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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻7号

2019年07月発行

文献概要

入門講座 困難への対応—経験者に学ぶ・3

意欲の低下にどう向き合うか? 疾患由来編—なじみの人間関係づくりから取り組んだ歩行練習—大腿骨頸部骨折術後に意欲の低下がみられた認知症高齢者の一例/脳血管障害患者の意欲低下—患者側と理学療法士側の要因を把握し,練習の工夫につなげる/慢性閉塞性肺疾患患者の意欲低下—疾患の背景を把握しアプローチする

著者: 丸田和夫1 小松洋介2 渡邉文子3

所属機関: 1まるた老年リハビリ研究所 2 3公立陶生病院中央リハビリテーション部

ページ範囲:P.713 - P.720

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はじめに

 不測の事態に陥ったとき,たとえ血縁がなくても,日頃から付き合いのある人が頼りになることがある.室伏1)によれば,それは「遠くの身内より,近くの他人」といわれるように,認知症高齢者にもみられる現象であり,「なじみの人間関係(仲間)」をつくりだすうえにおいて役立つとされている.なじみの人間関係は,「認知症誤認による虚構的に加工された人間関係」ではあるが,親近感や同類感が認知症高齢者へのインフォームド・コンセント(説明や同意)を容易にしてくれる.

 今回,特別養護老人ホーム(施設)内で転倒し,病院で大腿骨頸部骨折の手術を行ったが,意欲の低下によって術後の歩行練習が思うように進まず早期退院せざるを得なくなった認知症高齢者を施設内で担当する機会を得た.

 本稿では,筆者(理学療法士)と認知症高齢者との間でなじみの人間関係づくりを行い,その心情を理解して信頼関係を得ることに努力して歩行練習を行った.その結果,受傷以前の歩行状態を取り戻すことを経験したので,歩行練習への拒否・意欲の低下に対する向き合い方と対処方法について述べたい.

参考文献

1)室伏君士:痴呆老人への対応と介護.pp120-149,金剛出版,1998
2)国際老年精神医学会(著),日本老年精神医学会(監訳):認知症の行動と心理症状—BPSD,第2版.pp43-44,アルタ出版,2013
3)室伏君士:認知症高齢者の本態の理解—とくにその生き方の意義と対応について.pp35-92,ワールドプランニング,2014
1)日本脳卒中学会:うつ状態に対する対応.脳卒中治療ガイドライン2009.pp338-340,2009
2)濱 聖司:脳卒中後うつと意欲低下.高次脳機能研2010;30:285-298
3)河本英夫:システム的介入の最近接領域.「エコ・フィロソフィ」研究2017;11:83-92

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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