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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル54巻3号

2020年03月発行

雑誌目次

特集 地域における予防の効果—理学療法の可能性

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.256 - P.257

 近年,「予防」の重要性が高まっており,本特集では地域における予防について,対象者個々人の状態の維持,医療費の抑制・削減,集団活動と地域・街づくり,病院との連携など,さまざまな視点から理学療法の可能性と効果について整理した.

地域での運動・保健行政による予防活動の可能性—医療費削減効果の視点から

著者: 吉田俊之

ページ範囲:P.258 - P.266

Point

●予防活動では,疾病予防と介護予防を複合化したアプローチの開発が期待される

●予防的生活のセルフマネジメントの普及により共助の財源活用の効率化が可能となる

●住民個人が有する地域との関係性を理解し対応できる専門職人材が求められる

理学療法士の地域における予防活動の実態と活動効果

著者: 野村卓生

ページ範囲:P.267 - P.274

Point

●地域での予防における理学療法の目的は,健康増進,介護予防,重症化予防に分けて考えられる

●高齢者だけでなく,勤労者や小児も対象として取り組むことができる

●理学療法効果の検証は難しいケースもあるなか,予防分野で活動するためには能動的な仕組みづくりが求められる

介護予防・日常生活支援総合事業における理学療法の効果

著者: 服部真治

ページ範囲:P.275 - P.283

Point

●介護保険サービスに頼らない自立した生活のために,通所型サービスCの利用は有効である

●通所型サービスCのポイントは,リエイブルメントと同様,利用者の自信や意欲を取り戻す働きかけにある

●利用者のセルフマネジメント力を高めるため,理学療法士は「動機付け面談」の重要性を認識しなければならない

地域のスポーツグループへの参加と介護予防

著者: 金森悟

ページ範囲:P.284 - P.292

Point

●高齢者がスポーツグループに参加することは,1人で運動をすること以上に介護予防に効果的である可能性がある

●地域のスポーツグループへの参加割合を高めることで,その地域の住民全体に健康への恩恵があるかもしれない

●理学療法士には運動を通してさまざまなつながりを創り出していくことが望まれる

急性期病院における予防と地域との連携

著者: 岩田健太郎 ,   本田明広 ,   北井豪

ページ範囲:P.293 - P.302

Point

●急性期病院において地域と連携した三次予防の取り組みが求められている

●在宅リハビリテーションプログラムの構築にあたって,急性期・在宅間の人事交流やクラウド型システムによる情報共有が効果を挙げている

●医療介護連携の推進には,急性期病院における高リスク患者のスクリーニングが重要となる

Close-up 振動刺激

振動刺激と運動錯覚

著者: 今井亮太

ページ範囲:P.306 - P.309

はじめに

 「振動刺激」は物理療法の1つであり,筋や腱または全身に振動刺激を加えることによる筋緊張の抑制や疼痛抑制効果については古くから研究されている.腱に振動刺激を加えると,実際には四肢が動いていないにもかかわらず,あたかも動いているかのような感覚(運動錯覚)が得られる.筆者らは,その運動錯覚を用いて術後患者の疼痛軽減効果が得られることを明らかにした.本稿では,まず振動刺激を用いた運動錯覚について概説し,その後,整形外科疾患患者への介入について,筆者の臨床研究を中心に述べていく.

振動刺激と姿勢制御

著者: 伊藤忠

ページ範囲:P.310 - P.313

はじめに

 固有感覚障害による姿勢不安定性は腰痛のある人々で確認されており,これらの障害は腰痛の原因とメカニズムに関連している可能性があることが示唆されている1〜5).また,腰痛のある人々では,背筋の持久性の減少,疲労の増加から固有受容器のコントロールに悪影響を及ぼす可能性があると言われている5,6).さらに,高齢の腰痛患者においては,固有感覚低下によって,より姿勢制御が不安定になることが明らかとなっている1,7, 8).これらの固有感覚障害の評価には,局所振動刺激を利用した方法が多く用いられている.

