icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル56巻10号

2022年10月発行

雑誌目次

特集 子どもの成長・発達を支える理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.1132 - P.1133

 子どもは成長に応じて,医療機関,通所施設,公的学校,在宅など,主として理学療法を行う場所が変化する.また,広く発達障害と捉えた場合には,この十数年で概念的な捉え方も変化してきている.本特集では,成長・発達を支えるという視点から,乳児,幼児期から学童期を主なターゲットとして,子どもの成長・発達に関する知識の整理とアップデートを行うとともに,さまざまな年齢や介入場面での理学療法を示していただき,子どもの成長・発達を支える理学療法士の役割について述べていただいた.

子どもの成長・発達に寄与する理学療法に必要なこと

著者: 新田收

ページ範囲:P.1134 - P.1139

Point

●発達領域理学療法に対するニーズの変化を把握する

●発達性協調運動障害とその隣接疾患についてその特徴や相違点を理解し,理学療法で支援するポイントを理解する

●発達障害に対する理学療法としては,姿勢と運動の安定に着目して行う

子どもの運動・動作の発達とその特徴

著者: 吉田伊津美

ページ範囲:P.1140 - P.1145

Point

●乳幼児期から児童期にかけての運動発達は青年期とは異なる特徴がある

●この時期は,基礎的運動パターンの獲得と洗練に特徴づけられる

●近年の子どもの運動発達は1980年代半ばをピークに低下し,低い水準のまま推移している

子どものこころと言葉の発達とその特徴

著者: 小関俊祐 ,   杉山智風

ページ範囲:P.1146 - P.1150

Point

●子どものこころの発達は4つの段階から成る.発達に遅れが認められる知的障害児では,児の発達がどの段階にあるか十分にアセスメントする.一方,発達障害児では遅延が認められない場合があり,認知機能のアンバランスさをアセスメントすることが求められる

●子どもの言葉の発達においては音声刺激の入力に加えて,子の発した声へのコミュニケーションが重要である

●理学療法士が子どもの発達支援を行う際は,認知機能と言葉の両方の発達に注目する

障害児の成長・発達に関する医療・福祉制度

著者: 又村あおい

ページ範囲:P.1151 - P.1157

Point

●障害児支援の基本的視点は「障害」の前に「子ども」である

●障害に着目した福祉制度は福祉サービスと福祉用具が中心となる

●障害に着目した医療制度は医療費助成制度が中心となる

低出生体重児のディベロップメンタルケアと理学療法

著者: 藤本智久

ページ範囲:P.1158 - P.1163

Point

●近年,新生児集中治療室,新生児回復室における低出生体重児に対し児の発達と家族のかかわりを支援するディベロップメンタルケア(developmental care:DC)の考え方が導入されている

●DCの取り組みを包括的に実践するものがnewborn individualized developmental care and assessment program(NIDCAP)であり,その考え方の根拠となるものがsynactive theoryである

