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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻8号

2019年08月発行

文献概要

特集 IADL—生活をもっと科学的に

ADL自立度を予測する理学療法戦略—私たちが日々行う活動を考える

著者: 中山恭秀12

所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属病院 2広島大学医学部

ページ範囲:P.783 - P.789

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はじめに

 人は家で暮らし,さまざまな人と接点をもち,社会の一員として生活している.たとえ独居であっても,地元の町内会や寄り合い,幼なじみや同僚といった人とのかかわりはもっていることが多い.人は家や社会に生かされていると言える.日常生活活動(activities of daily living:ADL)は,生活するうえで必要なさまざまな活動の総称である.

 朝起きて,歯磨きをして顔を洗い,トイレに行く.パジャマを脱いで服に着替えリビングやダイニングに行き,人によっては食事の支度を,人によっては用意されたものを食べたり飲んだりする.家を掃除して洗濯物を干す.テレビを見て,電話がかかってきたら出て,宅配便や書留の受け取り印を押す.自転車や自動車を運転する人もいれば,ブラブラとショッピングをする人もいるだろう.出かけるときは靴を履き,ドアの鍵を閉める.帰宅後は風呂を掃除し,風呂に入り頭や体を洗う.寝るときは寝巻きに着替え,布団やベッドに入る.重なるものを省いて記載したが,ざっと思いつくままに人の1日の生活に共通して行われる活動を挙げてみた.

 これらすべてがADL,もしくは手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living:IADL)である.臨床現場において患者を目の前にすれば,これはADLでこれはIADLということはなく,患者の生活における重要性という視点のほうが意味をもつ.また,患者が病と闘い,何らかの障害を抱えて自宅に戻るうえで,元の生活でどのように行っていたかという情報,つまり“入院前生活活動の状況”を把握することは重要で,最終的に効果を判断するうえで比較する対象として欠かせない.いかに正確に,真値に近いものを聴取し把握することができるかが,理想に近い退院設定を行ううえで重要な手続きとなる.

参考文献

1)日本整形外科学会,他(監),日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,他(編):変形性股関節症診療ガイドライン2016,改訂第2版.p10,南江堂,2016
2)ヒューマンサイエンス振興財団:平成26年度(2014年度)将来動向調査報告書 ロコモティブシンドロームの将来動向.平成26年度厚生労働省科学研究委託費(創薬基盤推進研究事業).http://www.jhsf.or.jp/paper/report/report_201402.pdf(2019年5月8日閲覧)
3)木下一雄,他:人工股関節全置換術後の理学療法.安保雅博(監),中山恭秀(編著):臨床データから読み解く理学療法学.pp32-39,南江堂,2017
4)東京慈恵会医科大学第三病院:リハビリテーション部門の取り組み.http://www.jikei.ac.jp/hospital/daisan/rehabilitation/01.html(2019年5月8日閲覧)
5)藤澤宏幸:理学療法の基層—人間学としての思想に向き合うための15章.pp54-55,北樹出版,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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