 交感神経系の固有感覚に対する影響には,骨格筋の血流減少による間接的な影響だけでなく,筋長の変化に対する感度を弱める可能性があると考えられている5,9).また,傍脊柱筋の筋紡錘は,腰部の生理学的な可動範囲内で負荷を受け,腰部最長筋と多裂筋の筋紡錘は脊椎の運動速度や位置に敏感に反応すると言われている10,11).現時点では,姿勢制御にかかわる重要な受容器は筋紡錘と考えられているが,ファーター・パチニ小体などの皮膚受容器や関節受容器も姿勢制御に関係している可能性がある.

 しかしながら,腰痛患者の固有感覚における皮膚の受容器の重要性を述べた姿勢制御の研究は非常に少ない7, 8).固有感覚障害による姿勢不安定性の評価には,下腿と腰部に対して局所振動刺激を与える方法が用いられている.本稿では,局所振動刺激を用いた評価方法で,腰痛患者を中心に固有感覚の機能低下による姿勢制御について述べる.

全身振動刺激と痙縮

著者: 宮良広大 ,   下堂薗恵

ページ範囲:P.314 - P.317

はじめに

 近年,振動刺激は片麻痺上肢痙縮に対する局所振動(focal vibration:FV)1,2),下肢痙縮に対する全身振動刺激(whole body vibration:WBV)など3),さまざまな臨床応用が行われている.本稿では,痙縮治療の選択肢の1つとして振動刺激を活用すべく,WBVの適応と禁忌,われわれが取り組んでいる片麻痺下肢痙縮へのWBVを用いた新たな痙縮抑制法について述べる.

頸部振動刺激と半側空間無視

著者: 廣澤全紀 ,   網本和

ページ範囲:P.318 - P.321

半側空間無視と自己中心参照枠

 半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)とは,病巣と反対側の刺激に反応しない,またそちらを向こうとしない症候で1),脳卒中者の日常生活活動の自立を阻害する.USNの病態は複雑で,その病態の違いからいくつかに分類(サブタイプ)される2)(図1).患者は1つのタイプに分類されるわけではなく,複数のサブタイプを有している.どのサブタイプを有しているか判断することで,空間認知処理過程のうちどのレベルや領域が障害されるかを推察し,治療介入へと結びつける手がかりとなる3)

 空間領域の座標でUSNを分類すると,自己身体を中心座標として一方の視空間を認識しない自己中心空間無視と,固視した環境内にある物体を中心座標とした物体中心空間無視に分けられる4).自己中心空間無視では,眼球(網膜),頭部,体幹などの身体の位置関係に基づき,視覚情報・前庭感覚情報・頭部位置の固有受容感覚情報を統合して正中が規定され(自己中心参照枠),これを基準とした一方の視空間が無視される.

連載 とびら

令和初めての年越しに

著者: 原和彦

ページ範囲:P.253 - P.253

 新年を迎える2020年,令和初めての年越しに徒然なる思いと理学療法士の未来に期待する所感を述べたい.遠くの友人から「娘が理学療法士になった」とのはがきが届いていた.理学療法士2世が多く活躍する時代になったと実感する.私が理学療法士となった1982年頃に2,400名程度であった協会会員数は現在12万人を超えており,一層の理学療法士の臨床力と質の保証が課題となる.2020年度からの新・理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則では93から101単位へと取得単位数が増え,新たに厚生労働省が指定する臨床実習指導者養成研修では各養成校と都道府県理学療法士会とが連携した運営が始まっている.また,卒後教育としても資格認定制度に関連した日本理学療法士協会の新たな生涯教育が2021年から始まる.

