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特集 進歩する低侵襲手術に応じた理学療法—治療プログラム,目標設定,リスク管理
心臓の低侵襲手術と理学療法
著者: 河村知範1 畔栁智司2
所属機関: 1岸和田徳洲会病院リハビリテーション科 2岸和田徳洲会病院心臓血管外科
ページ範囲:P.188 - P.191
文献購入ページに移動心臓,大動脈手術にも低侵襲化の波が訪れ,transcatheter aortic valve implantation(TAVI),minimally invasive cardiac surgery(MICS)やステントグラフト(stent graft:SG)による治療が盛んになってきている.これまで心臓手術といえば胸骨正中切開がgold standardであったが,急速に低侵襲化が進んでいる.TAVIは大動脈弁狭窄症専用の治療であるが,穿刺でカテーテルによる弁置換が可能となった.長期成績や合併症にまだまだ問題はあるが,手術侵襲が問題となる高齢者には非常に大きな恩恵をもたらしている.通常の弁置換,弁形成においても,肋間小切開アプローチ(図)での手術が施行されている.胸骨正中切開は視野展開もよく,あらゆる不測の事態への対応も可能であるが,あくまでも外科医にとっての優れたアプローチであって,患者にとっての負担は小切開アプローチが優れているのは言うまでもない.小切開アプローチの利点は,創部感染リスクの低減,胸壁侵襲の軽減による呼吸不全の予防,出血量の減少などがある.さらに,胸骨正中切開に伴う上肢の運動制限などもないため,早期社会復帰も可能である.MICSはアプローチの問題であり,手術内容は従来手術と変わらないため長期成績も担保されており,積極的に展開していける治療法である.
大動脈へのSG手術はこれまでとはまったく異なる治療法である.従来,大動脈瘤の治療は病的部位の人工血管置換のみであった.部位によって切開部位は異なるが,おおむね大きな切開を要し,胸壁,腹壁への侵襲も大きくなる遠位弓部以遠の大動脈瘤治療が,大腿部の小切開(最近は穿刺でも可能)(図)となった.SG治療は大動脈瘤を内張りする治療のため,瘤の形状により治療可否が決まる.SG適応となる大動脈瘤の治療での恩恵は計り知れないほど大きい.ただし,長期的には人工血管置換に劣る部分もあり,追加治療を要する場合もある.
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