●低出生体重児に対する理学療法では,行動を理解し,児の発達が促されるようなsynactive theoryに基づいた介入が必要である

子どもの呼吸ケアと成長・発達支援

著者: 横山美佐子

ページ範囲:P.1164 - P.1171

Point

●理学療法士が知っておくべき子どもの呼吸器の発達と解剖生理学的特徴を理解する

●呼吸に関する医療的ケアとリスク管理を知る

●呼吸ケアをしながらの成長・発達に必要なポイントは,呼吸器の発達や生活を考えることである

医療的ケアが必要な子どもの訪問理学療法

著者: 齋藤大地

ページ範囲:P.1172 - P.1176

Point

●在宅で過ごす医療的ケアの必要な子ども(医療的ケア児)を取り巻く環境と,リハビリテーションの状況を知る

●理学療法士は在宅の医療機器から子どもの状態を把握することが求められる

●医療的ケア児の成長・発達を支える,在宅での理学療法においては成長の段階に応じた目標を把握し,生活に合わせた支援が重要である

児童発達支援・放課後等デイサービスにおける子どもの発達支援

著者: 久保田麻紀

ページ範囲:P.1177 - P.1183

Point

●ライフステージによって児童発達支援・放課後等デイサービスに対する,子どもや保護者のニードは変化していく

●理学療法士は,子どもの身体状況や生活環境を把握し,活動内容の検討・実施,福祉制度などの社会資源の情報提供をその状況に合わせて行っていく

●理学療法士がかかわることで,充実したり,できるようになったりする活動があり,子どもたちの生活をよりよくする役割を担っている

学校保健,特別支援教育における子どもの成長・発達支援と理学療法

著者: 竹田智之

ページ範囲:P.1184 - P.1190

Point

●学校教育においては特別支援学校をはじめ,個のニーズや状態像に応じて多様な学びの場がある

●理学療法士が学校保健や特別支援教育にかかわるパターンは複数あり,自治体ごとに異なる

●横浜市においては,就学相談や施設の環境調整,学校支援などに理学療法士がかかわっている

Close-up 心不全パンデミック

心不全パンデミック

著者: 網谷英介

ページ範囲:P.1192 - P.1197

心不全患者数の増加

 65歳以上の人口比率は高齢化率と呼ばれ,わが国では1990年の12.1%から,2019年には28.4%と倍以上に増えている.高齢化は世界各国でみられる現象である.社会が高齢化するにつれて心不全の罹患者数が増える傾向についても,世界的にみることができる.

 日本は世界のなかでも高齢化が進んでおり,心不全の患者数増加,その社会的インパクトの増大はより深刻である.この状況は「心不全パンデミック」と命名されている.

心不全パンデミックと理学療法

著者: 櫻田弘治

ページ範囲:P.1198 - P.1203

はじめに

 心不全患者が,再入院を繰り返し「心不全の病みの軌跡」1)をたどることによって予後不良となることは明らかであり,繰り返す入院は医療経済的にも大きな問題である.それを減らすことは理学療法のきわめて重要な治療目的のひとつである.

 本邦における循環器疾患別患者数は,2021年の循環器疾患診療実態調査(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular Diseases:JROAD)登録施設において急性心筋梗塞および心臓手術件数が6万〜7万件前後で推移しているのに対し,心不全入院患者数は26万〜28万人であり,2013年と比較して経年的に増加し,2021年の登録施設数は264施設と少ないにもかかわらず約3万人も増加している2)

 全国の心不全患者数は2030年には130万人に達すると考えられ,特に65歳以上の高齢者の割合は31.6%へ増加していくことが予測されている3).まさに超高齢社会の到来とともに心不全患者が増加し続けている現在,いわゆる「心不全パンデミック」を経験している理学療法の臨床現場では何が起きているのか.さらに,この状況に対応するために必要とされる理学療法の変化と課題,また健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)がめざす目標達成のための理学療法の役割,関連学会の動きについて解説することを通して,心不全患者に対する理学療法の問題点を共有したい.

心不全パンデミックと訪問理学療法

著者: 大浦啓輔

ページ範囲:P.1204 - P.1207

はじめに

 訪問理学療法などの在宅医療は,通院困難な患者に実施するため,在宅医療を受ける患者は低身体機能や重症であることが特徴である.心不全パンデミックによる高齢心不全患者の増加は,低身体機能や重症者のさらなる増加が予測される.表に,当法人において2021年に訪問リハビリテーションを開始した心不全患者を示す.当法人は心不全の在宅医療に力を入れているため心不全パンデミックの状況を一足先に経験している.年齢が高く,New York Heart Association(NYHA)Ⅲ度以上の症例が多く,介護度要介護2以上の症例が65%と高齢化,重症化がよくわかる.本稿では心不全パンデミックによる訪問理学療法の変化や課題を述べる.

連載 とびら

想定外の出来事

著者: 宮地由起子

ページ範囲:P.1129 - P.1129

 人生の折り返し地点もとうに過ぎ,理学療法士としては卒業までのカウントダウンが始まった.理学療法士をめざして養成校に入学した頃の自分には想像できない,いろんな時間が流れ,多くの経験をさせていただいた.

 そのなかで私にとって,いわゆる「想定外の出来事」と思うことが2つある.まずは管理職となり,理学療法士としてではない業務に携わるようになったこと.そして新型コロナウイルス(SARS-COV-2)による新型コロナウイルス感染症(coronavirus infectious disease:COVID-19)の蔓延で受けたさまざまな影響だ.今回この執筆依頼を受け,いまだ消化できずそのまま卒業を迎えそうなこれらに対し,自分を振り返る時間として使わせていただくこととした.

画像評価—何を読み取る? どう活かす?・第10回

慢性心不全—軽症〜中等症

著者: 西原浩真 ,   岩田健太郎

ページ範囲:P.1123 - P.1126

症例情報

訪問リハビリテーションの利用者の様子がおかしい?

