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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル56巻5号

2022年05月発行

雑誌目次

特集 動作分析と臨床のマッチング

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.496 - P.497

 動作分析は理学療法の核をなす部分と言われるが,一歩でいまだにスタンダードを見出せていないとも言える.今見ている動作は疾患の結果なのか,あるいは原因なのか,またそれは判別できるのか,周辺知識はどこまで必要なのか,といった基本から臨床応用までの特集である.理学療法士の視覚的評価と動作分析機器との融合や,歩行を含めた動作全般の成り立ちと疾患との関連性について取り上げた.各執筆者には,動画を参考資料としてご提供いただいた.理解を深める一助としたい.

動作分析の現状と問題点,今後期待されること

著者: 勝平純司

ページ範囲:P.498 - P.502

Point

●動作分析に用いる機器の種類や特徴を理解する

●さらに重要なのは「どの計測機器を」,「何のために」,「どのような場面で」用いるべきかを判断するスキルである

●得られた結果を理解するための基礎知識を身につけたうえで,動作分析の結果をわかりやすく対象者に説明する能力も必要である


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

動作分析機器と入門

著者: 千代丸正志

ページ範囲:P.503 - P.507

Point

●動作分析機器により計測可能な運動学・運動力学的指標は,理学療法士が姿勢や動作を分析する際に必須の基準となる

●各動作分析装置の利点と欠点を理解した機器の選択が重要である

●大切なのは臨床での動作分析能力であり,動作分析機器はその能力を高めるツールにすぎない

動作分析に必要な知識と技術

著者: 畠中泰彦

ページ範囲:P.508 - P.513

Point

●観察ではあらかじめ決めた手順に従い,俯瞰は最小限にとどめる

●分析では複数の動作を比較し,局所にかかる負荷を考察する

●介入による変化から臨床推論を証明する

脳卒中片麻痺者の動作分析 起立動作

著者: 本島直之 ,   紅野利幸

ページ範囲:P.514 - P.520

Point

●脳卒中片麻痺の起立動作はforce control strategyを選択し,その傾向は起立動作に難渋する重度麻痺を呈する片麻痺者においてより顕著である

●重度片麻痺者の起立動作は,軽度麻痺者よりも離殿前の股関節屈曲モーメントが小さく,離殿時の骨盤および胸郭前傾角度が大きい

●起立動作に難渋する片麻痺者の起立動作の達成には,高座位での脊柱伸展位を伴う股関節屈曲運動(胸郭前方変位)が有用な方法の一つである


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

脳卒中片麻痺者の動作分析 歩行開始

著者: 長田悠路

ページ範囲:P.521 - P.526

Point

●歩行開始前の姿勢調節が重要であり,それは足圧中心(COP)の動きを見て評価できる

●非麻痺足を先行肢とすると骨盤の代償的な挙上が起きにくく,円滑な動き始めが行える

●歩行開始は立位から始まる場合と座位から始まる場合があり,座位から始まる歩行では立位からの歩行開始よりもよりダイナミックな重心の前方移動が必要となる


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

脳卒中片麻痺者の動作分析 上肢運動

著者: 藤澤祐基 ,   岡島康友

ページ範囲:P.527 - P.533

Point

●脳卒中片麻痺の上肢リハビリテーションでは,麻痺の重症度の回復と運動パフォーマンスの改善が混同されることが多い

●片麻痺自体に変化がなくともパフォーマンスは改善することができ,その際に着目すべき要素の1つが多関節の自由度を低下させる運動戦略である

●片麻痺手でも速く書くことも遅く書くこともできるが,利き手の片麻痺による書字では,書字速度を低下させ,かつ上肢・手指関節を固定することで自由度を低下させ,個人の一貫した筆跡を再現する

変形性股関節症患者の動作分析—メカニカルストレスの集中・分散・回避の観点から

著者: 建内宏重

ページ範囲:P.534 - P.541

Point

●運動器疾患では,動作の異常が疾患や症状を発症・悪化させる場合があり,動作分析は特に重要である

●正常・異常動作は,メカニカルストレスの局所への集中・分散・回避の観点から分類することができる

●股関節疾患では,骨盤・脊柱などとの連動性のなかで,股関節局所のストレスを全身で分散させることが大切である


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

変形性膝関節症患者の動作分析

著者: 德田一貫 ,   谷本研二 ,   吉田研吾 ,   阿南雅也

ページ範囲:P.542 - P.547

Point

●変形性膝関節症患者の異常動作と症状や構造・機能障害レベルとの関連性を明らかにし,アプローチすることが重要である

●変形性膝関節症患者が最も困難を訴える動作の一つとして階段の降段動作があり,動作分析から得られる情報を統合して臨床応用につなげることが重要である

●変形性膝関節症患者の降段動作において,股関節や体幹機能を含めた全身機能と膝関節に加わるメカニカルストレスとの関連性を推察して理学療法を行った結果,異常動作の改善と疼痛軽減につながった


