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雑誌目次

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理学療法ジャーナル55巻9号

2021年09月発行

雑誌目次

特集 チーム医療におけるコラボレーション

EOI(essences of the issue) フリーアクセス

ページ範囲:P.942 - P.943

 医療現場では,さまざまな専門職種がチームを組んで,経験や知識,技術を集約し,最も適した最新の治療にあたるチーム医療が実践されている.チーム医療とは,同じ目標に向かって異なる専門職がその専門性を発揮し,相互統制的な関係のなかで行動するコラボレーション(collaboration:連携,協働)である.本特集では医療現場のさまざまなチームのなかで,理学療法士がよりよい協力関係でコラボレーションする実践的な取り組みについて述べていただいた.

理学療法士が知っておくべきチーム医療の基本と組織運営

著者: 神戸晃男

ページ範囲:P.944 - P.949

Point

●医療現場においてはさまざまなチームが存在する

●患者満足度,QOLの向上には,組織変革と新たなチームの結成が必要である

●中堅および管理者のマネジメント・強いリーダーシップが喫緊の課題である

転倒予防チームのなかで

著者: 井上靖悟 ,   後藤悠人 ,   伊藤真梨 ,   近藤国嗣

ページ範囲:P.950 - P.955

Point

●転倒は入院初期や能力変化に伴い発生することが多い

●転倒予防対策は,安全性と活動性の両視点から評価することが大切である

●組織全体で共通認識をもって対策を行うためには教育が重要である

高度急性期医療チームのなかで

著者: 對東俊介

ページ範囲:P.956 - P.961

Point

●理学療法士は高度急性期医療において,重症患者を“生活者”として捉え,ADLの維持,改善,再獲得に多職種でかかわり,QOL改善をめざすことを目的としている

●ICUに入室する重症患者にとって,痛み,不穏/鎮静,せん妄,不動,睡眠障害が問題となる

●高度急性期医療チームにおける理学療法士の役割は,理学療法が必要な患者の主治医に対して適切な理学療法の導入を提案することである

栄養サポートチームのなかで

著者: 脇野昌司 ,   梶原克美

ページ範囲:P.962 - P.968

Point

●多職種共通の栄養評価に基づいた適切な運動負荷量の設定と情報共有を協働で行う

●病態・栄養管理・身体機能を踏まえた予後予測と低栄養症例への早期離床が必要である

●栄養状態を把握できるリンクセラピストの配置とシームレスな栄養サポートチームおよびリハビリテーション栄養の実践が重要である

摂食・嚥下チームのなかで

著者: 戸渡敏之 ,   井上裕梨 ,   吉岡了

ページ範囲:P.969 - P.975

Point

●摂食・嚥下チームに所属する理学療法士には,嚥下機能および嚥下評価に関連する知識が必要となる

●専門職のなかで言語聴覚士との連携および情報共有は重要と言える.また栄養サポートチーム(NST)との協働も視野に入れて介入する

●摂食・嚥下チームカンファレンスでは,嚥下チーム活動に有用となる情報について検討し,共有することが重要である

呼吸ケアチームのなかで

著者: 鵜澤吉宏

ページ範囲:P.976 - P.982

Point

●呼吸ケアチームのリソースを管理しチームメンバーがアクセスできることが重要である

●院内でコミュニケーションツールの共通認識があり安心と安全の組織文化を形成する

●コンサルテーションでの役割を明確にして対応する

緩和ケアチームのなかで

著者: 村岡法彦

ページ範囲:P.983 - P.988

Point

●緩和ケアチームにおける理学療法士の役割として,可能な限りのADLやQOLの維持向上を目的として専門的知識や技能を患者・家族に提供する必要がある

●患者への直接介入だけではなく,リハビリテーション担当者への教育や啓蒙,他職種との協働,緩和ケアチームへのコンサルテーションなど間接介入を行うことが求められる

●患者のQOLを支える理学療法士の専門性を考えると緩和ケアチームの中心的な役割として活動することが大切である

認知症ケアチームのなかで

著者: 安原千亜希

ページ範囲:P.989 - P.994

Point

●認知症はさまざまな要因が絡み合って社会生活に問題が生じるため,多角的視点でのアセスメント,多職種によるチームアプローチが有効である

●認知症ケアチームは「その人らしく,認知症があっても前向きに楽しく生活できる」ことをめざし,情報共有と多職種協働,自身のスキルアップが求められる

