Close-up 理学療法士は再生医療に向き合えているか
中枢神経系疾患の再生医療と理学療法のアップデート
著者:
猪村剛史
,
大塚貴志
,
黒瀬智之
,
中川慧
,
弓削類
ページ範囲:P.933 - P.935
はじめに
中枢神経系疾患の多くは,運動麻痺や感覚障害,高次神経機能障害などを有し,それらの障害が要介護状態となる要因の第1位であることから,社会保障費の観点からも有効な治療法の開発が望まれている.人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)の発見によって報道やインターネットを通して再生医療が一般の人々にも認知され,多くの患者とその家族から再生医療への期待が高まっている1).新規治療として期待される再生医療は,条件及び期限付き承認制度が創設されるなど,臨床応用が加速している.
われわれは,再生医療,リハビリテーション医学,ロボット工学,脳科学に関する科学の進展と知識の普及を図ることを目的とし「日本再生医療とリハビリテーション学会(http://saiseireha.com/)」を起ち上げ,研究者と臨床家の橋渡しをしつつ,国内外の関連領域と連携しながらシステム化を進めている.その学会運営を通じて,各種幹細胞移植および再生医療のリハビリテーションに関する実施例から多くの臨床的知見やノウハウが蓄積されてきている.
またわれわれは,本年度から広島大学大学院医系科学研究科脳神経外科学教室と共同で,世界初の自家頭蓋骨由来間葉系幹細胞を用いた中等症以上の脳梗塞に対する再生医療臨床研究を実施する2,3)(厚生局認証番号NA8150006).本稿では,中枢神経疾患に対する再生医療を中心に,細胞移植によって期待される作用機序および細胞投与後の理学療法に期待される役割について概説する.