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書評
—森田秋子,後藤伸介(編集)—「理学療法士が知っておきたい認知能力のアセスメントとアプローチ—高次脳機能障害を行動から分析する」 フリーアクセス
著者: 森岡周1
所属機関: 1畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
ページ範囲:P.1227 - P.1227
本書は言語聴覚士である森田秋子先生と理学療法士の後藤伸介先生がタッグを組まれ,「理学療法士が知っておきたい」と修飾されたうえで書かれている.第1章は「理学療法士はなぜ認知能力を理解する必要があるか」と挑戦的な章となっているが,冒頭の問題を払拭するように記述されている.第2章は「理学療法士が知っておくべき認知能力の理解」と題して,認知関連行動アセスメント(CBA)に至るまでの神経心理・認知モデルについて極めて平易に書かれている.認知モデルの解説は難解になることが多く,それが要因となって,学習の機会を奪ってしまうことがある.批判を承知のうえ,あえて簡略化することで,まずは認知に関連する事柄を「理学療法士に知ってもらいたい」という著者の強い思いを感じとることができる.第3章には事例,第4章には地域領域を配置しているが,第4章が本書の特色ではないかと思う.地域になれば,関節運動学を基盤としたアセスメントのみでは通用しないことを,地域にかかわる理学療法士は痛感しているはずである.地域で働く理学療法士にとって,本書はまさに「かゆいところに手が届く」情報だと確信している.今後は改訂を重ねていただき,情報の一貫性にこだわっていただきたいと思っている.
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