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雑誌目次

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理学療法ジャーナル54巻6号

2020年06月発行

雑誌目次

特集 Pusher現象の謎 「傾き」への挑戦—臨床像と治療アプローチ

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.624 - P.625

 1985年にDaviesが記載した「押す人症候群」は,理学療法の臨床現場ではその治療に難渋する徴候として知られている.これまで,その発生メカニズム,臨床的特性,他の徴候との関連などが報告されてきており,治療についても近年ではいくつかの知見が報告されるようになっている.本特集では現在までの研究成果に基づき理学療法を進めていくうえでの最新かつ重要なポイントについて解説をお願いした.

—エディトリアル—Pusher研究小史—35年間の軌跡

著者: 網本和

ページ範囲:P.626 - P.631

Pusherの発見

 Daviesは『Steps to Follow』(初版)1)の第14章で,「体軸のずれ(押す人症候群,pusher syndrome)」について「……これらの障害は一定のかたちをとり,症候群としてまとめることができる.押す人症候群(pusher syndrome)と呼ばれ,……患者はすべての姿勢で健側に力を入れ,患側のほうに強く押す.そして姿勢を他動的に矯正,つまり体重を健側方向もしくは,体の正中軸を越えて健側に移動しようとすると強く抵抗する」と記述した.ここではこの臨床徴候が「症候群」であること,患側方向へ「押す」こと,そして矯正に対して「抵抗する」ことが特性であるという重要な指摘を初めて行ったのである.その後,同書の改訂2版2)では,この章に「Pusher症候群の素因」という興味深い項が加筆され,固有受容覚,迷路系入力情報の混乱などを背景として,四肢体幹の筋緊張を変化させることがこの徴候の発現に関与している可能性について述べている.

 これに先立ちBrunnstrom3)は,片麻痺症例において患側(麻痺側)に姿勢が傾斜する現象をlisting phenomenonとして報告していたが,このことは片麻痺が重度であれば通常起こり得るものであり,積極的に押すこと,矯正に対して抵抗することについての記載はなくpusher現象を記述していたとは言えない.後述するように「症候群」であるかについては議論の余地があるが,「積極的に押す」,「矯正に抵抗する」というpusherの本質的側面を記述した点でDaviesの功績は大きいと言えよう.