●理学療法士は認知症ケアチームにおいて,アセスメントと最大能力を引き出すこと,それらを多職種と協働し生活につなげる役割が求められる

Close-up 留学と留学生の受け入れ

留学を取り巻く現状と課題

著者: 鈴木秀彦

ページ範囲:P.996 - P.1001

留学生交流の現状

 わが国では,2020年をめどに,日本人学生の海外留学者数を6万人から12万人へ,大学等教育機関への外国人留学生の受け入れ数を14万人から30万人へと倍増させる計画が策定され,オールジャパンでさまざまな留学生施策が行われてきた.その結果,日本人学生の派遣数および外国人留学生の受け入れ数とも拡大傾向を示し,後者については2019年に前倒しで計画が達成された.

 現在,日本人学生の派遣および外国人留学生の受け入れ(以下,留学生交流)については,2020年初頭より生じた新型コロナウイルス感染症拡大(以下,コロナ禍)により深刻な影響を受けている.日本人学生の海外留学者数に関しては,直近の2019年度のデータでは10万7346人で2018年度からおよそ8千人が減少,外国人留学生の日本留学者数も,直近の2020年のデータでは27万9597人で2019年からおよそ3万人が減少した.

理学療法における留学と国際交流

著者: 丸山仁司

ページ範囲:P.1002 - P.1005

はじめに

 国際医療福祉大学が1995年に開学し,25年が経過した.国際医療福祉大学では,3つの基本理念の1つに,「国際性を目指した大学」がある.その理念は「国際的センスを備え,いかなる国の人々とも伸び伸びと協働できる真の国際人を育成すること」である.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科は大田原,成田,小田原,大川の4キャンパス,大学院では東京赤坂キャンパスを含めて遠隔を用いて教育を行っている.学部生の各キャンパスの入学,卒業状況(1995〜2020年),大学院の修了状況について表1,2に示す.学部の入学者数の1.1%が留学生,大学院修士課程は9.1%,博士課程は10.6%である.

私の留学体験—その思いと展望—来日12年—留学生から病院理学療法士までの道/The study abroad experience as an international student in Japan/秋田大学での留学生活とこれからの展望/オーストラリアで学んだ型がある理学療法

著者: 鄭伃廷 ,   ,   クルーカス輝恩 ,   野澤涼

ページ範囲:P.1006 - P.1011

来日12年—留学生から病院理学療法士までの道

 来日して12年になった.父が日本で研究活動をしていたため,小さい頃から日本を何度か訪ねたことがあり,ここで生活してみたいと思い,母国である台湾の大学を卒業してすぐ日本に渡航した.最初は語学留学のつもりだったが,超高齢社会である日本のリハビリテーションのあり方がそうなりつつある台湾にとって参考になることが多いと思った.脳卒中や肺疾患に罹った家族もいて,元々理学療法に関心をもっていたため,日本語能力は五十音程度だったが日本の大学へ進学することを決めた.

 日本語学校で1年半ほど語学勉強と留学試験の準備をしながら,文章の練習は毎日3時間行い,口語の練習は日常から外国人友達同士でも日本語で話す工夫をしていた.その後,名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻に進学した.しかし,さらなる挑戦が待っていた.母語である台湾華語には漢字しかないため,漢字の読み書きは私からみて簡単だが,訓読み・音読みの使い分けや片仮名は難しい.それで専門用語を覚えるのは困難だった.さらに,教科書のような標準語と異なり,「生の日本語」の聞き取りに苦労した.幸い,大学で優しい先生方と同級生に出会えた.先生方は授業の録音をさせてくれたり,質問に対してわかりやすく説明してくれたりした.同級生は今時の言葉を教えてくれたり,毎週のように一緒に勉強して授業メモを合わせたりしてくれた.最も忘れられないのは,実技試験だ.専門用語を思い出しながら模擬患者にわかりやすく説明して実技を行うというマルチタスクが私にとって非常に難しかった.よく言葉でつまずいた私に,同級生が台本までつくり,何回も練習に付き合ってくれた.大変な実技試験もよい思い出になった.

連載 とびら

なぜ,学ぶのか?

著者: 一柳純子

ページ範囲:P.939 - P.939

 O God, give us

 Serenity to accept what cannot be changed,

 Courage to change what should be changed,

 and Wisdom to distinguish the one from the other

再考します 臨床の素朴な疑問・第9回

野球肘は運動療法で発生を減少させることが可能か?

