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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻11号

2019年11月発行

文献概要

特集 今と将来を見据えた小児整形外科理学療法

小児整形外科理学療法における大事な視点は何か

著者: 押木利英子1

所属機関: 1新潟リハビリテーション大学

ページ範囲:P.1057 - P.1062

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はじめに

 小児整形外科の代表的な対象疾患として,先天性股関節脱臼(以下,先股脱),先天性内反足(以下,内反足),先天性筋性斜頸(以下,筋性斜頸)などがあるが,近年,これらの先天性疾患は予防の啓発が広まり発症も少なくなり,手術適応になる症例は顕著に減少している.また,ペルテス病は装具療法や学習環境の整備などにより外来治療が主体となってきている.分娩麻痺は周産期医療の進歩により,出産時のトラブルが回避され発症は激減した.また,1960年代に大流行したポリオは生ワクチン投与により世界規模での予防が可能となり,現在,新しいポリオ罹患はゼロとされている.

 小児整形外科では上記のような経緯をたどってきているが,代表的な疾患以外にも,先天性または後天性の原因による筋疾患,骨系統疾患,神経疾患など多くの疾患を対象にしており,それらに対して薬物療法や運動療法,手術的治療が行われる.特に,手術的治療の術後においては専門的なリハビリテーションが不可欠であり,そこで必要十分なリハビリテーションを行い,早期に機能獲得するために理学療法士の果たす役割は大きい.

 リハビリテーションを必要とする小児整形外科疾患の治療方法は医学の急速な進歩や社会の変化により,上記のように時代とともに少しずつ変化してきた.現在主流の小児整形外科理学療法については次稿以降に譲ることとし,本稿では療育における小児整形外科理学療法の役割と意義を確認するため,筆者の経験に基づいて療育における小児理学療法のこれまでの経緯をまとめた.そして,成人とは異なる小児整形外科理学療法における留意点を列挙し,今後の展望としたい.

参考文献

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2)松尾圭介,他:脳性麻痺に対するボツリヌス毒素治療.関節外科2017;36:620-626
3)水落和也,他:若年性特発性関節炎.J Clin Rehabil 2010;19:225-234
4)柴田 徹,他:脳性麻痺児の粗大運動能力に対する入院集中多職種治療の効果.リハ医2005;42:263-268
5)松山敏勝:療育の歴史と現状.北海道整災外会誌2015;57:65-69
6)平井孝明:小児整形外科疾患の理学療法の変遷と展開.PTジャーナル2011;45:471-478
7)Halstead LS:Post-polio syndrome. Sci Am 1998;278:42-47
8)押木利英子,他:ポリオ後症候群の発生状況と理学療法の課題.理学療法学2006;33(Suppl. 2):109
9)長谷川真人,他:頸髄症を合併したアテトーゼ型脳性麻痺症例に対するHALでの歩行練習の短期介入効果.理学療法学2016;43(Suppl. 2):P-SK-03-1
10)日本小児理学療法学会:小児理学療法ガイドライン(CQ案).
11)松田雅弘,他:発達期中枢神経障害児者に対する単関節HALを用いた運動療法に関するアンケート調査.理学療法学2017;44(Suppl. 2):P-SK-04-1
12)中島 孝:神経・筋難病患者が装着するロボットスーツHALの医学応用に向けた進捗,期待される臨床効果.保健医療科2011;60:130-137
13)週刊現代2013年8/3号,講談社

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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