患者:84歳,女性

現病歴:81歳から,慢性心不全に対して理学療法を行うため,訪問リハビリテーションを利用し始めた.患者の娘より,患者は3か月前の7月中旬から夜寝苦しさの訴えがあり,日中の活動量も減ってきているとのこと.歩行練習中の息切れ,倦怠感,下肢の重だるさがあり,靴下が履きにくい状態であった.歩行練習後のバイタルサインは血圧165/76mmHg,心拍数87bpm,酸素飽和度93%.先週と比べ,血圧は上昇し,酸素飽和度はやや低下していた.しかし,運動後に血圧の低下はなく,酸素化も90%以上であったため,リハビリテーション中止基準を満たさないと判断した.歩行練習を継続したところ,息切れが目立つ状態であった.娘は「やっぱり,夏バテか何かで疲労しやすいのでしょうか?」と心配していたが,安静時のバイタルサインは問題なく,その日は歩行練習のみ実施し,終了した.翌朝,患者が急変し,慢性心不全の急性増悪で入院することになった.

理学療法のスタート—こうやってみよう,こう考えていこう・第10回

日常カルテ記載のポイント/自分が休む際の「申し送り」,どう書けば?

著者: 多々良大輔 ,   森千裕

ページ範囲:P.1209 - P.1213

新人さんではない指導者の方へ

 COVID-19の蔓延により,臨床実習は大きく影響を受けました.実習の制約は,学生が理学療法士へ,新人が理学療法士へ変貌する過程で大切なことは何かを振り返るきっかけになったとも言えます.

 新人理学療法士の緊張と戸惑いの要因は,技術的なことや患者さんとの対話など,さまざまです.しかしCOVID-19に臨床実習の機会を制約された本人たちは,それ以前の新人との違いを実感することはできません.私たち現場指導者は,新人なら当然のことまで「実習経験量のせい」と捉えてしまうかもしれません.本連載は,入職1,2年目の新人理学療法士を応援すべく,日常の臨床で出会うエピソードを提示し,理学療法のおもしろさ・難しさ・ポイントを伝えたい,と企画しました.

臨床実習サブノート 退院後から振り返るゴール設定—推論を事実と照合して学ぶ・第5回

在宅復帰 歩行自立

著者: 村中晃

ページ範囲:P.1216 - P.1221

 症例はアテローム血栓性脳梗塞(左小脳,右中脳,両側視床)と診断された84歳男性です.急性期病院にて血栓溶解療法(t-PA療法)およびリハビリテーションが開始されました.既往歴は高血圧症,糖尿病,心房細動です.40病日に当院回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)へ入院となり,183病日に自宅退院しました.発症前のADL,IADLは自立していました.

 妻,息子と同居し,息子は就労しているため日中は妻と生活しています.キーパーソンは妻で介護歴があり,介護に関する一定の知識をもち合わせていました.

 現在,退院後6か月が経過しています.介護保険は要介護4の認定を受けています.

私のターニングポイント・第33回

成長し続け,次世代を盛り上げる

著者: 大西健太

ページ範囲:P.1208 - P.1208

 私のターニングポイントは3つあります.

 1つ目は,理学療法士を知るきっかけとなった,小学校3年生のときに極度の股関節痛を発症したことです.いろいろな病院に検査に行っても原因がわからず,車椅子や松葉杖の使用を余儀なくされました.当時は松葉杖を指導してくれた理学療法士に対し,ふてくされた態度をとり,松葉杖を拒否した覚えがあります.それでも懸命に理学療法を提供する姿に感銘を受け,理学療法士をめざすことを決意しました.専門学生になってからも理学療法の担当をしていただき,筋肉や関節の試験問題を出されながら理学療法を受けた記憶があります.

My Current Favorite・7

メタバース×リハビリテーション

著者: 山本周平

ページ範囲:P.1223 - P.1223

現在の関心事は?

 新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)の世界的な拡大により,webの医療活用が急増加している.面会が難しいなかでもwebを介して家族にアクセスすることができ,何よりweb面会後の患者の表情は明るくなり,リハビリテーション効果も高いことを経験する.

 そんなweb社会のなかで今着目しているのは,メタバースの中核を担う拡張現実(augmented reality:AR),仮想現実(virtual reality:VR),両者を融合した複合現実(mixed reality:MR)を用いた医療介入である.集中治療室(intensive care unit:ICU)は機械音や医療スタッフの管理など常にストレスを与えられている特殊な環境である.この過酷な環境のICU患者に対するVRの有効性が少しずつ報告されており,最近ではCOVID-19患者を対象にICU-VR試験も実施されている.