 医療と介護の連携が課題の1つとなる地域包括ケアシステムでは地域に合った新たな支援のしくみづくりをめざして,すでに多くの機関や職能団体が行動を起こしている.身体運動と生活への適応力の獲得は自立した生活には欠かせない.理学療法支援にはプライマリから生活期,終末期までの幅広い守備範囲があり,多様な年齢,疾患,障害に基づく個別的ニーズが存在する.在宅や老人保健施設,介護・福祉の各事業所では多くの理学療法士が地域の最前線で活躍し始めている.卒前教育においても地域理学療法の実践について学ぶ科目を配置するようになった.

脳画像から読み取る障害像と理学療法・15

歩行再獲得した内頸動脈梗塞の一例

著者: 伊藤直城

ページ範囲:P.249 - P.252

Question

この脳画像からどのような予後予測をしますか?

はじめてのマネジメント学—できることから始めよう・Part 3

後輩たちの成長のために—さまざまな人材育成手法

著者: 鯨岡栄一郎

ページ範囲:P.327 - P.330

はじめに

 2019年5月26日の日本経済新聞電子版にて「頼りは上司よりSNSの他人—若者,自腹でコーチング」という記事1)が掲載された(下記,一部抜粋).


上司のアドバイスは「ピンとこない」

 コーチングを求め,自らコーチを探す20〜30代が増えている.コーチングは企業の人材育成に取り入れられてきたが,必ずしも適切に運用されているとは限らない.

 若い世代は年上世代の助言に解決策を見いだせなくなっている.会社にも,上司と部下が定期的に話し合う「1 on 1制度」があるが,「会社のは一方的にアドバイスされるだけ.『こうしてみなよ』って言われるけど腹落ちはしない」.

 「幸せの定義を自分で考える時代」.先輩を見れば自分の未来が予想できた時代は終わった.アドバイス的なコミュニケーションじゃニーズを満たせないという.

 「何がしたいか分からない」,「やりたいことが見つからない」.コーチを付ける20〜30代の若者に多いのが,この悩みだ.


 どうだろう,今の雰囲気をとてもよく物語ってはいないだろうか? もちろん,すべての場がこうではないだろうが,そのぐらい上司はあてにされていない,ということらしい.

 どんなにラダーや稼業表など教育の仕組みが整っていようと,結局は担当する者のさじ加減,腕次第でいかようにでも左右されてしまう.

 そこで今回は,「相手(後輩たち)の成長」に主眼を置き,人を育てることとは,ということについて考えていきたい.

新しい臨床実習・第3回

診療参加型臨床実習の実践

著者: 長谷川真人 ,   横田一彦

ページ範囲:P.331 - P.336

はじめに

 理学療法分野での臨床実習のあり方については過去にもさまざまな議論がなされており,多くの理学療法士にとって関心の高い内容であろう.2018年10月に理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則が改正され,理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン(以下,ガイドライン)での臨床実習の教育目標は「社会的ニーズの多様化に対応した臨床的観察力・分析力を養うとともに,治療計画立案能力・実践能力を身につける.各障害,各病期,各年齢層を偏りなく対応できる能力を培う.また,チームの一員として連携の方法を習得し,責任と自覚を培う」1)となり,限られた期間でさまざまな経験を積んでいく必要がある.ガイドラインでは実習施設に関する事項として「評価実習と総合臨床実習については,実習生が診療チームの一員として加わり,臨床実習指導者の指導・監督の下で行う診療参加型臨床実習が望ましいこと」としており,2020年4月入学生から適用される予定である1)

 一方,多くの臨床現場では実習生が特定の患者を担当する患者担当型実習が行われており,2017年の学生・卒業生を対象としたアンケート調査では,約8割が患者担当型実習を経験したと回答している2).従来の患者担当型実習の問題点として,現実味の欠けたレポート中心の指導に偏りやすい,患者の利益を損なう可能性が高いことが挙げられたほか,レポート添削のため時間外労働が増えるなど,指導者にも実習生にも負担がかかるとされており3),有用かつ効率のよい臨床実習のあり方として診療参加型臨床実習が求められている.