著者: 坂田淳

ページ範囲:P.1012 - P.1013

野球肘検診により野球肘は減らせるのか?

 野球競技では,肩・肘の傷害が多く発生する1).Athlete exposure(AE)という,1人の選手が1回の練習または試合を行うことを単位とした数値で年代別の投球障害発生率について算出したところ,学童期野球選手の肩傷害発生率が0.6/1,000 AEs,肘傷害発生率は1.5/1,000 AEsであった2).中学生から高校生までの野球選手を対象とした報告では,肩傷害発生率が1.5/1,000 AEs,肘傷害発生率は1.0/1,000 AEsとその発生率は逆転する3)

 骨端線閉鎖前に生じる代表的な野球肘として,肘外側に生じる上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下,肘外側障害)と肘内側に生じる上腕骨内側上顆下端障害(以下,肘内側障害)がある.肘外側障害の有病率は地域や年代,競技レベルによって2.2〜5%と報告により異なるものの4〜7),発生率は2%程度8)と低い.その発生を予防するのは現実的でなく,全国に広まった野球肘検診のほとんどは肘外側障害の早期発見・早期治療,つまり二次予防に主眼が置かれている.

診療参加型臨床実習・第9回

診療参加型臨床実習の取り組みの現状と展望—外来・クリニック

著者: 片岡亮人

ページ範囲:P.1014 - P.1016

KAG名古屋整形外科・人工関節クリニックでの診療参加型臨床実習

 KAG名古屋整形外科・人工関節クリニック(以下,当院)は人工関節手術を行う19床の有床診療所である.理学療法の対象となる患者は,人工股関節・膝関節術直後の入院患者もおられるが,多くは術前後の外来患者および一般整形外科領域の外来患者である.

 本稿では当院での診療参加型臨床実習の取り組みに関し,特に整形外科外来・クリニックの立場を中心に論じる.

国試から読み解く・第21巻

フローボリューム曲線から薬剤の効能を推測する

著者: 正保哲

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 42歳の男性.気管支喘息.ある薬物の吸入療法前後のフローボリューム曲線の変化を図に示す.

 この薬物によって生じた呼吸器系の変化として正しいのはどれか.

臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習—「ただ見ているだけ」にならないように!・6

脊椎除圧術・固定術

著者: 和田崇

ページ範囲:P.1020 - P.1023

はじめに

 腰椎に対する脊椎除圧術や脊椎固定術は主に腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症に適応される手術です.一般的に腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症は,保存治療が優先されますが,保存治療による効果が乏しく日常生活などに支障を来す場合や膀胱直腸障害などの重度な神経症状がある場合に手術療法が選択されます.

 運動器疾患に対する手術を受けるすべての症例に共通することですが,手術に至るまでの経過は症例1人ひとりで異なります.また,多くの症例の主訴である痛みは目に見えません.そのため,リハビリテーションや臨床実習を進めるうえで重要になるのが症例との対話と考えます.各々の症例の訴えや客観的な評価をヒントに個別性のある病態解釈が重要です.そして,ガイドラインや個々の研究論文を参考にリハビリテーションを進めていく必要があります.

私のターニングポイント・第21回

さまざまな方との出会い

著者: 森野佐芳梨

ページ範囲:P.1017 - P.1017

 私は現在,理学療法学専攻の助教として勤務し,主に妊産婦女性の腰痛などをテーマにWemen's health分野における理学療法の可能性を広げるために研究活動を進めています.また,理学療法に必要不可欠な評価についての正確性や妥当性を深めるため,工学的な知見も取り入れています.今の職に至るまでには学生生活があったのですが,私は,学部,修士,博士課程ともに,異なる大学に在学しました.あまり一般的ではないこのような進学を選択できたのは,各大学でお世話になった恩師,そして先輩・同期・後輩の理解や支えがあったからです.私のターニングポイントは,そういった人たちとの出会いであると思います.

 そもそも,学部生の頃は妊婦への理学療法のイメージはほとんどなかったのですが,卒業研究指導をいただいた恩師から,妊婦の歩行分析の提案をいただき,それが今の研究のスタートとなりました.その研究室では,恩師や先輩方より,リサーチクエスチョンの立て方から研究計画・実践など,研究遂行の基本をみっちりと教えていただきました.他大学への進学も悩んでいると伝えたうえでも受け入れてくださった恩師には,本当に感謝しています.