報告

女子ジュニアスポーツ選手の片脚ドロップジャンプ着地後のバランス能力と下腿・足部傷害の関係

著者: 貴志真也 ,   藤原健太 ,   木村侑史

ページ範囲:P.1225 - P.1229

要旨 【目的】女子ジュニアスポーツ選手の片脚ドロップジャンプ着地後(single leg drop jump landing test:SDLテスト)のバランス能力と下腿・足部傷害の関係性を検討することである.【対象と方法】下腿・足部の傷害で当院を受診した女性アスリート10名.SDLテストを用いて,着地時の床反力垂直成分(以下,Fz)ピーク値,着地後20〜200msまでの足圧中心(center of pressure:COP)軌跡長,着地後1〜5s間のCOP軌跡長を算出し,健側と患側を比較検討した.【結果】Fzのピーク値と20〜200msのCOP軌跡長は患側が有意に大きかった(p<0.05).しかし,1〜5sの軌跡長は有意差が認められなかった.【結論】下腿・足部傷害で理学療法を行い,スポーツ復帰を果たした女子ジュニアスポーツ選手のSDLテストにおいて,患側が健側と比較してフィードフォワードに働くバランス能力が低い.また力の垂直成分に対する衝撃応力が有意に高く,下腿・足部障害の再発要因の1つである可能性がある.

地域在住高齢者における緊急事態宣言後のロコモ25,抑うつ状態の変化

著者: 今岡真和 ,   中村美砂 ,   田崎史江 ,   中尾英俊 ,   今井亮太 ,   肥田光正 ,   武田雅俊

ページ範囲:P.1231 - P.1237

要旨 【目的】本研究の目的は,緊急事態宣言後の地域在住高齢者を対象にロコモティブシンドローム,抑うつ傾向の変化および外出自粛状況の実態を調査することである.【対象と方法】対象は2018〜2019年に実施した本学ヘルスチェック事業に参加したことのある地域在住高齢者504名とした.2020年7月時点で郵送法による自記式調査を行いロコモティブシンドローム,抑うつおよび外出自粛状況を調査した.解析は前回ヘルスチェック参加時点の事前と今回調査の事後で比較検討した.【結果】対象者504名のうち,郵送にて回収された解析対象者は258名(回収率:51.2%)であった.ロコモ25の得点は事前9.87点±6.25点から事後11.78±10.23点へと有意に増加していた.また,ロコモ25の下位項目では,活動参加の項目が有意に点数増加していた.一方,抑うつ傾向の変化はみられなかった.なお,緊急事態宣言中に外出自粛をしていた者は249名(96.5%)であった.【結語】地域在住高齢者は,緊急事態宣言後にイベントが減少したことや知人と直接会うことを控えるなどして,ロコモティブシンドローム得点が増加していた.

症例報告

大動脈弁狭窄症手術待機患者に対して運動・栄養療法を実践した1例—術前の身体機能改善をめざして

著者: 大西悠太朗 ,   白土健吾 ,   横手翼 ,   奥野将太 ,   井上慎太郎 ,   西村天利 ,   古川正一郎 ,   内田孝之

ページ範囲:P.1239 - P.1243

要旨 【はじめに】今回,大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)患者に対して経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)の術前から運動療法と栄養療法介入した結果,11日間の入院精査期間後に身体機能を維持したため報告する.【症例紹介】入院前より低活動の80歳台男性.労作時呼吸困難感あり精査目的に入院したところ,心臓超音波検査で重度AS所見があった.術前よりフレイルを有していた.【経過】第3病日目より心電図モニター管理下で低強度運動を含めた運動療法を開始した.栄養療法は第5病日目より蛋白質増量(0.8→1.0g/kg)した.第12病日目にTAVIを施行した.【結果】身体機能評価(入院3日目→入院11日目)では最大握力が10.8%,歩行速度35%,等尺性膝伸展筋力は9%,Japanese version-Cardiovascular Health Study Criteria 5→3項目と維持し改善した.【考察】今回,AS患者に対してリスク管理を多職種で連携し理学療法士監視下で行った術前からの運動療法と栄養療法介入は,有害事象なく身体機能の低下を予防した.

