報告
再建術施行前の膝前十字靱帯損傷患者における運動恐怖感および身体知覚異常の検討
著者:
永井勇士郎
,
三木貴弘
,
永井汐莉
,
盛智子
,
鈴木智之
ページ範囲:P.115 - P.120
要旨 【目的】本研究の目的は ① 膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷患者において再建術施行前の運動恐怖感,身体知覚異常,主観的膝機能が健常人と異なるかを明らかにすること,② ACL損傷患者における運動恐怖感,身体知覚異常,主観的膝機能の関連性を明らかにすることとした.【方法】対象はACL群27名とコントロール群30名とした.ACL群は手術前日にカルテより基本属性(性別,身長,体重)を調査し,運動恐怖感は日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK-J),身体知覚異常は日本語版The Fremantle Knee Awareness Questionnaire(Fre-KAQ-J),主観的膝機能は日本語版Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score(J-KOOS)を用いて調査した.コントロール群も同様に各種質問票を調査し,基本属性は自己申告にて別紙に記載した.【結果】両群の基本属性に有意差はなかった.TSK-J,Fre-KAQ-Jにおいてそれぞれ中央値(四分位範囲)がACL群38(36.0-41.0),8.0(5.0-12.0),コントロール群が28(20.8-32.0),0(0.0-0.3)であり,すべてにおいてACL群の値が有意に高かった.J-KOOSは,すべての下位項目でACL群が有意に低かった.各質問票の関連性については,TSK-JとJ-KOOSの「痛み」でのみ有意な中等度の負の相関(r=−0.41)を認めた.【結論】ACL損傷患者において手術前から運動恐怖感,身体知覚異常が存在している可能性が示唆された.術前または介入早期からそれらを考慮した理学療法プログラムを立案,実行することが重要と考える.