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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻3号

2019年03月発行

文献概要

特集 こころの問題と理学療法

認知症における行動・心理症状の特徴と理学療法の取り組み

著者: 小滝治美1

所属機関: 1医療法人社団一心会初富保健病院リハビリテーション科

ページ範囲:P.233 - P.241

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はじめに

 わが国の認知症高齢者の数は2012(平成24)年で462万人と推計されている1).認知機能の低下に伴い,IADLの低下・意欲低下・対人関係の低下など徐々に生活のしづらさが進行し,ADLもままならぬ状態に陥る.もの忘れ外来の増加や画像による早期発見技術の向上により早期に認知症と診断される患者が増え,長い期間,認知症に向き合って生活する時代になった.

 当然,理学療法士が認知症の方と出会う機会も増えていることが予想されるが,「認知症は苦手だ」という理学療法士は少なくない.指示に従えない,拒否が強い,時間をかけてコミュニケーションをとるわりには効果が上がらないなど,身体的障害以上に,「やる気」という心の側面が問題視されることが多い.特に,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)の存在は,リハビリテーションの継続そのものを困難にし,ご家族はもちろん,医療・介護スタッフともに疲弊してしまう.本稿では,BPSDの考え方について概説し,理学療法士が身につけておくべき対処法と介入方法について,症例を交えながら検討していきたい.

参考文献

1)厚生労働省:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)—認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて(概要).2015.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/01_1.pdf(2018年1月19日閲覧)
2)山口晴保:BPSDの定義,その症状と発症要因.認知症ケア研究誌2018;2:1-16
3)American Psychiatric Association:Diagnostic and statistical of manual of mental disorders, fifth edition. American Psychiatric Association Publishing, Washington, 2013
4)金谷さとみ:認知症の標準的解釈とリハビリテーション介入.文光堂,2017
5)島田裕之(監),牧迫飛雄馬(編):理学療法士のための知っておきたい! 認知症知識Q & A.医歯薬出版,2018
6)国際老年精神医学会(原著),日本老年精神医学会(監訳):認知症の行動心理症状 BPSD,第2版.アルタ出版,2013
7)日本神経学会(監),「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会(編):認知症疾患診療ガイドライン2017.医学書院,2017
8)服部英幸(編):改訂版BPSD初期対応ガイドライン.ライフ・サイエンス,2018
9)Ismail Z, et al:The Mild Behavioral Impairment Checklist(MBI-C):a rating scale for neuropsychiatric symptoms in pre-dementia populations. J Alzheimers Dis 2017;56:929-938
10)唐澤秀治:脳外科医による認知症初期における診断上のピットフォール—特に軽度行動障害(MBI)について.第1回日本脳神経外科認知症学会学術講演集,2017
11)山崎裕司,他(編):リハビリテーション効果を最大限に引き出すコツ—応用行動分析で運動療法とADL訓練は変わる.三輪書店,2008
12)小滝治美,他:BPSDのある認知症患者に対するリハビリテーションアプローチ.精神科看護2017;44:18-21

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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