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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル55巻8号

2021年08月発行

文献概要

Close-up 理学療法に活かすモニター技術

慣性センサを用いるウェアラブル歩行分析システムと臨床応用

著者: 三宅美博1 内富寛隆1

所属機関: 1東京工業大学情報理工学院

ページ範囲:P.887 - P.893

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はじめに

 歩行運動に関連する時空間的軌道を推定できる臨床的歩行分析手法に近年関心が集まっている.診断や経過観察は,患者の歩行運動に伴う実際の体動を含めた,身体の流れや形に注目して行われることが多く,Evidence Based Physical Therapy(EBPT)の観点からも,歩行の連続的な時空間的軌道にかかわる客観的な情報が求められているのである.

 これを実現するために,モーションキャプチャを用いる高精度な計測方法からキネクトなどを用いる方法まで,画像情報を活用したさまざまな歩行分析システムがこれまで提案されてきた.しかし,これらの方法は専用の計測スペースを必要とする大掛かりなものであり,日常のリハビリテーション治療への導入や所定の時間単位内での利用が難しいなど,多くの課題が残されていた.このような背景のなかで,身体に装着した小型の慣性センサの情報を用いることで,屋内外を問わず高精度かつ簡便な計測を可能とする,ウェアラブルな歩行分析システムへの期待が高まりつつある.

 本稿では,われわれがWALK-MATE LAB社と開発を進めている,慣性センサを用いる歩行分析システムWM GAIT CHECKER(ウォークメイトゲイトチェッカ)を取り上げ,そのコア技術となる歩行軌道の高精度推定の方法,そして臨床応用の事例について解説する.

参考文献

1)WALK-MATE LAB株式会社:https://walkmate.jp/(2021年6月17日閲覧)
2)Hori K, et al:Inertial measurement unit-based estimation of foot trajectory for clinical gait analysis. Front Physiol 2020;10:1530. doi:10.3389/fphys.2019.01530
3)Mao Y, et al:Estimation of stride-by-stride spatial gait parameters using inertial measurement unit attached to the shank with inverted pendulum model. Sci Rep 2021;11:1391. doi:org/10.1038/s41598-021-81009-w
4)Hori K, et al:Diagnosis support system of Parkinson's disease based on gait trajectory. Proc. of the 16th International Conference on Biomedical Engineering(ICBME2016), p146, Singapore, 2016
5)Hori K, et al:Early detection of Parkinson's disease based on gait trajectory analysis using wearable sensors. J Neurol Sci 2017;381:348. doi:https://doi.org/10.1016/j.jns.2017.08.989
6)Ono Y, et al:A gait evaluation of patients with Parkinson's disease with inertial measurement units. Proc. of the 14th International Conference on Alzheimer's and Parkinson's Diseases(AD/PD2019), p247, Lisbon, 2019
7)喜古 勇,他:慣性センサーを用いたAlzheimer型認知症患者の歩行特徴の評価と他疾患との比較.ヒューマンインタフェースシンポジウム2018論文集,pp678-682,2018
8)Ono Y, et al:Gait evaluation of normal pressure hydrocephalus using inertial sensor. J Neurol Sci 2017;381:722. https://doi.org/10.1016/j.jns.2017.08.2035
9)太田玲央,他:加速度計を用いた歩行動態分析システムの開発—片麻痺およびパーキンソン病への適用.臨床神経学2013;53:1421
10)西 辰徳,他:腰軌道の運動学的分析に基づく片麻痺歩行評価システム.計測自動制御学会論文集2011;47:8-16
11)小林哲平,三宅美博,他:加速度センサを用いた運動学的歩行分析システム—股関節疾患の術後リハビリにおけるWalk-Mate有効性評価への適用.計測自動制御学会論文集2006;42:567-576

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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