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Close-up 転倒予防に活かすバランス評価
施設内での転倒予防に活かすバランス評価
著者: 松下信郎1 田中直次郎1 福江亮1 松四健太1 岡本隆嗣1
所属機関: 1西広島リハビリテーション病院
ページ範囲:P.1116 - P.1120
文献購入ページに移動転倒のリスク因子は内的要因と外的要因に大別され,内的要因には筋力低下などの身体機能や注意機能といった認知機能が含まれ,外的要因には障害物や滑りやすい床面などの環境要因が含まれる.バランスは内的要因の1つであり,転倒危険因子のなかで相対危険度は高い1).
バランスの定義について望月2)は「バランス」と「バランス能力」を分けて検討しており,観察される姿勢や動作の安定性を「バランス」,バランスを担っている身体機能の総称を「バランス能力」として区別して用いている.国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health:ICF)では,バランス能力は心身機能・身体構造の要素で,バランスは活動状況を修飾する要因に相当すると考えることができる3).臨床上大切なことは,バランス能力にはいくつかの機能が関与し,さらに同じバランス能力であっても,課題の難易度や動作を実行する環境によってバランスは変化する点である.そのため1つの評価や1つの場面のみでバランス障害を捉えることは難しく,複数の評価指標や複数の場面を組み合わせながら評価を行うことが必要となる.
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)の役割は急性疾患を安定させ,慢性疾患を制御しつつ,機能障害の改善,ADLの向上,家庭復帰を目的とした集中的なリハビリテーションを実施することである4).回復期病棟では,地域,急性期病棟,施設などと比較して,最も高率に転倒が発生しており5),その背景には患者の身体能力や活動性の変化が関係してくる.転倒リスクを減らしながら活動性を高めていくためには,適切に動作の安定性(バランス)を評価し,適切な時期に自立の判断を行うことが重要となる.
本稿では,転倒予防の視点から当院回復期病棟でのバランス評価や動作の自立に向けた取り組みについて紹介する.
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