Pusher現象の出現率,経過そして病巣

著者: 阿部浩明

ページ範囲:P.632 - P.638

Point

●Pusher現象の出現率は下肢運動機能障害を有する脳卒中者の10〜15%程度である

●回復遅延には,右半球損傷,感覚障害などの因子が関連し,この現象を早期に消失させることで予後が改善する

●関連病巣として視床後外側部,島後部,中心後・皮質下などが想定されているが,実際には多様で,間脳を含めそれより上位の病変によって生じると考えられる

Pusher現象の生起メカニズム

著者: 藤野雄次 ,   網本和 ,   深田和浩 ,   松田雅弘 ,   藤原俊之

ページ範囲:P.639 - P.643

Point

●Pusher現象の生起機序は垂直を判断する認知的な歪みが原因と考えられている

●非麻痺側肢の運動異常に対する分析や治療が重要である

●バランスにおける生体力学的な要素についての解釈が求められる

Pusher現象の評価方法

著者: 沼尾拓 ,   網本和

ページ範囲:P.644 - P.653

Point

●評価表は予後やリハビリテーション効果の判定だけでなく,情報共有の際の共通言語として有用である

●Pusher現象の評価には国内外で主に4種類の評価表が用いられている

●各評価表の特徴や利点・欠点を踏まえて選択することが重要である

Pusher現象の臨床特性

著者: 万治淳史

ページ範囲:P.654 - P.661

Point

●Pusher現象の特徴として,非麻痺側上下肢による押し返しや姿勢の修正に対する抵抗が挙げられる

●身体傾斜・重心虚脱に対する修正反応の低下は身体的側面のみならず,認知的側面においても認められる

●座位・立位での押し返しだけでなく,臥位・移乗動作・歩行動作における押し返しの評価や治療も重要である

—Pusher現象の治療—起居・移乗動作へのアプローチ

著者: 中山智晴 ,   山﨑裕司

ページ範囲:P.662 - P.667

Point

●動作獲得には成功できる難易度の動作練習を繰り返し行う無誤学習が有効である

●Pusher現象を有する片麻痺者に対する起居・移乗動作練習は難易度の低いものから始める

●シングルケースの積み重ねが有効な動作練習を構築する

—Pusher現象の治療—認知神経リハビリテーション

著者: 生野達也

ページ範囲:P.668 - P.673

Point

●認知神経リハビリテーションは,体性感覚に対するアプローチを行うことで運動の改善を図る

●「左右の体性感覚の比較照合能力低下により垂直認知に問題が生じる」という仮説に基づく

●体幹から臀部における触圧覚へのアプローチを通じて,pusher現象の改善をめざす

—Pusher現象の治療—ニューロモジュレーション

著者: 中村潤二

ページ範囲:P.674 - P.679

Point

●Pusher現象に対するニューロモジュレーションには,直流前庭電気刺激や経頭蓋直流電気刺激の報告がされつつある

●直流前庭電気刺激と運動療法の併用によりpusher現象の改善がみられている

●直流前庭電気刺激の安全性は報告されているが,実施にあたって十分な注意が必要である

Close-up 尿失禁に挑もう

尿失禁の病態と治療

著者: 井川靖彦

ページ範囲:P.682 - P.686

はじめに

 「尿失禁」は,症状としての尿失禁:不随意に尿が漏れるという愁訴,徴候としての尿失禁:診察時の不随意な尿漏出所見,および病態・診断としての尿失禁:腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁など,意味するものが多岐にわたり,用語として使用する場合には注意が必要である.本稿では,まず,下部尿路機能障害の病態分類と尿失禁の病態分類について解説し,尿失禁の病態に応じた代表的な治療法について,最新情報を交えて紹介する.

女性の尿失禁に対する理学療法士の取り組み

著者: 渡邊日香里 ,   井上倫恵 ,   成島雅博

ページ範囲:P.687 - P.690

女性における尿失禁の問題

 尿失禁とは不随意に尿が漏れるという愁訴であり,自身の意思に反して尿が出てきてしまうことである.尿失禁のタイプには,咳やくしゃみなどの腹圧上昇時に尿が漏れる腹圧性尿失禁,急に起こる我慢できないほどの強い尿意を伴う切迫性尿失禁,両者を呈する混合性尿失禁がある.40歳以上の日本人を対象とした疫学調査では,週1回以上の腹圧性尿失禁を有する女性は13%,切迫性尿失禁では10%と報告されている1).尿失禁は妊婦においても約5割,産後にも約3割が有することが報告されている2,3).また,幼少期に縄跳びやランニング,スポーツなどで尿漏れを呈する例もあり,尿失禁は未成年や若年層から高齢者まで幅広い世代の女性における問題と言え,多様なニーズがある.

 尿失禁自体は生命に影響を及ぼすことはないが,女性の生活の質(QOL)には悪影響をもたらす4).実際に筆者がかかわってきた女性では,尿失禁のために外出や旅行を控えてしまう例や,運動や趣味・余暇活動が楽しめない,または辞めてしまったという例もあった.尿失禁用パッドの使用が不適切な女性や生理用ナプキンを使用する女性では,パッドやパッド内の湿潤環境による皮膚炎を起こすだけでなく,適切に使用する女性でも臭いや荷物の嵩張りを気にすることもある.なかには親しい友人や家族にも相談できず,人付き合いに影響が出ることもある.また,近年では身体的フレイルとの関連も報告されており5),尿失禁への取り組みは介護予防にもかかわると考えられる.

男性の尿失禁に対する理学療法士の取り組み

著者: 松永明子

ページ範囲:P.691 - P.695

高齢化社会の尿失禁

 国立がん研究センターから発表されるがん罹患数統計において,2006年の前立腺癌罹患数1)は約4万2000人,2019年の予測2)では約7万8000人と急速に増加し,男性のがん罹患数第4位となっている.それに対し,2019年のがん死亡数予測では前立腺癌は第6位であり,前立腺癌はがんと診断されても適切な治療によりがんサバイバーとなる可能性が高く,私たち理学療法士が既往歴として目にする機会が多い疾患と言える.

 前立腺癌の罹患年齢は70〜75歳が最も多く,次いで65〜70歳,75〜80歳といわゆるアクティブシニアと呼ばれる世代の男性に目立つ.早期前立腺癌の多くは自覚症状がほとんどないため,根治的前立腺全摘除術に対する期待は大きく,術後の尿失禁,性機能不全は,患者がこれまでの人生で築いてきた生活の質(QOL)を大きく損なう.