 診療参加型臨床実習は医学教育で既に導入されており,クリニカルクラークシップ(clinical clerkship:CCS)実習とも称される.具体的には,学生が診療チームの一員として診療業務を分担しながら,職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な内容を学習し,実際の診療業務に必要とされる思考力(臨床推論)・対応力などを養うことを目的とした実習形態である4).しかし理学療法分野でのCCS実習に関して「実習生の診療への参加」が重要視されているものの,具体的な実施方法についてはさまざまな解釈が存在し統一的な見解がなく5),具体的な報告例もあまり多くない.そこで本稿では,東京大学医学部附属病院(以下,当院)で試みている臨床実習方法を紹介し,臨床現場にて安全かつ効果的で実践しやすいCCS実習体制について検討する.

国試から読み解く・第3巻

心肺運動負荷試験におけるVE,Vco2の変化を問う

著者: 正保哲

ページ範囲:P.338 - P.339

 20歳の男性.自転車エルゴメーターを用いて,1分間に20ワット増加させるランプ負荷法にて心肺運動負荷試験を行った.その際の分時換気量,二酸化炭素排泄量および酸素摂取量の変化を図に示す.

 ① から ③ までの期間および ④ と ⑤ の時点に生じている生体の変化として正しいのはどれか.2つ選べ.

臨床実習サブノート 「日常生活活動」をみる・11【最終回】

社会交流

著者: 永冨史子

ページ範囲:P.340 - P.345

日常生活活動の「社会交流」をみるということ

 臨床実習で経験する「評価」には,多くの種類があります.そのなかでも日常生活活動は重要で,その結果をもとに,そのまま生活に直結した運動療法課題にアレンジすることも多く,日常生活活動のみかたや捉えかたが理学療法内容そのものに影響します.

 日常生活活動のなかで「社会交流」が「関節可動域や筋力・歩行能力」などと大きく異なるのは,評価範囲が一様でなく,個々の生活スタイルや環境で多くのパターンがあることです.可動域や筋力測定で用いる基準値もなく,「これ1つで社会交流が評価できる」といった便利な評価バッテリーも実はまだありません.

理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・3

モバイルヘルスにおける医療革新への期待と現在地

著者: 萩原悠太 ,   戸田拓弥 ,   金居督之

ページ範囲:P.326 - P.326

 全世界のヘルスケア関連アプリのダウンロード数は,2015年の時点で約30億を超えたと言われており,情報技術における産業の仕組みの刷新の流れは医療分野においても例外ではない.

 このようなモバイルヘルスを活用することによるメリットには,① 時間や場所に拘束されない利便性,② デジタル化による品質管理,③ 大量かつ機密性の高い情報の共有,④ 医療行為以外の生活習慣などのデータ取得保存,などが可能となることが挙げられる.

HOT NEWS

「脳卒中・循環器病対策基本法」の施行と理学療法士に関連する最新の動向

著者: 佐々木嘉光

ページ範囲:P.305 - P.305

循環器病対策推進協議会の設置と循環器病対策推進基本計画の策定

 脳卒中,心血管疾患などの循環器病は,本邦の主要な死亡原因であるとともに,介護が必要となる主な原因の1つであり,社会的な影響が大きく,多様な対策が必要な疾患群である.このようななかで,2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が議員立法で成立し,2019年12月1日に施行された.

 この法律により,国は循環器病対策推進協議会を設置し,「循環器病対策推進基本計画」を策定することになっている.そのため,厚生労働省は2020年1月17日に第1回循環器病対策推進協議会を開催し,団体からのヒアリングを実施した.また,同月29日には,脳卒中・循環器病対策フォローアップ議員連盟が設立され,5月中旬または6月中旬までに6回の会議(団体ヒアリングなど)を開催し,取りまとめを行うこととしている.

