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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル52巻8号

2018年08月発行

文献概要

症例報告

血友病A患者に対しTKA周術期理学療法を行った一例

著者: 髙田ゆみ子1 塚本利昭1 玉井佳子2 津田英一3

所属機関: 1弘前大学医学部附属病院リハビリテーション部 2弘前大学医学部附属病院輸血部 3弘前大学大学院医学研究科リハビリテーション医学講座

ページ範囲:P.776 - P.781

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要旨 【目的】血友病性膝関節症に対し人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)を施行された症例に対する理学療法について報告する.【症例】66歳,男性,診断名は左血友病性膝関節症,中等症血友病Aである.周術期の止血管理として術前より血液凝固第Ⅷ因子製剤が投与された.術前のrange of motion-test(ROM-T)は,右膝関節伸展−10°,左膝関節伸展−15°・屈曲125°,両股関節伸展−15°と制限を認め,徒手筋力テスト(manual muscle testing:MMT)では下肢筋力は左膝関節屈曲[3],両股関節伸展・外転[2]〜[3]と著明な低下を認めた.歩容は,松葉杖と右下肢に頼る逃避性歩行となっていた.術前,日本整形外科学会OA膝治療成績判定基準(Japan Orthopaedic Association Score:JOAスコア)は左50点であった.術後理学療法は,術翌日より当院のTKA術後のプロトコールに沿って実施した.術後23日目に片松葉杖歩行にて自宅退院,術後45日目の時点で術前と同程度の膝関節機能となり,主訴である左膝関節痛は消失し,歩行距離の延長とADLの改善が得られた.【考察】周術期の適切な止血管理と術後早期からの多関節運動連鎖を考慮した理学療法により,当院のTKA術後プロトコールに沿って理学療法を実施することが可能であった.さらに,術後の膝関節機能やADLの改善は術前の膝関節機能や隣接関節の影響を受けると考えられた.

参考文献

1)Sakai T, et al:Blood clotting factor Ⅸ Kashihara-Amino acid substitution of valine-182 by phenylalanine.浅野茂隆,他(監):三輪血液病学,第3版.p1694,文光堂,2006
2)瀧 正志,他:厚生労働科学エイズ対策研究事業「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」分担研究「血液凝固異常症のQOLに関する研究」平成23年度報告書,2012.http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/jointsurgery/pdf/H23.pdf(2018年5月24日閲覧)
3)酒井道生:血友病の診療の進歩と今後の課題—定期補充療法の現状と今後の課題.日小児血がん会誌52:237-242,2015
4)佐藤美紀,他:THAを施行した血友病性股関節症症例の理学療法.第30回東北理学療法学術大会抄録集,78,2010
5)若杉樹史,他:血友病を有する全人工股関節置換術症例に対し血液凝固因子製剤を予備的投与した理学療法の経験.臨理療研27:101-104,2010
6)Atilla B, et al:Pre-operative flexion contracture determines the functional outcome of haemophilic arthropathy treated with total knee arthroplasty. Haemophilia 18:358-363, 2012
7)河内俊太郎,他:血友病性膝関節症に対する人工膝関節置換術の経験.東北整災外会誌50:27-30,2006
8)Chiang CC, et al:Total knee arthroplasty for severe haemophilic arthropathy:Long-term experience in Taiwan. Haemophilia 14:828-834, 2008
9)竹谷英之,他:血友病性関節症に対する人工関節置換術術後の可動域.中部整災誌45:829-830,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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