icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻8号

2019年08月発行

文献概要

講座 ビッグデータ・4

ビッグデータの理学療法への応用可能性

著者: 対馬栄輝1

所属機関: 1弘前大学大学院保健学研究科

ページ範囲:P.825 - P.833

文献購入ページに移動
はじめに

 最近,メディアではビッグデータ(big data)という用語を多く耳にする.保健・福祉・医療の現場でも,その活用場面は増えつつあるが,理学療法の分野では,まだ一部の領域でのみ活用されているに過ぎず,一般にはあまり馴染みがない.

 ビッグデータとは,その名のとおり“大量”のデータのことである.しかし量が多いだけではビッグデータとは呼べない.データは“多種多様”であり,データの発生・更新が頻繁に繰り返されるという“速さ”の性質ももっている.

 とりわけ本稿では暫定的に「典型的なデータベースソフトウェアが把握し,蓄積し,運用し,分析できる能力を超えたサイズのデータ1)」と定義しておく.

 急激な情報技術(information technology:IT)の発展によって,誰もがパーソナルコンピュータを所有し,利用できるようになった.インターネットの普及に伴い,多くの情報収集が可能となり,また情報発信もできるようになった.それによって個人単位でも莫大なデータ量を扱えるし,ましてや組織全体で考えると,かなり多量なデータを扱うことになる.蓄積されていくデータは有効活用できるものもあろうし,捨てるべき無用なものも多い.

 こうして蓄積されたビッグデータは,曖昧な要素が大きいので把握・分析は困難である.誰もが簡単に手を出せるものでもないし,そう言っている間に,随時蓄積されていく.こうしたデータを蓄積するだけにしておいてよいだろうか.

 われわれに必要とされているのは,こうしたビッグデータを,いかにして活用できるようにするか,活用するかという点である.一個人の理学療法士にとっては無縁と言いたいところだが,いずれかかわるときがやってくる.そうは言っていられない時代がやってくる.

 前号までの本講座では,基礎事項や地域医療分野での活用事例などについて詳しく説明されてきた.本稿では,具体的に理学療法士が組織単位でまたは個人単位でもビッグデータを活用していくにあたり,今後の可能性と,それを活用するために必要となっていく課題について提案する.

参考文献

1)大澤剛士,神保宇嗣:ビッグデータ時代の環境科学—生物多様性分野におけるデータベース統合,横断利用の現状と課題.統計数理2013;61:217-231
2)塩田千幸:データマイニングの手法と実際.計算機統計学1998;10:127-144
3)大西大輔:医療とIoT(Internet of Things).クリニックマガジン2018;45:48-49
4)市川壱石:厚生労働省におけるデータヘルス改革.看護2018;70:74-77
5)歩行・腕動作など身体機能のIoT見える化サービス「モフ測」.http://moffsoku.jp/index.html(2019年6月20日閲覧)
6)鈴木越治,他:医学における因果推論 第二部—交絡要因の選択とバイアスの整理および仮説の具体化に役立つDirected Acyclic Graph.日衛誌2009;64:796-805

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら