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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル52巻6号

2018年06月発行

文献概要

特集 地域に広がる心臓リハビリテーション

回復期リハビリテーション病院での心臓リハビリテーションと理学療法—急性期病院と回復期リハビリテーション病院の連携

著者: 森沢知之1 上野勝弘2 岩田健太郎3

所属機関: 1兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科 2西記念ポートアイランドリハビリテーション病院リハビリテーション科 3神戸市立医療センター中央市民病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.505 - P.512

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はじめに

 現在,急性期病院では入院期間の短縮化が進められており,急性期治療が終了し状態が安定すれば,早期に自宅退院となるケースが多い.特に心疾患患者は,目に見える手足の障害が認められないため,急性期治療が終了すると十分な身体機能やADLが回復しないまま,早期自宅退院を余儀なくされるケースも少なくない.山田ら1)は急性心不全患者の急性期治療と並行して早期から心臓リハビリテーションを行っても,退院時の移動動作能力は入院時と比較して有意に低下すると報告している.また本邦における心臓外科手術後の多施設研究の結果2)では,術後早期より心臓リハビリテーションを行っても約7%の患者は急性期病院入院中に歩行自立まで回復しないことも報告されている.その背景には,高齢心疾患患者の増加に伴い,脳血管障害や運動器疾患など重複障害を有する患者や,フレイル,サルコペニアを有する心疾患患者が増加していることが影響しているものと思われる.

 十分な身体機能やADL能力が回復しないまま自宅に退院すると,身体活動量の低下や転倒などにより,再入院につながる可能性もある.またいったん自宅に退院すると,通院が困難であったり,マンパワーの不足や施設基準など施設側の受け入れの問題もあり,本邦の外来心臓リハビリテーション継続率は先進諸国のなかでも際立って少ない現状にある3).在院日数や診療報酬,人員に関する問題などの理由から,急性期病院だけでdisabilityを有する心疾患患者に対するリハビリテーションを十分に行うことは難しく,在宅復帰までのプロセスを完結するのには限界がある.

 急性期病院と在宅の中間に位置する回復期リハビリテーション病院は「ADL能力の改善」,「在宅復帰率の向上」という明確なアウトカム改善のために,リハビリテーション専門職による専門的かつ集中的なリハビリテーション医療を提供する病院である.今後もdisabilityを有する心疾患患者が増加することが予測されるなか,急性期病院と回復期リハビリテーション病院の心臓リハビリテーションを基軸としたシームレスな連携の構築は,患者の在宅・社会復帰はもちろんのこと,病院の機能分化や医療費増大の抑制,さらには病院完結型医療から地域全体で支える地域完結型医療への転換においても極めて重要と思われる.本稿では回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの現状を紹介するとともに,その実践方法や急性期病院・在宅(後方施設)との連携,さらに回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの効果と今後の課題について概説する.

参考文献

1)山田智美,他:重症心不全患者に対する入院期心臓リハビリテーションの検討.心臓リハ14:157-161,2009
2)高橋哲也,他:心臓血管外科手術後リハビリテーション進行目安の検討.心臓リハ17:103-109,2012
3)Goto Y, et al:Use of exercise cardiac rehabilitation after acute myocardial infarction. Circ J 67:411-415, 2003
4)一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会:データ資料集.http://www.rehabili.jp/sourcebook.html(2018年3月26日閲覧)
5)一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会:平成28年度回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書.pp6-13,2017
6)磯 良崇,他:リハビリテーション病院における心リハ連携.心臓リハ20:333-337,2015
7)川内基裕,他:回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーション.循環器医19:278-282,2011
8)山本智史,他:長期臥床となった高齢心疾患患者における回復期リハビリテーション病院入院での運動療法効果.理学療法学43:390-396,2016
9)松山公三郎,他:心大血管疾患リハビリテーションにおける回復期リハビリテーション病棟の現状と問題点.心臓リハ13:78-81,2008
10)森沢知之,他:回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの実態調査—全国アンケートの結果から.理学療法学43:10-17,2016
11)厚生労働省:平成28年度診療報酬改定について.第3 関係法令等(2)1. 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示).http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=335763&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000114819.pdf(2018年3月26日閲覧)
12)厚生労働省:疑義解釈資料の送付について(その1).2016.http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=344633&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000119348.pdf(2018年3月26日閲覧)
13)Morisawa T, et al:Significance of sequential cardiac rehabilitation program through inter-hospital cooperation between acute care and rehabilitation hospitals in elderly patients after cardiac surgery in Japan. Heart Vessels 32:1220-1226, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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