文献詳細
文献概要
Close-up 取り組もう 末梢性顔面神経麻痺
末梢性顔面神経麻痺に対する実践的理学療法
著者: 森嶋直人1
所属機関: 1豊橋市民病院リハビリテーションセンター
ページ範囲:P.1463 - P.1468
文献購入ページに移動はじめに
末梢性顔面神経麻痺は一般的に予後良好な疾患だと考えられているものの,予後不良例は後遺症を生じ,遷延性麻痺,病的共同運動,耳鳴り,めまいなど多岐にわたる障害が出現する.このなかで理学療法の目的は麻痺の改善と病的共同運動の予防・軽減であり,特に病的共同運動は患者の訴えとして最も多く認められる徴候である.われわれ1)は345例のFNP症例において,71例(21%)が病的共同運動を生じたとし,予後判定の重要性を報告している.
一般的に末梢性顔面神経麻痺に対する理学療法は,家庭内プログラムを中心に実施される2).理学療法の介入として,角膜保護,表情筋ストレッチ,拮抗運動指導などの家庭内プログラム指導を月1回実施し,後は実践管理をしている.
後遺症改善には長期を要する場合があり,この場合は発症後1年以上を必要とする場合もある.後遺症残存例にはボツリヌス毒素治療や形成外科的治療が選択される.
本稿では顔面神経麻痺に対する理学療法について,発症からの時期に分けて実施内容を紹介する.
末梢性顔面神経麻痺は一般的に予後良好な疾患だと考えられているものの,予後不良例は後遺症を生じ,遷延性麻痺,病的共同運動,耳鳴り,めまいなど多岐にわたる障害が出現する.このなかで理学療法の目的は麻痺の改善と病的共同運動の予防・軽減であり,特に病的共同運動は患者の訴えとして最も多く認められる徴候である.われわれ1)は345例のFNP症例において,71例(21%)が病的共同運動を生じたとし,予後判定の重要性を報告している.
一般的に末梢性顔面神経麻痺に対する理学療法は,家庭内プログラムを中心に実施される2).理学療法の介入として,角膜保護,表情筋ストレッチ,拮抗運動指導などの家庭内プログラム指導を月1回実施し,後は実践管理をしている.
後遺症改善には長期を要する場合があり,この場合は発症後1年以上を必要とする場合もある.後遺症残存例にはボツリヌス毒素治療や形成外科的治療が選択される.
本稿では顔面神経麻痺に対する理学療法について,発症からの時期に分けて実施内容を紹介する.
参考文献
1)Morishima N, et al:Prognostic factors of synkinesis after Bell's palsy and Ramsay Hunt syndrome. Auris Nasus Larynx 2013;40:431-434
2)森嶋直人:末梢性顔面神経麻輝に対するリハビリテーションのホームプログラム.耳喉頭頸2017;89:690-697
3)柳原尚明,他:顔面神経麻痺程度の判定基準に関する研究.日耳鼻会報1977;80:799-805
4)Esslen E:The acute facial palsies:investigations on the localization and pathogenesis of meato-Iabyrinthine facial palsies. Schriftcnr Neurol 1977;18:1-164
5)川口和浩,他:顔面神経麻痺 発症早期のリハビリテーション.耳喉頭頸2007;79:153-158
6)Ross BG, et al:Development of a sensitive clinical facial grading system. Otolaryngol Head Neck Surg 1996;114:380-386
7)出田真二,他:顔面神経麻痺による眼合併症とその治療について.Facial Nerv Res J 2009;29:155-157
8)日本顔面神経研究会(編):顔面神経麻痺診療の手引き—Bell麻痺とHunt症候群.pp85-86,金原出版,2011
9)日本神経治療学会治療指針作成委員会:標準的神経治療—Bell麻痺(2019).神経治療2019;36:620-634
10)東 貴弘,他:顔面神経麻痺後遺症評価法—その予防と治療.脳21 2014;17:360-366
11)栢森良二:顔面神経麻痺のリハビリテーション.pp75-79,医歯薬出版,2010
12)Kasahara T, et al:Efficacy of tape feedback therapy on synkinesis following severe peripheral facial nerve palsy. Tokai J Exp Clin Med 2017;42:139-142
13)Ross B, et al:Efficacy of feedback training in long-standing facial nerve paresis. Laryngoscope 1991;101:744-750
14)Brach JS, et al:Facial neuromuscular retraining for oral synkinesis. Plast Reconstr Surg 1997;99:1922-1933
15)羽藤直人,他:顔面神経麻痺の評価up-to-date.Facial Nerv Res Jpn 2016;36:9-10
16)Morishima N, et al:Effect of muscle strengthening on peripheral facial palsy:a randomized controlled trial. Phys Ther Res 2020;23:59-65
17)杉浦むつみ,他:顔面神経麻痺患者の心理的ストレスの評価.日耳鼻会報2003;106:491-498
18)森嶋直人,他:中枢性顔面神経麻痺の発症頻度と損傷部位との関係—脳梗塞患者における検討.Facial Nerv Res Jpn 2021;41:150-153
19)Nicastri M, et al:Efficacy of early physical therapy in severe Bell's palsy:a randomized controlled trial. Neurorehabil Neural Repair 2013;27:542-551
20)Beurskens CHG, et al:Mime therapy improves facial symmetry in people with long-term facial nerve paresis:a randomised controlled trial. Aust J Physiother 2006;52:177-183
21)日本顔面神経学会:認定制度.https://jsfnr.org/certification/index.html(2022年10月1日閲覧)
掲載誌情報