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特集 今と将来を見据えた小児整形外科理学療法
血友病性関節症の治療と理学療法
著者: 織田聡子1
所属機関: 1荻窪病院リハビリテーション室
ページ範囲:P.1099 - P.1103
文献購入ページに移動血友病の理学療法と聞いてその内容を想像することは難しいかもしれない.筆者も荻窪病院(以下,当院)に入職していなければ国家試験で血友病の理学療法について一問出題されていたという記憶がある程度で終わっただろう.
血友病には先天性血友病と後天性血友病があるが,本稿では先天性血友病について述べる.血友病とは,血友病A(血液凝固第Ⅷ因子活性の欠乏)と血友病B(血液凝固第Ⅸ因子活性の欠乏)の2タイプに分類され,一般に男児に発症する.X染色体連鎖劣性遺伝形式を示す出血性疾患であり,いったん出血すると止血に時間がかかる.従来,出血時に凝固因子製剤を投与し,患部を安静に保つ治療が進められてきた.しかしながら,この止血法では重症患者の多くは反復する関節内出血の結果として血友病性関節症を発症する1).さらに,過去に使用された非加熱凝固因子濃縮製剤を介してヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)やC型肝炎などへ感染した患者もいる2).近年では出血予防あるいは血友病性関節症の発症進展抑止を目的として,非出血時に欠乏する凝固因子を長期間にわたり定期的に補充する止血管理法(定期補充療法)が行われるように変化してきた3).それにより,血友病患者の平均余命とQOLも飛躍的に向上している.
本稿では血友病の疫学,病態,治療の歴史を概観しながら,当院で手術をされた患児の理学療法の紹介,取り組み,今後の展望について述べたい.
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