連載 とびら

きっかけがもたらすもの

著者: 武田浩二

ページ範囲:P.621 - P.621

 2020年が明けてすぐに中学校の同級会が開かれた.地元を離れていた私にとっては,32年振りでたくさんの懐かしい顔に会うことができた.その日は時間を忘れて当時を懐かしみ,そして近況を報告し合った.見た目が変わった人,当時の雰囲気を残した人,会話のなかでも笑いは絶えず,時が経っても仲間っていいものだなあと感慨に浸った.

 その中学生時代,私は「脊椎分離症」を患った.当時,小学校から続けていたバスケットボール部に入部して半年後,脚のしびれが強くなり走るどころか歩くのもつらくなっていった.主治医の指示で,部活動はおろか大好きだった体育の授業も1年間見学となった.思春期でバスケットボールがすべてだった私にとっては世界が終わったような気持ちで,目の前が真っ暗になったのを覚えている.当時クラス担任だった先生は,事故による大腿切断で義足を装着して教壇に立っていた.水泳から山登りまで何でもチャレンジしてしまう先生で,気落ちする私にスポーツリハビリテーションを紹介してくれた.リハビリという言葉は知っていても「理学療法士」という言葉を知ったのはそのときが初めてだった.

脳画像から読み取る障害像と理学療法・18

—脳室周囲高信号域(PVH)・白質脳症・脳萎縮—重度の低酸素脳症症例には何ができるのか?

著者: 山口祐太郎

ページ範囲:P.617 - P.619

Question

この脳画像から障害像が読み取れますか?

はじめてのマネジメント学—できることから始めよう・Part 6

リーダーとしての振る舞い—求められるリーダーシップ

著者: 片岡靖子

ページ範囲:P.699 - P.702

はじめに

 「リーダー」と「リーダーシップ」は異なる.「リーダー」は,まとめ役である人であり,「リーダーシップ」は,集団であるフォロワーの心を1つにする働きかけであると言える.「リーダー」は1人では存在できない.「リーダー」に追随するフォロワーの存在と,リーダーとフォロワーとの良好な相互作用による「リーダーシップ」が発揮されることにより,「リーダー」が登場するのである.

 繰り返すが,「リーダー」はまとめ役である人であり,「リーダーシップ」は集団であるフォロワーの心を1つにする働きかけであると言える.働きかけるという意味では,リーダーが存在しなくても,一定の集団のなかでリーダーシップが見出されることもある.

 また,急激な医療情勢の変化に対応できる職場環境の変革,チーム医療,地域包括ケアの推進,突然発生する災害や感染症拡大時への対応,患者および家族の意思決定支援,治療方針の決定など,さまざまな場面でリーダーシップが求められている背景がある.

 本稿で与えられたテーマは,「リーダーとしての振る舞い」である.そのため本稿では,リーダーシップ論を軸に,リーダーシップとは何か,リーダーシップとマネジメントの違い,さらに医療現場で必要とされるリーダーのスキルについての提示を試みる.また,リーダーシップは,組織の文化を形成するうえでも重要な役割を果たす点についても提示したい.

新しい臨床実習・第6回

実習生が行ってもよいこととは?

著者: 間瀬教史

ページ範囲:P.703 - P.708

はじめに

 本稿では,まず,臨床実習の法的な位置づけを述べる.そのうえで,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(以下,新・指定規則)で行われる臨床実習において学生が行ってよい行為について,ほかの医療職種の臨床実習を例に示しながら,日本理学療法士協会が公表した臨床実習において学生が実施可能な基本技術の水準1)を参考に説明する.

理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・6

障がい者用オーダーシューズの開発

著者: 高橋和義

ページ範囲:P.698 - P.698

 当社は,創業から78年の歴史を持つ革靴メーカーです.軍靴づくりから始まった会社ですが,戦後は民需に転換し,主に大手の下請けを中心に経営を続けてきました.

 日本での革靴づくりは明治の富国強兵策によって始まっており,ヨーロッパの長い歴史に比べると浅いものです.そのため,国策として革靴の輸入を制限してきたことなどもあまり知られていない事実です.昔ながらの技術の伝承は,職人の「見て覚えろ」的な方法でやってきたのが現状です.

