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特集 変形性股関節症とメカニカルストレス
歩行時における股関節疾患患者の下肢力学的エネルギー連鎖
著者: 加藤浩1 阿南雅也2
所属機関: 1九州看護福祉大学大学院看護福祉学研究科健康支援科学専攻 2大分大学福祉健康科学部理学療法コース
ページ範囲:P.145 - P.155
文献購入ページに移動本稿のキーワードは「エネルギー(energy)」である.読者諸氏は,このエネルギーという言葉を聞いて何を想像するだろうか? 広辞苑によるとエネルギーとは,「① 活動の源として体内に保持する力.活気.精力.② 物理学的な仕事をなし得る諸量(運動エネルギー・位置エネルギーなど)の総称.物体が力学的仕事をなし得る能力の意味であったが,その後,熱・光・電磁気やさらに質量までもエネルギーの一形態であることが明らかにされた」とある.つまり,物理学で言うエネルギーとは,仕事をすることのできる潜在的能力と定義することができる.では「仕事」とは何か? ここで言う仕事とは,物体に力を加えて,その物体が力を加えた方向に動かされたとき,その力は物体に対して仕事をしたと言う.よって,仕事(W)は加えた力(F)と物体が移動した距離(ΔS)の積(W=F×ΔS)で規定される.
そう考えると,臨床場面での立ち上がり動作や歩行といった諸動作は,身体重心(center of gravity:COG)位置が移動(変位)するので,力により仕事がなされた結果であると言える.これをもう少し詳細に述べると,身体の各筋群が発揮した筋張力により各関節レベルで関節モーメントと言う力が発揮され,それら各関節レベルで発揮された力が仕事をした結果,COGが移動したと言える(図1)1).このようにエネルギーは,すべての動作発現に必要不可欠なものである.そこで本稿では,この仕事をすることのできる潜在的能力のエネルギーに焦点を当て,健常者と股関節疾患患者の歩行時における骨盤・大腿・下腿部での力学的エネルギー特性について解説する.
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