内科疾患患者における理学療法介入に必要なアセスメント・Part 3
慢性呼吸器疾患における理学療法介入に必要なアセスメント
著者:
角野直
,
北川知佳
ページ範囲:P.1086 - P.1090
慢性呼吸器疾患の概要
慢性呼吸器疾患は気道およびその他の肺組織の非感染性慢性疾患であり,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や気管支喘息,気管支拡張症,過敏性肺炎,肺癌,肺線維症,慢性胸膜疾患,じん肺,肺高血圧,肺塞栓症,サルコイドーシス,睡眠時無呼吸症候群など多岐にわたる.世界保健機関(World Health Organization:WHO)は慢性呼吸器疾患を世界的に増加する主要な慢性疾患とした1).
COPDは20年以上の喫煙を経て発症するとされている.Fukuchiら2)による2001年の大規模疫学調査では,邦人の40歳以上におけるCOPD有病率は8.6%(530万人)と推定され,その有病率は喫煙者・過去喫煙者が非喫煙者よりも高く,高齢であるほど高い傾向にあった.日本のCOPDによる死亡者数は,1995年は13,092人であったが,2018年には18,577人と年々増加している3).厚生労働省が2013年に改正した「健康日本21(第2次)」では,生活習慣病のがん・循環器疾患・糖尿病にCOPDを追加し,COPDの認知度を2022年までに80%まで引き上げ(2011年は認知度25%),発症予防と重症化予防の徹底を図ることを目標とした4).WHOは「緊急の喫煙対策を講じない場合,COPDが世界の死亡順位4位(2008年)から,2030年には3位へ上昇する」1)とし,禁煙の推進は国内外における社会の急務であり,慢性呼吸器疾患における重要な治療の一つである.