icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル55巻10号

2021年10月発行

文献概要

Close-up 転倒予防に活かすバランス評価

ベッドサイドで行う転倒予防に活かすバランス評価

著者: 中嶋俊祐1

所属機関: 1横浜市立脳卒中・神経脊椎センター

ページ範囲:P.1111 - P.1115

文献購入ページに移動
転倒予防に活かすバランス評価

 バランス能力の低下は,転倒を引き起こす主要な身体的要因の1つである.そもそも,ヒトを特徴づける二足立位姿勢は,重心位置が高い一方で支持基底面が小さいという構造的な不安定さを有する.それでも,ヒトは環境に適応しながら生活の場を拡大するために必要なバランス能力を獲得してきた.だからこそ,脳卒中などの疾病によってこのバランス能力がいったん損なわれると,転倒リスクはとたんに高まる.この場合,手すりにつかまるなどの手段によって転倒を回避しようとすることが多いが,本稿のテーマであるベッドサイドでは,必ずしも十分な支持物が存在せず転倒リスクの低減は難しい.このような環境であっても転倒を予防しながら自立度を高め,生活範囲の拡大をめざすためには,二足立位姿勢における十分なバランス能力が必要であり,その評価・治療に対して理学療法士が果たすべき役割は大きい.

 転倒予防におけるバランス能力の評価には,Berg Balance ScaleやTimed Up and Go Testなどの評価バッテリーが用いられ,転倒リスクとの関係性が検討されている1,2).一方で,急性期のベッドサイドでは,全身状態の変化や安静度による制限,評価を行うこと自体による転倒リスクから,実際にはこれらの評価バッテリーを十分に活用できることは少なく,むしろ,治療を行うなかで患者の運動課題に対する反応を観察・触診することでバランス能力の評価を行うことが多い.

参考文献

1)Berg KO, et al:Measuring balance in the elderly:validation of an instrument. Can J Public Health 1992;83:S7-S11
2)Shumway-Cook A, et al:Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults using the Timed Up & Go Test. Phys Ther 2000;80:896-903
3)Perry J, et al(著),武田 功(総括監訳):ペリー 歩行分析,原著第2版—正常歩行と異常歩行.pp9-10,医歯薬出版,2012
4)久保祐子,他:姿勢・動作分析における身体重心点の視覚的評価の検討.理学療法学2006;33:112-117

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?