報告

高齢腰椎疾患患者における6分間歩行テストによる手術前後歩行能力の経時的変化

著者: 米花沙代 ,   岩﨑素之 ,   長畑啓太 ,   遠藤智康 ,   佐藤耕司 ,   新谷好正 ,   馬渕正二

ページ範囲:P.1025 - P.1029

要旨 【目的】高齢腰椎疾患患者の術前から術後1年までの歩行能力の変化を捉え,歩行能力の経時的変化について検討する.【方法】対象は2014年11月〜2015年8月に,小樽市立病院において腰椎変性疾患で手術を施行した21例(平均年齢75.3±9.5歳,男:女=12:9).歩行能力の評価は6-minute walk test(6MWT)を使用し,評価時期は術前,術後2週,3か月,6か月,12か月とし,歩行中断距離(6-minute intermittent distance:6MID),総歩行距離(6-minute walk distance:6MWD),歩行速度について統計学的に検討した.【結果】6MID,6MWDともに術後3か月まではその直前の計測値と比較しても有意に距離が上昇していた.歩行速度は術後2週と術前の比較では上昇の傾向を認め,3か月と2週の間で有意な上昇を認めた.【結語】高齢であっても,術後3か月までは歩行距離の上昇が期待されるため,術前からの廃用性筋力低下,筋持久力の低下を呈している患者には,運動療法を継続していくことで歩行能力の向上が期待できる.

思春期腰椎分離症患者の理学療法介入効果—疼痛・柔軟性ならびに骨癒合に着目して

著者: 明日徹 ,   畠山昌久

ページ範囲:P.1030 - P.1034

要旨 本研究の目的は,思春期腰椎分離症(lumbar spondylolysis:LS)患者に対する理学療法が,患者の疼痛軽減,柔軟性向上ならびに骨癒合に寄与できるかについて後方視的に調べることである.2018年4月〜2020年3月に,畠山整形外科スポーツクリニックにてLSと診断された未成年の患者117名を対象とし,除外基準に該当しなかった27名(男性21名,女性6名,平均年齢14.6±1.8歳)を解析対象とした.初回理学療法・最終理学療法実施時の疼痛ならびに柔軟性を比較検討した.また画像評価にて骨癒合状態も確認した.疼痛,柔軟性すべての評価項目で有意な改善を示した(p<0.001).また,77.8%が骨癒合を呈した.理学療法介入にて骨盤周囲筋の柔軟性が改善し,腰部への負担が減少したことにより,疼痛軽減ならびに骨癒合につながったと思われた.柔軟性改善ならびに体幹筋強化を中心とした理学療法は,思春期LS患者の疼痛軽減,柔軟性向上ならびに骨癒合に寄与し,効果的であることが示された.今後さらなる検討を行い,思春期LSに対する理学療法の効果検証を行っていきたい.

大腿骨近位部骨折患者における退院後の歩行自立度低下に影響する因子の検討

著者: 桑原大輔 ,   梅原拓也 ,   犬飼彩歌 ,   金屋敷遼

ページ範囲:P.1035 - P.1041

要旨 【目的】本研究の目的は,大腿骨近位部骨折患者の退院時心身機能と,歩行自立度から術後1年および2年の歩行自立度低下に影響する因子を明らかにすることとした.【方法】対象は,済生会呉病院にて大腿骨近位部骨折と診断され術後1年または2年が経過した72名とした.測定項目は,基本医学的情報と退院時心身機能[疼痛Visual Analogue Scale,30-s Chair-Stand test(CS-30),改訂長谷川式簡易知能評価スケール]とした.統計解析は,Cox比例ハザードモデルにより歩行自立度低下に影響する因子を抽出し,Kaplan-Meier法により歩行自立度低下の発生率を調査した.【結果】Cox比例ハザードモデルの結果(ハザード比,95%信頼区間),術後1年までの歩行自立度低下に影響する因子として退院時CS-30(5.00,1.06-23.53)が抽出されたが,術後2年までは影響因子が抽出されなかった.【結論】退院時CS-30は,術後1年までの歩行自立度低下を予測できる可能性がある.ただ,術後1年以降の歩行自立度低下は退院時の情報から予測できなかった.

