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講座 ビッグデータ・2
医療ビッグデータで地域を動かす—理学療法士が果たせる役割
著者: 埴岡健一1 立森久照2 井上智貴3
所属機関: 1国際医療福祉大学大学院 2国立精神・神経医療研究センター 3群馬大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学分野
ページ範囲:P.603 - P.613
文献購入ページに移動あなたは,自分の働いている地域が「脳卒中死亡率が高いか低いか」,「ADL改善率が高いか低いか」,「理学療法士の人数が多いか少ないか」を知っているだろうか.現在はビッグデータ由来の情報によって,地域の医療に携わる者が,自分の地域の状況を診断し課題を捉え,解決策を見出していけるようになってきた.本稿では,主に脳卒中分野のリハビリテーション領域を素材にして,その現状と将来を考察していきたい.
今,全国の医療・ケアの質の向上策として,医療の患者アウトカムや医療プロセスの均てん化(あまねく質の高い状態とすること)によって地域差をなくし,全体を底上げしていくアプローチが脚光を浴びている.好事例地域(ベスト地域)と課題地域(ワースト地域)を同定し,課題地域が好事例地域と同様のアウトカムを達成することが,均てん化達成への道筋である.
近年,ビッグデータ由来の集計データや統計情報がオープンデータとして公表され,特別なデータに特権的にアクセスできる立場になくとも,たとえ1人の医療職であっても,地域診断を行うことができる状況となってきた.
また,診療報酬改定は医療のアウトカムや質に応じた支払いの方向に舵を取りつつある.2018年度から動いている都道府県第7次医療計画や2015年からスタートした地域医療構想の策定も,地域それぞれの課題を同定したうえでそれを解決する枠組みになっている.本稿では,読者がビッグデータの活用によって診療報酬と医療計画を地域においてつなぎ,地域の特性を踏まえた将来像を展望することができることをめざす.
目の前の1人ひとりの患者さんと向き合って最善の医療・ケアに努め,また,所属する医療機関の質と収益に貢献するとともに,医療ビッグデータを活用して地域の改善にも貢献することができる環境が整いつつある.1人ひとりの理学療法士など医療提供者がどの地域で働くべきか,ミッションやキャリアを考えるときにも有益な情報となる.
本稿では,主に脳卒中分野のリハビリテーション領域を素材として,ビッグデータ由来のオープンデータによって,理学療法士が地域アウトカムの改善にどう参加していけるかを考えることとする.
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