臨床のコツ・私の裏ワザ

松葉杖歩行の指導におけるコツ—グリップ把持から良姿勢へ誘導するポイント

著者: 清水正一

ページ範囲:P.1244 - P.1245

松葉杖歩行で多くみられる不良姿勢

 松葉杖歩行を指導する際,腋窩と脇当てを密着させると腕神経叢が圧迫されてしまう1).そのため,腋窩と脇当ての間を2〜3横指空けるように指導する.しかし,上腕内側部と胸郭外側部で脇当てを挟み込む筋力やボディイメージが低下している症例では,胸椎が後彎し,肩甲骨は外転・上方回旋位,肩関節は屈曲・外転・内旋位,肘関節は屈曲位,手関節は背屈位となり,脇当てに寄りかかるような不良姿勢を呈していることが多い(図1).

新型コロナウイルス感染症—現場からの報告

メンタルヘルスの観点からみる当院のCOVID-19リハビリテーションチームの特徴—安心で安全な取り組みとは

著者: 村岡法彦 ,   及川欧 ,   髙橋佑弥 ,   内藤幸輝 ,   美馬愛子 ,   呂隆徳 ,   大田哲生

ページ範囲:P.1247 - P.1249

 これまでに,重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)や新型インフルエンザなど,重症になりやすい新興感染症の治療にあたる医療従事者のメンタルヘルス障害が多く報告されている.

 2020年11月に旭川市内の3つの医療機関で新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)のクラスターが立て続けに生じた.それまでCOVID-19患者の診療を行っていなかった旭川医科大学病院(以下,当院)の診療開始に合わせ,筆者らは2020年12月にCOVID-19リハビリテーションチームを立ち上げた1).COVID-19患者に対応する医療従事者のバーンアウトのニュースが既に報道されており,身体的過労,不眠,不安,抑うつなど,メンタルヘルスに支障を来しているとの報告も散見された.そのため,筆者らは「安心で安全に取り組むこと」を第一に考えて,チームの活動を進めることとした.

書評

—奥田憲一,松田雅弘,三浦利彦(責任編集)—「—15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト—小児理学療法学」

著者: 田中弘志

ページ範囲:P.1215 - P.1215

 理学療法の対象は高齢者を中心とした成人が多く小児は比較的少ない.小児の分野では「ハビリテーション」という言葉が用いられることがある.成人の理学療法が主にリハビリテーションによって元の状態に近づけることが目標になることに対し,小児の理学療法で行われるハビリテーションは先天性障害などに対して患者がもっている機能を生かして個々に応じて目標設定を行い,治療を行うことである.

 小児の理学療法が難しいという印象をもつ人が多いことは,この個々に応じて目標を設定してハビリテーションを行うことの難しさのためではないかと考える.本書はまさに先天性疾患に対し,個々の目標設定を行うための多くの情報が示されている.

--------------------

目次

ページ範囲:P.1130 - P.1131

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.1145 - P.1145

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.1252 - P.1253

編集後記

著者: 横田一彦

ページ範囲:P.1254 - P.1254

 少子高齢化が叫ばれて久しいですが,人口動態統計によれば昨年の出生数は81万1604人とのことです.今年理学療法士となった多くの方が生まれたであろう2000年の出生数は119万547人で昨年より約38万人も多く,理学療法士及び作業療法士法が成立した1965年の出生数は182万3697人と,昨年の2.2倍強でした.こうしてあらためて数字を見ると,少子化というものが実感されます.

 さて,本号の特集は「子どもの成長・発達を支える理学療法」です.少子化だけのためばかりではありませんが,理学療法士が臨床場面で子どもの診療のあたることは小児専門施設でない限り多くはないと思います.しかし,成人と同様に理学療法の対象は拡大と深化が進んでいます.今回は乳幼児期から学童期の子どもについて,「成長と発達を支える」という観点からご専門の先生方に解説していただきました.新田論文では発達領域における理学療法の変遷や視点を示していただきました.吉田論文,小関論文では,運動と動作,こころと言葉の発達について解説していただき,又村論文では複雑な医療・福祉制度をわかりやすく解説していただきました.理学療法の実践では,ディベロップメンタルケアを基盤としたアプローチを藤本論文,呼吸ケアと発達促進の観点から横山論文,訪問理学療法と通所理学療法について齋藤論文,久保田論文で論述していただきました.また,竹田論文では学校保健,特別支援教育における理学療法士のかかわり方を具体的に示していただきました.これらを通して,子どもの理学療法の現在地をあらためて確認していただけるのではないかと思います.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?