書評

—藤原俊之(監),高橋哲也(編)—「《理学療法NAVI》リスクに備えて臨床に活かす 理学療法にすぐに役立つ薬の知識」 フリーアクセス

著者: 加藤倫卓

ページ範囲:P.995 - P.995

 本書は整形外科的疾患,脳神経疾患,内部疾患,生活習慣病などのうち,理学療法士が臨床でよく担当する疾患や病態を厳選し,実際の臨床現場でのリハビリテーション医療に生かすための薬剤の知識の理解に焦点を絞って解説している.

 病態ごとに具体的な症例を提示し,その一般的な特徴から,理学療法を施行するにあたっての医師からのリクエスト,そして,理学療法を行うにあたっての薬剤の注意点と効果的な進め方を,医師と理学療法士のそれぞれの視点から説明しており,すべての理学療法士にとって参考になる.また,全項目に共通して,多職種間で行われる臨床上でのやりとりがイラストを交えて記載されており大変読みやすく,その内容も医師から理学療法士へのサイン,問いかけ,助言,心の声など多彩に表現されており臨場感が感じられる.また,処方された薬剤がいつまで使われるか,病期による病態や症状の変化による薬剤の調整,理学療法中の事故を防ぐための中止基準やリスクマネジメント,そして理学療法上のポイントがわかりやすく記載されている.定評のある薬剤の専門書は詳細な解説が魅力ではあるが,理学療法士にとっては難解なものもある.しかし,本書はあくまで理学療法士の視点に立った内容となっており,このような形態の本は今までなかったと思われ,楽しみながら学習することができるのも魅力である.

—山村 恵,竹林庸雄(監),三木貴弘(編),渡邊勇太(編集協力)—「こんなときどうする!? 整形外科術後リハビリテーションのすすめかた」 フリーアクセス

著者: 荒木秀明

ページ範囲:P.1024 - P.1024

 「手術と術後リハビリテーションは一体であるべき」との北の大地,北海道の強い意志を感じとれる一冊です.

 本書の構成は総論と各論に分かれています.総論では手術後リハビリテーションで必要な各種評価法,画像の読影法,麻酔の詳細,臨床検査の診かた,そして生物心理社会的因子としての心因性にまで及ぶ内容が網羅されています.各論では,各専門領域の第一線で活躍中のセラピストの先生方が,部位ごとの疾患の特徴と手術の内容,そして術後リハビリテーションを行う際に必要な基礎知識から実践までをわかりやすく解説しています.部位に特化せず,全身にわたって,整形外科で馴染み深い疾患を取り扱った書籍は今まで,あまり目にしたことはありません.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.940 - P.941

文献抄録 フリーアクセス

ページ範囲:P.1042 - P.1043

編集後記 フリーアクセス

著者: 金谷さとみ

ページ範囲:P.1048 - P.1048

 COVID-19感染拡大の非常事態,その間の医療現場は苦悩の連続でした.入院患者を抱えながら感染者を受け入れる枠をつくり,院内感染を防ぎながら医療や介護を提供する難しさは今も続いています.しかし,この経験は新しいかたちの院内連携を生み,今までにはない全職員のチームワークをより強固にした出来事でもありました.

 2019年のラグビーワールドカップで日本代表が活躍した際に,国を超えたメンバーがチーム一丸となって戦うために掲げたスローガンが「ワンチーム」でした.1人の患者のためにさまざまな職種が究極の連携を図る医療現場も同じではないでしょうか.実は,かなり昔から連携を重んじカンファレンスなどを積極的に実施してきたのはリハビリテーション部門だったのです.本特集は,チーム医療のなかで理学療法士が他職種といかにコラボレーションするかという企画で,可能な限り具体的に論じていただきました.神戸先生からは,長くリハビリテーション部門を管理した経験をもとにチーム医療の基本を解説いただき,組織を幅広く捉えた重みのある内容です.次に転倒予防チームとした訳は,転倒予防に関しては理学療法士がスペシャルな立場にあると考えたためで,井上先生がスマートに論じておられます.對東先生は高度急性期医療チームについてわかりやすく述べています.また,非常に近い2つの専門チームとして,脇野先生は栄養サポートチームを,戸渡先生は摂食・嚥下チームを論じており,比較すると興味深いです.鵜澤先生の呼吸ケアサポートチーム,村岡先生の緩和ケアチーム,安原先生の認知症ケアチーム,いずれの論文もコラボレーションの様子がよく見える具体的な内容です.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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