私のターニングポイント・第8回

出会いに感謝

著者: 多々良大輔

ページ範囲:P.325 - P.325

 早いもので理学療法士となって23年目となる.楽しいことばかりではないが,よい職業を選んだと心から思えるようになった.多くの恩師からの学び,同志と言える方々との出会いの影響が大きいことは言うまでもない.そのなかでもいくつかのターニングポイントがあった.

 脳卒中や脳性麻痺など中枢神経疾患を有する方々への診療を行っていたリハビリテーション病院勤務から整形外科病院へ異動した当時,本欄第6回(2019年11月号)を担当した田中創氏とともにカナダの理学療法士Diane Lee氏の講習会に参加した.衝撃的であった.瞬時に機能障害を見抜く洞察力と細かい検査に基づいた治療は当時自分が模索していたかたちであり,今なお進化し続ける彼女のモデルは現在の私の診療における骨格となっている.

Relay Message・第3回

備える

著者: 坪井宏幸

ページ範囲:P.346 - P.346

 私のメッセージは“備える”です.もし,皆さんが旅に出かけるとしたら,どのような準備をしますか?

 私は和歌山県で生まれ育ち,理学療法士として地元で働いていました.地元・和歌山県の職場では大学病院への4か月間の研修があり,私は臨床3年目のときにその研修に行きました.そこでリハビリテーション医療の有効性と研究の重要性を身をもって感じ,その翌年には研修先の大学院修士課程に入学し,2018年3月に博士課程を修了しました.そして現在から遡ること約3年前,私の大学院時代の恩師である西村行秀先生が岩手医科大学リハビリテーション医学科の初代教授に赴任することが決まり,2019年9月には新病院が開院することとなりました.そこではまさにこれからリハビリテーション医療が新体制で始まるといった状況でした.その話を初めて聞いたとき,私はただただ驚きました.しかし,私はこれからも臨床だけでなく研究も精力的に行いたいと思っており,それらを実現し得る環境下での臨床・研究は誰もが経験できるものではないと感じ,私もそこで働きたいという想いが込み上げてきたため,岩手県に行くことを決心しました.

症例報告

心臓再同期療法後の心不全患者に対する訪問リハビリテーションにより日常生活動作が改善した要介護症例

著者: 石月亜由美 ,   尾熊洋子 ,   森雄司 ,   加藤倫卓

ページ範囲:P.347 - P.352

要旨 うっ血性心不全を発症後,急性期病院にて両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy-defibrillator:CRT-D)を施行した要介護症例に対して,理学療法士による訪問リハビリテーションを実施した.症例は79歳の女性.うっ血性心不全,心房細動と診断され入院.介助量が多いが,自宅退院を強く希望した.退院4日目より訪問リハビリテーションとして,リスク管理や「できること」の明確化,リハビリテーションマネジメントを行い,不安軽減,活動量向上をめざして6か月間施行した.

 開始時に比べ,植込み機器や心不全増悪に関する不安が軽減し,筋力や認知機能,ADLが向上,生活空間がベッド上から屋外へと拡大した.また訪問リハビリテーション実施期間中,心不全増悪や再入院は認めなかった.

 心疾患術後の要介護状態の患者であっても,退院直後からの訪問リハビリテーション介入は活動性,ADL向上に影響を及ぼすと考えられ,退院調整時には訪問リハビリテーションの導入検討が有効と考えられた.

ひろば

幻肢痛の謎

著者: 奈良勲 ,   小嶋功

ページ範囲:P.353 - P.353

 幻肢痛(panthom pain)とは,切断者の一部の人が呈する痛みである.その語源はラテン語:fantesme,ギリシャ語:phantasma,古フランス語:fantumであるが,幻視・幻聴・幻想・妄想・錯覚・亡霊・実体のない人やものなど多岐にわたる意味がある.さらに,古代インドのサンスクリット語では光る・輝き,古イラン語では白い光・光の放射線などがあり,共通した意味がある.

