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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル54巻7号

2020年07月発行

文献概要

特集 脊椎・脊髄疾患の多彩な症状と理学療法

—エディトリアル—脊椎・脊髄疾患の多彩な症状と理学療法・理学療法士

著者: 永冨史子1

所属機関: 1川崎医科大学総合医療センター

ページ範囲:P.742 - P.745

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はじめに

 本邦理学療法草創期の代表的脊髄疾患は,脊髄損傷であった.車椅子生活に向けて医療・看護・理学療法・作業療法・自助具・装具・車椅子・福祉用具・セルフケアと環境整備・障害者スポーツまで,さまざまな分野と技術をつないだ取り組みが当時から行われ,チームアプローチ・学際的リハビリテーションの先駆的領域であった1).しかし近年,病院機能分化の結果,当時のような脊髄損傷者のリハビリテーションを急性期から生活期まで一貫して経験できる機会や,参画できる臨床現場は減っている.

 そのようななか,車椅子ユーザーとしての脊髄損傷者に加え,脊髄症や脊柱管狭窄症などの慢性疾患患者が増加し,加齢変化や変性などを背景にもつ脊椎・脊髄疾患症例の割合が増加し,理学療法の対象となっている2,3).これらの多くは,日常生活活動に介助や代償手段を要しながらも,歩行や日常生活活動が可能な状態で社会に戻るケースも多い.

 脊椎・脊髄疾患は,神経症状や運動器症状が複雑に組み合わさった複雑な病態を呈し,機能的予後も異なる.したがって理学療法士は,疾患の病態・病期や環境に合わせ,提供する内容を工夫しなければならない.そのためには,多面的に評価し,機能の連鎖を考えながら日常生活活動・歩行練習を考慮し,入浴など日常生活活動を含む生活をデザインし,ニーズや不便との付き合い方とのアドバイスまで指導内容に含む工夫ことが求められる.高齢者や重複疾患など,典型的病態に一致しない症例や,一人暮らしの高齢者が急性期病院から自宅退院することも増え,入院期間短縮や病期別病院機能分化などがその背景にある4)

 もちろん医学的治療・理学療法プログラム・生活やニーズを考慮した指導や内容までアレンジすることは,リハビリテーションである以上,すべての疾患に共通し必要なことであることは言うまでもない.

参考文献

1)新宮彦助:日本における脊損発生の疫学調査.第3報(1990-1992).日パラプレジア医会誌1995;8:26-27
2)時岡孝光:脊髄損傷—急性期治療と疫学.総合リハ2019;47:415-420
3)時岡孝光,他:高知県における急性期外傷性脊髄損傷の実態調査.日脊髄障害医会誌2012;25:74-75
4)大鳥精司,他:高齢慢性疾患患者における腰部脊柱管狭窄症のスクリーニングと合併率の検討.日腰痛会誌2008;14:80-86
5)花北順哉,他:腰部脊柱管狭窄症257例の検討.脊髄外科1995;9:95-102
6)木村 敦:高齢者脊柱変形に対する保存的治療—頸部.脊椎脊髄ジャーナル2017;30:332-337
7)高橋昌美,他:立体姿勢より見た腰椎脊柱管狭窄症の病態.整外と災外1990;39:459-463
8)塩川晃章,他:頸椎椎弓形成術後の隣接椎間障害の検討.J Spine Res 2009;10:1605-1608
9)細井達矢,他:サルコペニア.脊椎脊髄ジャーナル2019;32:394-400
10)樋口貴広,他:姿勢と歩行—協調からひも解く.三輪書店,2015
11)武田 功,他(監訳):ペリー 歩行分析—正常歩行と異常方向.医歯薬出版,2007
12)宮腰尚久:高齢者の脊柱後彎変形と筋の相互作用.運動器リハ2019;30:2-8
13)小林吉之:ロコモティブシンドローム該当者の歩行特徴.運動器リハ2019;30:22-29
14)松本英之,他:パーキンソン病における姿勢異常.脊椎脊髄ジャーナル2019;32:419-423
15)橋爪 洋,他:加齢に伴う傍脊柱筋変性と脊柱アライメント変化の疫学.脊椎脊髄ジャーナル2019;32:407-412

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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