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連載 とびら
ストロマトライトの独り言
著者: 飯田有輝1
所属機関: 1豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科
ページ範囲:P.269 - P.269
文献購入ページに移動 ずいぶん前のことだが,オーストラリアのハメリンプールを訪れた.ここは生きたストロマトライトの群生地として知られている.ストロマトライトはシアノバクテリアの集合体で,ハメリンプールの海岸に無数に鎮座している.そんなものをなぜ見に来たかというと,太古の地球で酸素が作り出される光景を見てみたいと思ったからだ.シアノバクテリアは地球で最初の光合成生物で,27億年前に誕生し古代大気に酸素をもたらした.ストロマトライトは見た目は大きめの岩石にしか見えないが,海中ではポロリと気泡を出していて生命体であることがわかる.「こんな少しずつで?」と億単位の年月の流れを思い,遠く水平線に目を移したのを覚えている.
先カンブリア紀の生物はほぼ嫌気性で酸素は生命を脅かす猛毒でしかない.そんなものを出し続けるシアノバクテリアはおそらくはた迷惑な隣人であったに違いない.そのなかでミトコンドリアと呼ばれる細胞小器官を携え,酸素のなかで生きられるようになった真核細胞がいる.このミトコンドリア,紅色細菌の一種が原始的な真核細胞に取り込まれ「細胞内共生」したもので,宿主細胞とは別のDNAを持った器官である.取り込まれて細胞内にとどまったのか,ミトコンドリアが自ら潜り込んだのかは不明だが,おそらくこのシステムができ上がるには長い年月がかかり,芸術家が失敗を重ねた先に最高傑作を生み出したときの奇跡に近いドラマがあったのだろうと推測する.
先カンブリア紀の生物はほぼ嫌気性で酸素は生命を脅かす猛毒でしかない.そんなものを出し続けるシアノバクテリアはおそらくはた迷惑な隣人であったに違いない.そのなかでミトコンドリアと呼ばれる細胞小器官を携え,酸素のなかで生きられるようになった真核細胞がいる.このミトコンドリア,紅色細菌の一種が原始的な真核細胞に取り込まれ「細胞内共生」したもので,宿主細胞とは別のDNAを持った器官である.取り込まれて細胞内にとどまったのか,ミトコンドリアが自ら潜り込んだのかは不明だが,おそらくこのシステムができ上がるには長い年月がかかり,芸術家が失敗を重ねた先に最高傑作を生み出したときの奇跡に近いドラマがあったのだろうと推測する.
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