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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル53巻9号

2019年09月発行

文献概要

入門講座 地域生活につなげるさまざまなサービス・1【新連載】

障害児の就学前と学齢期の生活とサービス

著者: 芝原美由紀1

所属機関: 1東京国際大学人間社会学部

ページ範囲:P.923 - P.931

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はじめに

 今から50年余り前,重症心身障害児の問題が示され,昭和42(1967)年,「重症心身障害児施設」が法的に認められた.この施設は,医療ニードの高い重症心身障害児に対応する医療機能と児童福祉法の両面を備えた施設である.その後,国立療養所重症心身障害病棟も加わった.家庭で行えないケアや治療を受けながら,重症心身障害児が生活する場となった.このころは,多くの重症心身障害児は成人までの生命予後は厳しいとされていた.

 その後,重症心身障害児であってもともに生活したいという家族の願いや,昭和54(1979)年,重症心身障害があってもすべての子供に教育をという思いを受け,養護学校(当時)での義務教育制が始まった.家庭で生活し学校に通学などするという,障害児と家族のための在宅生活の支援が始まった.在宅支援に,障害児の通園療育や特別支援学校・特殊学級などの教育支援も加わった.

 そして,障害児に関係する法令はこの数年で大きな分岐点にきている.2012年に18歳未満の障害児を対象とした施設・事業は,児童福祉法に一本化された(表,図1).身近な地域での支援を充実するため,支援の主体は都道府県から市町村となり,現在,各市町村で具体的な取り組みが行われている.しかし,高齢者への取り組みや急務とされる認知症への課題が大きく迫るなかで,この障害児に対する在宅生活の地域支援事業の変化は見えにくい.

 本稿では,小児理学療法の地域生活支援という視点から,まず,対象の子供の障害像,ともに生活する家族の現状と課題を取り上げる.次に,近年の公的な支援制度について支援事業とサービスの具体的内容を説明する.この支援事業とサービスは各市町村で異なるが,一般的な支援事業と新しく加わった事業を障害児のライフステージを考慮して紹介する.

 そして最後に,理学療法士としてこれからの障害児の生活支援について,どのように考えていくべきかを述べる.

参考文献

1)三科 潤:低出生体重児の長期予後.日産婦誌2006;58:127-131
2)板橋家頭夫:低出生体重児出生率の増加.小児科2015;56:641-651
3)細渕富夫:「強度行動障害」と「動く重症児」問題:その歴史と現状.障害者問題研2005;33:2-9
4)杉本建朗,他:超重症心身障害児の医療ケアの現状と問題点—全国8都道府県の調査.日小児会誌2008;112:94-101
5)前田浩利:在宅療養支援診察医の立場からみた現状と課題.小児臨2016;69:7-12
6)前田浩利:小児在宅医療の現状と課題.日在宅医会誌2015;16:5-12
7)川住隆一,他:超重症児に対する教育の充実・発展に向けての研究課題—全国調査を踏まえて.東北大学大学院教育学研究科研究年報2011;59:247-263
8)大江啓賢,他:重症心身障害児および重度・重複障害児に対する療育・教育支援に関する研究動向と課題.山形大学紀要2014;16:47-57
9)地域子育て支援拠点事業の実施について.雇用均等・児童家庭局長:厚生労働省平成30年6月27日通達.
10)日中活動を含めて動ける重症心身障害児者の現状と課題について.第20回佐賀県重症心身障害児(者)を守る会,2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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