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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻5号

2019年05月発行

文献概要

特集 全体像を把握する

全体像を捉えるための理学療法の考え方

著者: 星文彦1

所属機関: 1埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科

ページ範囲:P.461 - P.467

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はじめに

 理学療法を実施するにあたり,対象者の全体像を捉えるとはどういうことか.理学療法に対する対象者からの問題提起は,怪我や疾病に伴う機能の低下,喪失,不全などから発起されるが,急性期,回復期,維持期,進行,寛解,誕生,終末などの時間経過と疾病の特性,対象者のディマンドやニーズ,家族,物理的環境や社会的環境など,対象者を取り巻くさまざまな要因により問題は多様化,変化する.したがって,対象者の全体像は一義的,一元的に決定されるものではないように思われる.

 このような観点からすると,理学療法の問題となる対象は,何であろうか.理学療法は本来,治療的アプローチとして個体の機能の改善,回復を目的とするが,適応的アプローチとして課題や環境の調整を行うことも手段の1つである.人の運動行動は個体のもつ機能と課題,および環境との相互作用により発現するという概念から考える1)と,理学療法の対象は運動行動であると捉えることができる.運動行動は,運動・動作・行為の3つの側面から分析されるが2),それぞれを対象とする国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)モデルや疾病症候障害学に基づく関係性や因果性からの捉え方も必要となると思われる3,4)

 本稿では,全体像を捉えるための理学療法を考えるうえで必要と思われる3つの視点,① ICFモデルに基づく問題抽出とアプローチ,② 疾病症候障害学における属性(因果性)と関係性から捉える問題抽出とアプローチ,③ 病期に関連する問題抽出とアプローチについて記述し,最後にバイオサイコソーシャルアプローチ(biopsychosocial approach)5〜7)および患者中心アプローチ(patient-centered approach)8)の観点から全体像を捉えることを考えてみることにする.

参考文献

1)Shumway-Cook A, et al:Motor control, translating research into clinical practice, 5th ed. Wolters Kluwer, Philadelphia, pp3-20, 2017
2)中村隆一,他:基礎運動学,第6版.医歯薬出版,pp297-326,2013
3)星 文彦:観察的動作分析の意義と役割.理学療法2017;34:4-9
4)奈良 勲(編著):理学療法概論,第6版.pp5-37,pp75-134,医歯薬出版,2013
5)Engel GL:The need for a new medical model:a challenge for biomedicine. Science 1977;196(4286):129-136
6)Engel GL:The clinical application of the biopsychosocial model. Am J Psychiatry 1980;137:535-544
7)渡辺俊之,他:バイオサイコソーシャルアプローチ—生物・心理・社会的医療とは何か? 金剛出版,pp15-169,2014
8)Stewart M, et al:Patient-centered medicine transforming the clinical method, 3rd ed. CRC Press, Florida, pp3-66, 2014
9)WHO:ICDH-2:International Classification of Functioning, Disability and Health, final draft. 2001
10)Pope AM, et al(eds):Disability in America for prevention;toward a national agenda for prevention. National Academy Press, Washington, 1991
11)中村隆一(監),岩谷 力,他(編):入門リハビリテーション医学,第3版.医歯薬出版,pp20-40,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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