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

日常生活にかかわる動作分析

著者: 藤澤宏幸

ページ範囲:P.548 - P.554

Point

●日常動作の運動パターンは,解剖学的拘束,バランスによる拘束条件下で,エネルギーコストを最小化するように形成され,定型性を示す

●機能不全が拘束条件に加わることで定型性からの逸脱が生じ,動作分析では逸脱を手がかりに機能不全を推定する

●日常動作分析と特定課題分析を組み合わせることにより,効率的に機能不全の可能性を絞り込むことが可能となる


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

筋骨格シミュレーション解析

著者: 小栢進也

ページ範囲:P.555 - P.559

Point

●筋骨格シミュレーション解析は動作観察,力学推定,筋の力発揮の手順で結果を数値化するものである

●筋骨格モデルを用いると,筋張力や関節間力など生体外から計測できないデータを数値化できる

●多関節運動における筋機能を調べる筋骨格シミュレーション解析は,代償メカニズムの解明やトレーニング筋の特定に用いることができる


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年5月31日).

Close-up 立ち振る舞いのスキルを磨く

素適なコミュニケーション—折衷案を導けるか

著者: 江田麻裕子

ページ範囲:P.562 - P.565

折衷案というコミュニケーションの効果

 筆者はカウンセリングとコーチングのセッションやセミナー,研修などをさせていただいているが,コミュニケーション力を高めることが多くの問題解決を可能にし,仕事の成果や評価も上がり,結果,人間関係も良好になるという好循環をもたらすことが多々ある.

 実際のコミュニケーションの場面では,良いか悪いか,あなたか私か,やるかやらないかという白か黒の二択,または答えが「はい」しか言えないやりとり,指示,命令,否定のコミュニケーションが多く,これが仕事や人間関係のトラブルにつながっていることがとても多い.同様のことは,職場だけでなく,教育現場や家族や友人間など,さまざまなコミュニケーションの場面で起きている.

怒りのコントロール—アンガーマネジメントを中心として

著者: 大矢薫

ページ範囲:P.566 - P.568

はじめに

 理学療法士の皆様はどんなときに怒りを感じるだろうか? 本稿執筆中の2022年1月1日現在,医学文献の検索サイトであるメディカルオンラインで「理学療法 怒り」と検索したところ,40件がヒットした.そのなかで,理学療法の領域で怒りをメインとした論文は1件であり,管理職が臨床指導の際に生じる怒りについての論文1)であった.この論文では,管理職は後輩の臨床指導で困ったり,心配になったりした際に怒りがわきやすく,かつ管理職が協調性を重視する場合や管理職自身の自尊感情が低い場合に怒りがわきやすいことを示している.

 このような管理職の怒り以外にも,理学療法士として対人援助職の現場で働く際に抱える怒りには,実際に患者と向き合うなかで知識や技術が不足して思うように治療ができない自分自身に対する怒り,リハビリテーションに積極的に取り組まない患者に対する怒り,上手に連携をとることができないことから生じる同僚や他スタッフに対する怒り,もしくは仕事以外のプライベートでの怒りなどが考えられる.このように考えると,怒りは日常生活のなかで非常に身近な存在であり,感情労働が求められる理学療法士にとって,怒りに振り回されずに,上手に向き合っていくことは,仕事や日常生活を充実させるうえで重要であろう.

アドバンス・ケア・プランニング

著者: 角田ますみ

ページ範囲:P.569 - P.574

アドバンス・ケア・プランニングとは

 アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)とは,医療やケアが必要になったときに,どんな治療やケアを,誰から,どこで,どんな形で受けるのかを,家族や医療者などとともに話し合い,考えていくプロセス1)をいう.プランニングという言葉から,治療についての計画と思われがちだが,ACPは単に治療計画を立てることではなく,本人がどのような治療やケアを望んでいるのか,またどのような生活を送りたいのかを考えて,家族や医療者と話し合うプロセスそのものを指す.

連載 とびら

「医療現場」の外から

著者: 戸田莉恵

ページ範囲:P.493 - P.493

 私は現在医療の現場を離れ,CYBERDYNE株式会社という企業に勤めています.「装着型サイボーグHAL®(以前はロボットスーツHAL®,以下,HAL®とする)」の名称は学生時代からよく耳にしていましたが,病院勤務時代にも実際に見る機会がなく,なぜか「一生触る機会のない機器」であると認識していました.当時の私の視野は非常に狭く,機械が苦手で手先が不器用でしたので,学会に参加してもロボットリハビリテーション分野に興味が湧かず,関連する演題を聴講することもありませんでした.そのため,今こうして毎日HAL®に触れていることを不思議に感じています.

 「医療職が企業に勤めてどのような仕事をするのか」ということに興味がある方もいらっしゃるかと思います.これに関しては企業や配属先次第かと思いますが,私は医療機器メーカーの営業部に所属しています.そのため,開発機器のフィードバック,教育体制の構築,現場への機器使用講習やフォローアップ,ロボケアセンターというHAL®を活用した自費リハビリテーション施設の対応,国内外営業,研究のサポートなどなど,非常に幅広い業務に携わっています.

