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臨床実習サブノート どうする? 情報収集・評価・プログラム立案—複雑な病態や社会的背景の症例・3
独居のラクナ梗塞急性期患者
著者: 伊藤将平1
所属機関: 1冨田病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.574 - P.580
文献購入ページに移動はじめに
脳卒中患者は学生の臨床実習においてだけでなく,理学療法士になってからも受け持つことが多くあります.しかし,脳卒中という疾患は年齢,性別,合併症などによっては治療の方法や経過も大きく異なります.また,自宅退院を考えるうえで疾患のみならず,社会的情報を考慮することはとても重要であると言えます.なぜなら,現在,高齢化率の上昇,核家族化の進行,生涯未婚率の上昇により,独居の高齢者数が年々増加しており,高齢者のいる世帯数のうち27.1%は独居であることが報告されているからです1).この数値は今後も上昇を続け,2036年には33.3%に達する2)とされており,高齢者のいる世帯の3分の1が独居世帯という社会を迎えると言われています.
このように独居の患者数は年々増加しているため,自宅退院後に介護者がいないことが想定できるかと思います.また,脳卒中患者の自宅退院の条件として日常生活活動(activities of daily living:ADL)が影響すること3〜9)が数多く報告されており,ADLが低いほど自宅退院が困難となり,認知機能が低いほど自宅退院が困難になる10)と言われています.さらに,自宅退院には同居人数の重要性も報告3,5,7)されており,独居高齢者は非独居高齢者と比べ,日常生活での見守りや支援を得にくいため,独居が自宅退院を阻害することが容易に想定できます.高齢かつ独居といった社会的情報だけでも考慮することは多くあります.
本稿では,ラクナ梗塞急性期の独居生活を考えるうえで知っておかなければいけない点や評価の進め方について,私なりの考え方や工夫点を述べていきます.臨床実習において少しでもお役に立てれば幸いです.
脳卒中患者は学生の臨床実習においてだけでなく,理学療法士になってからも受け持つことが多くあります.しかし,脳卒中という疾患は年齢,性別,合併症などによっては治療の方法や経過も大きく異なります.また,自宅退院を考えるうえで疾患のみならず,社会的情報を考慮することはとても重要であると言えます.なぜなら,現在,高齢化率の上昇,核家族化の進行,生涯未婚率の上昇により,独居の高齢者数が年々増加しており,高齢者のいる世帯数のうち27.1%は独居であることが報告されているからです1).この数値は今後も上昇を続け,2036年には33.3%に達する2)とされており,高齢者のいる世帯の3分の1が独居世帯という社会を迎えると言われています.
このように独居の患者数は年々増加しているため,自宅退院後に介護者がいないことが想定できるかと思います.また,脳卒中患者の自宅退院の条件として日常生活活動(activities of daily living:ADL)が影響すること3〜9)が数多く報告されており,ADLが低いほど自宅退院が困難となり,認知機能が低いほど自宅退院が困難になる10)と言われています.さらに,自宅退院には同居人数の重要性も報告3,5,7)されており,独居高齢者は非独居高齢者と比べ,日常生活での見守りや支援を得にくいため,独居が自宅退院を阻害することが容易に想定できます.高齢かつ独居といった社会的情報だけでも考慮することは多くあります.
本稿では,ラクナ梗塞急性期の独居生活を考えるうえで知っておかなければいけない点や評価の進め方について,私なりの考え方や工夫点を述べていきます.臨床実習において少しでもお役に立てれば幸いです.
参考文献
1)厚生労働省:平成28年国民生活基礎調査の概況 世帯数と世帯人員の状況.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/02.pdf(2018年3月27日閲覧)
2)国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成29年推計)推計結果公表資料 結果の概要.http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_gaiyou.pdf(2018年3月27日閲覧)
3)二木 立:脳卒中患者が自宅退院するための医学的・社会的条件.総合リハ11:895-899,1983
4)辻 哲也,他:入院・退院時における脳血管障害患者のADL構造の分析—機能的自立度評価法(FIM)を用いて.リハ医33:301-309,1996
5)近藤克則,他:脳卒中リハビリテーション患者の退院先決定に影響する因子の研究—多重ロジスティックモデルによる解析.日本公衛誌46:542-550,1999
6)戸島雅彦,他:脳梗塞急性期入院例の入院期間と退院先に影響する因子.リハ医38:268-276,2001
7)植松海雲,他:高齢脳卒中患者が自宅退院するための条件—Classification and regression trees(CRAT)による解析.リハ医39:396-402,2002
8)伊藤郁乃,他:リハビリテーション後の転帰と在院日数に影響を与える社会的要因の検討,Jpn J Rehabil Med 48:561-565,2011
9)浜岡克伺,他:脳卒中患者の在宅復帰に必要な基準値—Functional Independence Measureを用いた検討.理療科29:933-937,2014
10)大島 峻:回復期リハビリテーション病棟 在宅へつなげるリハの展開—当院における取り組みと提言(Ⅰ).J Clin Rehabil 12:205-210,2003
11)厚生労働省:人口動態統計月報年計(概数)の概況 人口動態調査 統計情報書.http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html(2018年3月27日閲覧)
12)厚生労働省:平成28年国民生活基礎調査の概況 介護の状況.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/05.pdf(2018年3月27日閲覧)
13)小林祥泰,他:脳卒中データバンク2015.中山書店,2015
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