国試から読み解く・第6巻

血圧の変化からわかる薬物の作用

著者: 正保哲

ページ範囲:P.710 - P.711

ある薬物を投与する前後の運動開始前・中・後の血圧の変化を示す.

この薬物の作用はどれか.

臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント—これだけは押さえておこう!・3

大腿骨近位部骨折—骨接合術

著者: 対馬栄輝

ページ範囲:P.712 - P.720

障害を捉えることを中心に始める

 大腿骨近位部骨折は高齢者によくみられる骨折です.よほどの理由がない限りは手術療法が第一選択となりますので,大腿骨近位部骨折に対する手術療法後の患者を担当する機会は多いでしょう.

 実習先の指導者から「高齢な右大腿骨近位部骨折の患者さんです.γネイルの手術後です」と説明されると,おそらく「大腿骨近位部骨折」,「高齢」,「γネイル」というキーワードについて,いろいろと調べるはずです.

甃のうへ・第74回

新一年生

著者: 竹中菜々

ページ範囲:P.697 - P.697

 この春,わが家の長女がついに小学校に入学します.生後4か月からスタートした6年間の保育園生活を思い返すと,「本当によく頑張った!」と,娘はもちろんのこと,私自身と,それからともにがんばってきた夫のことも心底ほめてあげたいという気持ちになります.

 京都大学iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)に就職する前に,学生としての9年間を過ごした名古屋大学では,鳥橋茂子教授(当時)のご指導のもと,ES細胞を用いた損傷骨格筋に対する再生医療研究に没頭していました.とはいえ,当時の私には,卒業後の進路についての具体的な計画もほとんどなく,興味の赴くままにただひたすらに実験を重ねる毎日でした.そして,博士課程2年の時に参加した国際学会で,現在の上司であるCiRAの櫻井英俊准教授と出会ったことをきっかけに,学位取得後はCiRAで難治性骨格筋疾患に対する再生医療研究を進めることとなりました.

Relay Message・第6回

今大切だと思うこと

著者: 室伏祐介

ページ範囲:P.721 - P.721

 養成校を卒業して13年,今まで理学療法士として働いてきた経験のなかから,これからも働いていくうえで大切だと今考えていることを述べてみたいと思う.

 筆者は,2018年度まで高知大学医学部附属病院に所属していたが,2019年度から千葉県の海浜幕張に新設された東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科で教員をしている.今まで大学病院や一般病院など,さまざまな環境で仕事をしてきた.このような経験のなかで常に考えていることは,「自分は何をすることができるか,何をやらねばならないか」である.

短報

リハビリテーション早期介入による入院期間短縮への取り組み

著者: 前川彩 ,   水谷浩也 ,   岡実 ,   宮﨑智史 ,   長谷川修

ページ範囲:P.722 - P.725

要旨 医療の質向上とdiagnosis procedure combination(DPC)入院期間Ⅱ以内での退院数増加を目標に,入院患者全体に目を向けてリハビリテーション室が関与できるさまざまな取り組みを行った.まず,① 年齢70歳以上,② 要介護の介護認定,③ 安静度が病室内歩行以下の3項目でスクリーニングし,各病棟担当者が病室などで運動機能を評価後,リハビリテーションの必要性を退院調整看護師や担当看護師に伝え,必要と考えられる場合には担当医師にリハビリテーションオーダーを依頼する,入院時スクリーニングである.対象患者へのリハビリテーション職員の入院早期からの積極的介入に加えて,合同カンファレンス参加による多職種との情報共有,DPC入院期間Ⅱを意識した退院への意識づけなど,多部署の協力により病院機能改善への取り組みを行った.その結果,リハビリテーション依頼件数の増加とDPC入院期間Ⅱ内の退院率改善が得られた.スクリーニングにより早期介入したリハビリテーション患者の増加と,合同カンファレンス参加による他部署への適切な情報提供と連携強化が,DPC入院期間Ⅱ内の退院数増加に貢献したと考える.

学会印象記

—第8回日本理学療法教育学会学術大会・第2回日本理学療法管理部門研究会—個の力と組織の力—理学療法士の質の向上に必要なものとは

著者: 門馬博

ページ範囲:P.696 - P.696

●教育学会と管理部門の合同学会

 本学術大会は2つの組織による合同学会であり,両組織による合同学会は昨年に続いて2回目の開催である.学会を通じての話題は養成校における卒前教育はもちろん,近年は新人教育をはじめとした臨床現場での卒後教育に関する取り組みも活発化している.参加者の内訳も養成校教員と臨床の理学療法士がおおむね半々という印象であった.ともに理学療法士の質の向上という共通の目標をもった組織の学会であり,どのプログラムでも活発な意見交換が行われた.