 漢字の意味は,染色した糸を木の枝にかけた状態の図に由来し,実際に存在しないものがまるであるかのようにみえる現象である.また,珍しいもの,混乱させること,はかない人世としての幻世とか「幻」のような人の世の意味もある.一方,変幻自在とは,思いのままに姿を変貌させて自由自在であることの意味もあり,「幻」には,人を困惑させると同時に夢のある「ことば」であると思える.

学会印象記

—第6回日本呼吸理学療法学会学術大会—呼吸理学療法の進歩と発展

著者: 川路具弘

ページ範囲:P.323 - P.323

●「呼吸を診る」

 第6回日本呼吸理学療法学会学術大会が岸川典明大会長(愛知医科大学病院)のもと,2019年11月10日にウインクあいちで開催され,1,000人以上が参加し各会場で立ち見が出るほどに盛況でした.

 本学術大会は「呼吸を診る」をテーマに各プログラムが行われました.岸川先生による大会長基調講演「呼吸を診る:フィジカルエグザミネーションの意義」,尾崎孝平先生(神戸百年記念病院)による特別講演「呼吸を診る」がありました.リアルタイムに患者の状態を理解するためのフィジカルアセスメントの重要性,またどのように呼吸を診るべきかを説いていただきました.

—第6回日本小児理学療法学会学術大会—小児理学療法の行く末は

著者: 楠本泰士

ページ範囲:P.324 - P.324

●過去にないテーマの学術大会

 第6回日本小児理学療法学会学術大会が福岡国際会議場にて開催されました.今回のテーマは「障害を持つこども達の‘Fun’について考える」とし,大会長である奥田憲一先生(九州栄養福祉大学)の講演から始まりました.Funという言葉は,ICFの枠組みのなかに6つのFから始まる言葉を‘F-words’(Function,Family,Fitness,Fun,Friends,Future)として当てはめたものの1つで,Can Child(カナダ)のRosenbaum先生が障害をもつ子どもたちについてどのように考えるべきかを提唱した言葉で,小児分野では有名なものです.そのなかでもFunはICFのPersonal Factorsに当てはまり,各ポスター発表や2日目のシンポジウムでも子どもたち1人ひとりのFunについて考えさせる内容が例年より多くありました.患者さん,個々の活動性に注目し,尊重する姿勢が小児にかかわる理学療法士として,考えさせられる2日間となりました.

書評

—福井 勉(編)—「《理学療法NAVI》エキスパート直伝 運動器の機能破綻はこう診てこう治す[Web動画付]」

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.304 - P.304

 多くの方はご存じであろうと思うが,私は脳卒中に代表される中枢神経障害をもつ患者の理学療法をより専門にしている.とはいえ,回復期リハビリテーション病棟のみで構成される病院に勤務していることから運動器に問題をもつ入院患者も相応に存在する.多重骨折や頭部外傷を伴う骨折例も多く,人工股関節では回復過程で難渋する事例が多い.その問題に直面したときに長年,札幌医科大学解剖学教室で学んださまざまな知識や思考過程が生かされている.

 運動器の障害をもつ患者の理学療法は脳卒中のそれとは比較にならないほど科学的であると受け止めているが,時に私には理解できないような説明がなされることがある.それは評価においても運動療法においても存在する.一番大きな原因として私自身に十分な経験がないことが挙げられる.書籍で矢印を用いて運動方向などを細かく図説されていてもリアルに理解することはかなり難しいことである.

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目次

ページ範囲:P.254 - P.255

文献抄録

ページ範囲:P.354 - P.355

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.336 - P.336

バックナンバー・次号予告のお知らせ

ページ範囲:P.358 - P.359

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.360 - P.360

 第54巻第3号をお届けします.

 今年からリニューアルした本誌をご覧になって,1冊目ではオーと驚き,2冊目はオヤッと意表をつかれたのではないかと思います.3冊目の本号ではどのような印象をもたれたでしょうか.早くもこの色とデザインは一体いくつの組み合わせがあるのか,来年の1月号は同じ色に戻ってくるのかなどの声が聞こえています.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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