比較して有意に低下すると報告している.また本邦における心臓外科手術後の多施設研究の結果2)では,術後早期より心臓リハビリテーションを行っても約7%の患者は急性期病院入院中に歩行自立まで回復しないことも報告されている.その背景には,高齢心疾患患者の増加に伴い,脳血管障害や運動器疾患など重複障害を有する患者や,フレイル,サルコペニアを有する心疾患患者が増加していることが影響しているものと思われる.
十分な身体機能やADL能力が回復しないまま自宅に退院すると,身体活動量の低下や転倒などにより,再入院につながる可能性もある.またいったん自宅に退院すると,通院が困難であったり,マンパワーの不足や施設基準など施設側の受け入れの問題もあり,本邦の外来心臓リハビリテーション継続率は先進諸国のなかでも際立って少ない現状にある3).在院日数や診療報酬,人員に関する問題などの理由から,急性期病院だけでdisabilityを有する心疾患患者に対するリハビリテーションを十分に行うことは難しく,在宅復帰までのプロセスを完結するのには限界がある.
急性期病院と在宅の中間に位置する回復期リハビリテーション病院は「ADL能力の改善」,「在宅復帰率の向上」という明確なアウトカム改善のために,リハビリテーション専門職による専門的かつ集中的なリハビリテーション医療を提供する病院である.今後もdisabilityを有する心疾患患者が増加することが予測されるなか,急性期病院と回復期リハビリテーション病院の心臓リハビリテーションを基軸としたシームレスな連携の構築は,患者の在宅・社会復帰はもちろんのこと,病院の機能分化や医療費増大の抑制,さらには病院完結型医療から地域全体で支える地域完結型医療への転換においても極めて重要と思われる.本稿では回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの現状を紹介するとともに,その実践方法や急性期病院・在宅(後方施設)との連携,さらに回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの効果と今後の課題について概説する.
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