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臨床実習サブノート どうする? 情報収集・評価・プログラム立案—複雑な病態や社会的背景の症例・5
女性の変形性膝関節症患者
著者: 中村睦美1
所属機関: 1東京都健康長寿医療センター研究所
ページ範囲:P.763 - P.769
文献購入ページに移動本邦の40歳以上の中高年者における変形性膝関節症(膝osteoarthritis:膝OA)の有病率は,男性で42.6%,女性で62.4%であると報告されています.また,X線で診断される膝OAの患者数は2530万人(男性860万人,女性1670万人)1)と推定されており,臨床でも理学療法を実施する機会の多い疾患です.また,高齢になるほど膝OAの有病率が高まりますが,中高年者の特徴として,膝関節だけでなく内部障害や他部位の運動器疾患,神経疾患などいくつかの疾患を併存している方が多くみられます.また,関節症は要支援となる原因のなかで最も多く2),社会保障費の増大を抑制する観点からも膝OAの予防,治療は重要です.
複雑な病態や社会的背景をもった症例には,主疾患である膝関節だけに注目しても,活動や社会参加につながらないことがあります.既往歴や病態,社会的な背景を把握したうえで,その患者に必要な理学療法を行う必要があります.
理学療法士は,地域において,機能回復練習などの本人へのアプローチだけではなく,生活環境の調整や,地域のなかに生きがい・役割をもって生活できるような居場所と出番づくりなど,本人を取り巻く環境へのアプローチも含めたバランスのとれた支援が求められています.高齢者の自立支援・重度化防止に向けた介護予防推進の取り組みにおいては,機能面だけでなく,患者の活動や参加,さらには社会的な背景や個人因子までまるごと把握し,そのなかで適切なアプローチを行う視点をもつことが必要です.
本稿では,膝OAを原疾患とした人工膝関節置換術患者の事例を提示し,臨床推論の過程として情報収集から評価,プログラムの立案,理学療法の実施までのポイントを提案します.
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