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入門講座 高齢者の理学療法を行うために知っておこう—検査・栄養・薬・運動・1【新連載】
高齢者の検査値の特徴
著者: 佐藤尚武1
所属機関: 1順天堂東京江東高齢者医療センター臨床検査科
ページ範囲:P.853 - P.860
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「高齢者の検査値の特徴」を語るうえで難しい点は,高齢者の健康状態の定義が困難であるため,検査値の判断指標である基準範囲の設定が難しいことである.基準範囲(基準値)の設定手順を表1に示す.後述するが,検査値には加齢変動を示すものがあるので,高齢者に対しては高齢者用の基準範囲を設定し,これを指標として検査値を判断することが望ましい.
高齢者の基準範囲を設定するためには,高齢者の基準個体を選定する必要がある.基準個体を健康な高齢者とした場合,加齢に伴って身体機能の個人差が大きくなるため(図),この健康な高齢者の定義が難しいのである.一定年齢の成人までは,身体機能の個人差は比較的小さいので,肥満度や自覚症状,慢性疾患,服薬などの有無で選別すれば,健康成人を基準個体として選別することは比較的容易である.しかし高齢者の場合は,自覚症状や診断されている慢性疾患がなくとも,身体機能が低下し図のグレーゾーンに至っている個体が少なからず存在する.このグレイゾーンの個体を基準個体としてよいかどうかという点と,健康な個体とグレイゾーンにある個体との識別が難しい点が,高齢者の検査値を考える際の問題点となる.
「高齢者の検査値の特徴」を語るうえで難しい点は,高齢者の健康状態の定義が困難であるため,検査値の判断指標である基準範囲の設定が難しいことである.基準範囲(基準値)の設定手順を表1に示す.後述するが,検査値には加齢変動を示すものがあるので,高齢者に対しては高齢者用の基準範囲を設定し,これを指標として検査値を判断することが望ましい.
高齢者の基準範囲を設定するためには,高齢者の基準個体を選定する必要がある.基準個体を健康な高齢者とした場合,加齢に伴って身体機能の個人差が大きくなるため(図),この健康な高齢者の定義が難しいのである.一定年齢の成人までは,身体機能の個人差は比較的小さいので,肥満度や自覚症状,慢性疾患,服薬などの有無で選別すれば,健康成人を基準個体として選別することは比較的容易である.しかし高齢者の場合は,自覚症状や診断されている慢性疾患がなくとも,身体機能が低下し図のグレーゾーンに至っている個体が少なからず存在する.このグレイゾーンの個体を基準個体としてよいかどうかという点と,健康な個体とグレイゾーンにある個体との識別が難しい点が,高齢者の検査値を考える際の問題点となる.
参考文献
1)佐藤尚武:検査上,可能性のある血球数異常.日老会誌51:531-535,2014
2)岡部紘明,他:高齢者の臨床検査値は必要か.臨検50:981-986,2006
3)日本臨床検査標準協議会基準範囲共用化委員会:日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲案—解説と利用の手引き.http://www.jccls.org/techreport/public_comment_201405_p.pdf(2017年8月15日閲覧)
4)〆谷直人(編):検査データの「?」に答えます!pp2-5,文光堂,2018
5)佐守友博,他(監),ラボ検査研究会(編):高齢者の臨床検査値の見方・考え方.臨床病理レビュー:1-83,2016
6)市原清志,他(編著):エビデンスに基づく検査診断実践マニュアル.pp104-107,114-117,320-333,日本教育研究センター,2011
7)田中敏章,他:潜在基準値抽出法による小児臨床検査基準範囲の設定.日小児会誌112:1117-1132,2008
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