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文献概要
Close-up 尿失禁に挑もう
女性の尿失禁に対する理学療法士の取り組み
著者: 渡邊日香里1 井上倫恵2 成島雅博1
所属機関: 1名鉄病院女性泌尿器科・ウロギネセンター 2名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻
ページ範囲:P.687 - P.690
文献購入ページに移動尿失禁とは不随意に尿が漏れるという愁訴であり,自身の意思に反して尿が出てきてしまうことである.尿失禁のタイプには,咳やくしゃみなどの腹圧上昇時に尿が漏れる腹圧性尿失禁,急に起こる我慢できないほどの強い尿意を伴う切迫性尿失禁,両者を呈する混合性尿失禁がある.40歳以上の日本人を対象とした疫学調査では,週1回以上の腹圧性尿失禁を有する女性は13%,切迫性尿失禁では10%と報告されている1).尿失禁は妊婦においても約5割,産後にも約3割が有することが報告されている2,3).また,幼少期に縄跳びやランニング,スポーツなどで尿漏れを呈する例もあり,尿失禁は未成年や若年層から高齢者まで幅広い世代の女性における問題と言え,多様なニーズがある.
尿失禁自体は生命に影響を及ぼすことはないが,女性の生活の質(QOL)には悪影響をもたらす4).実際に筆者がかかわってきた女性では,尿失禁のために外出や旅行を控えてしまう例や,運動や趣味・余暇活動が楽しめない,または辞めてしまったという例もあった.尿失禁用パッドの使用が不適切な女性や生理用ナプキンを使用する女性では,パッドやパッド内の湿潤環境による皮膚炎を起こすだけでなく,適切に使用する女性でも臭いや荷物の嵩張りを気にすることもある.なかには親しい友人や家族にも相談できず,人付き合いに影響が出ることもある.また,近年では身体的フレイルとの関連も報告されており5),尿失禁への取り組みは介護予防にもかかわると考えられる.
参考文献
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