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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻12号

2019年12月発行

文献概要

特集 装具の臨床

理学療法における装具療法の両立—その工夫と臨床判断

著者: 横田元実1

所属機関: 1藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科

ページ範囲:P.1163 - P.1169

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はじめに

 装具は,固定・免荷,変形の予防・矯正,機能的補助を目的にさまざまな疾患に対して用いられている.特に下肢装具は,脳卒中などの麻痺性疾患において機能的補助の目的で用いられることが多く,その有効性に関しては脳卒中治療ガイドライン1)に記載されている.脳卒中の装具療法は機能回復が見込めなくなってから始めるのではなく,「早期処方・早期装着,そしてよりよいコストパフォーマンスへの対応が求められている」2)

 脳卒中では生じ得る障害が多様なうえ,急性期から回復期にかけて大きく変化する.このため,下肢装具の選択のみならず,回復過程における下肢装具の変更や設定調整についても日々,臨床のなかで判断することが理学療法士に求められる.一方,短下肢装具を中心に近年,さまざまな下肢装具が開発されており,機能性に富んだものも多い.選択肢が増えたことは喜ぶべきことだが,その分,下肢装具の選択と機能設定調整に際して多くの知識が必要となり,難渋することも少なくない.

 下肢装具を選択する際には麻痺や筋緊張の程度,変形の有無,感覚障害の程度,体格,使用場所,立位や歩行能力などさまざまな視点から複合的に検討し判断する必要がある.装具療法を進めるうえで特にポイントとなるものの1つが立位,歩行能力である.

 ヒトの一側下肢の自由度は股関節3,膝関節1,足部3の合計7自由度をもつ.脳卒中により随意性が低下した患者は,麻痺側下肢の7自由度をコントロールすることが困難となり,立てない,歩けないなどの能力低下を呈する.そこで,麻痺肢に下肢装具を用いて非麻痺側を含めた残存機能でコントロール可能な自由度に制約し,運動を単純化する必要がある.脳卒中の理学療法における下肢装具の効用はさまざまあるが,重要なものの1つが自由度制約であると考える.ここでは自由度制約の観点から脳卒中の装具療法について考えたい.

参考文献

1)日本脳卒中学会 脳卒中治療ガイドライン委員会(編):脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画,2015
2)浅見豊子:脳卒中片麻痺の装具.川村次郎,他(編):義肢装具学,第4版.p201,医学書院,2009
3)横田元実,他:機能障害・能力低下の実態 装具と歩行.園田 茂(編):最強の回復期リハビリテーション—FIT program.pp182-189,学会誌刊行センター,2015
4)渡邉英夫:脳卒中の下肢装具—病態に対応した装具の選択方法,第2版.医学書院,2012
5)澤村誠志:切断と義肢,第2版.pp326-327,医歯薬出版,2016
6)水野元実,他:調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具の開発—その概念と基本性能の検討.日義肢装具会誌2005;21:225-233
7)横田元実:調整機能付後方平板支柱型短下肢装具(APS-AFO;RAPS)の知識.MED REHABIL 2018;225:6-40
8)横田元実:起立着座動作.才藤栄一(監),金田嘉清,他(編):PT・OTのための臨床技能とOSCE機能障害・能力低下への介入編.pp177-186,金原出版,2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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