書評

—上杉雅之(監修),西守 隆(編集)—「PT・OT入門 イラストでわかる評価学」

著者: 堀本ゆかり

ページ範囲:P.681 - P.681

 リハビリテーション専門職がまず身に着けるべき臨床能力は,評価,分析,推論,治療技術である.私が入職した1987(昭和62)年当時は,『リハビリテーション医学全書5 測定と評価』(医歯薬出版),現在の第10版よりはるかに薄い『徒手筋力検査法』(協同医書出版社)などが手許にあるくらいで,ようやく翻訳書が出回り始めた時期である.入職とともに十数名の患者さんを担当したが,自己学習をしようにも情報通信技術(ICT)も書物も十分でなく,先輩理学療法士の助言・指導を乞う毎日であった.対応不足や治療の進捗が滞ると容赦なく叱責された.一人前と認めてもらうために日々繰り返す鍛錬こそが,評価眼と介入スキルを得る唯一の方法であった.

 その当時はリハビリテーション科専門医が少なく,全国から見学に訪れる若い医師に対して,先輩理学療法士や作業療法士が,評価,治療,補装具などの研修会を行っていた.本来であれば指示を乞うべき医師に対して研修を行う先輩たちの姿はとても誇らしく,いつかは自分もそんな立場になりたいと士気を高めた.憧れそのものであった.

—田久浩志(著)—「医療者のためのExcel入門—超・基礎から医療データ分析まで 第2版」

著者: 濱岸利夫

ページ範囲:P.709 - P.709

 「医療者のためのExcel入門」とタイトルにあり,サブタイトルには「超・基礎から医療データ分析まで」とある.そのため,「Step1 Excelに慣れよう 基本操作編」から始まる.

 読者が少しでもパソコンやExcelの操作に慣れていれば,Step1には見向きもしないで他のステップへ進んでしまうかもしれない.

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目次

ページ範囲:P.622 - P.623

文献抄録

ページ範囲:P.726 - P.727

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.686 - P.686

バックナンバー・次号予告のお知らせ

ページ範囲:P.730 - P.731

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.732 - P.732

 新しい症候は名づけられて初めて臨床的存在になると考えられます.Davies(1985)が記載した「押す人症候群」は,それまで臨床家がうすうすは気づいていた症候をまとめ,臨床的特徴を記載したことで重要な視点をあらためて差し出してくれたのだと思います.当初は,片麻痺が重度であれば麻痺側に倒れていくのは当然なので,pusherの存在自体を疑問視する声もあったようです.しかし,特に理学療法士はこの症候の重要性にいち早く気づき,爾後多くの研究が行われるようになりました(エディトリアルを参照).Pusher現象を「高次脳機能障害」の範疇として位置づけることができるかは,なお議論の余地があるかもしれませんが,患者本人が矯正に対してかえって抵抗することや,その意思とは逆に倒れていくことを見ると,単に一次的な麻痺や感覚障害では説明がつかないのでこのカテゴリーに帰属させることができると思います.森悦朗先生が「道具の強迫的使用」について記載し(臨床神経1982;22: 329-335),本人の意思で制御できない行動が起こることを示したことと思い合わせれば,四肢体幹にもこのような「制御困難」が起こり得るのではないでしょうか.

 そこで本号の特集では,現在本邦において,この領域で精力的に活躍されている著者の方々に多角的に論述していただきました.すなわち,「出現率,経過そして病巣」(阿部論文)では画像評価,発生率,経過分析について,「生起メカニズム」(藤野論文)では垂直性,運動出力,なぜ抵抗するのか,半側空間無視との関連について,「評価方法」(沼尾論文)では各種の臨床評価の信頼性,妥当性について述べていただきました.さらに「臨床特性」(万治論文),「起居・移乗動作へのアプローチ」(中山論文),「認知神経リハビリテーション」(生野論文),「ニューロモジュレーション」(中村論文)と臨床現場からの考察がなされています.おそらくpusher現象だけでまとまった特集は初めてであり,読み応えのある特集になったと自負していますが,いかがでしたでしょうか.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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