画像評価—何を読み取る? どう活かす?・第5回

変形性膝関節症—膝蓋大腿関節

著者: 森口晃一

ページ範囲:P.489 - P.491

症例情報

患者:64歳,女性

診断名:右変形性膝関節症

現病歴:初診の約2か月前から,しゃがみ込む際に右膝関節に軽度の疼痛が出現するようになる.その後,歩行時の疼痛はほとんどないが,椅子からの起立時や階段昇降時にも疼痛が出現してきたため,当院を受診.疼痛部位は主に右膝関節の前方部(やや内側寄り)であった.

既往歴・合併症:なし

スポーツ外傷・障害の予防・第5回

腰椎分離症

著者: 高橋塁

ページ範囲:P.579 - P.581

はじめに

 腰椎分離症は,発症してしまうと長期の患部固定を余儀なくされ,それによるパフォーマンスの低下が起こり得る.適切な処置が得られないと,選手としての出場機会さえ奪ってしまう可能性の高い疾患でもある.ここでは,筆者自身の経験より,腰椎分離症の予防の方法を紹介する.

理学療法のスタート—こうやってみよう,こう考えていこう・第5回

評価の技術を活かすために—準備と検査の段取りの組み方/評価の技術を活かすために—説明・姿勢変換・運動のタイミングのコツ

著者: 植野拓

ページ範囲:P.582 - P.586

新人さんではない指導者の方へ

 COVID-19の蔓延により,臨床実習は大きく影響を受けました.実習の制約は,学生が理学療法士へ,新人が理学療法士へ変貌する過程で大切なことは何かを振り返るきっかけになったとも言えます.

 新人理学療法士の緊張と戸惑いの要因は,技術的なことや患者さんとの対話など,さまざまです.しかしCOVID-19に臨床実習の機会を制約された本人たちは,それ以前の新人との違いを実感することはできません.私たち現場指導者は,新人なら当然のことまで「実習経験量のせい」と捉えてしまうかもしれません.本連載は,入職1,2年目の新人理学療法士を応援すべく,日常の臨床で出会うエピソードを提示し,理学療法のおもしろさ・難しさ・ポイントを伝えたい,と企画しました.

My Current Favorite・2

ロボットを活かして広げる理学療法

著者: 増田知子

ページ範囲:P.575 - P.575

現在の関心事は?

 ロボットを活用した理学療法です.当初は理学療法におけるロボットの活用とは,ロボットに理学療法士の代わりを務めさせていくものだと認識していました.しかし現在は,各種のロボットがどのような方を適応とするか,どのような使用方法がより効果的・効率的かといった理学療法士の経験から培われた視点や理論,技術とロボットの機能を融合させていくことがロボットの活用だと考えるようになりました.そのことを実践していきたいと考えています.

私のターニングポイント・第28回

自分と理学療法士としての成長の重なり

著者: 池田耕二

ページ範囲:P.578 - P.578

 理学療法士として臨床現場で20年間勤務した後,現在,大学にて教鞭を執っています.これまでを振り返り,理学療法士としてのターニングポイントを3つ紹介したいと思います.

 1つ目は,高校時代にスポーツにて膝前十字靱帯を断裂し,再建術とその後の理学療法を受けた経験です.このとき初めて理学療法(士)と出会い,魅力的な仕事と感じたことを覚えています.理学療法士をめざす契機になりました.また,以後一貫して膝の調子がよかったわけではなく,体調や天候などに左右されるため,痛みや思うように動かない膝に落ち込むことがありましたが,これが理学療法士としての大きな財産になると強く信じたことも覚えています.その後,理学療法士になった自分は一刻も早く一人前になるため,がむしゃらに疾患別理学療法を勉強しました.

原著

主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチングの有効性—ランダム化クロスオーバー試験による検討

著者: 清野浩希 ,   小林雄也 ,   伊牟田真樹 ,   仲島佑紀

ページ範囲:P.587 - P.593

要旨 【目的】主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチング(ストレッチ)が,即時的に可動域を改善するために有効であるかを明らかにすること.【方法】対象は,ハムストリングスの伸張性改善が必要と判断した,外来患者50名とした.ストレッチ課題は,端座位でのハムストリングスのストレッチとした.ストレッチ時間は,A:従来法(30秒)と,B:主観法(主観的に筋が伸びたと感じるまで)の2種類とし,各4セット実施した.A,Bは別日に実施した.効果判定は,膝関節他動伸展角度(knee extension angle:KEA)とし,ストレッチ前後で測定した.【結果】持ち越し効果は認められず,従来法,主観法ともに,KEAはストレッチ前と比較しストレッチ後が高値を示した.また,KEA変化量は従来法と比較して主観法が高値を示した.【考察】主観的伸張感で実施時間を設定するストレッチは,即時的に可動域を改善するために有効であることが示唆された.

報告

臨床および教育現場で実践されているウィメンズヘルス理学療法の実態

著者: 渡邉観世子 ,   屋嘉比章紘 ,   久保晃

ページ範囲:P.595 - P.601

要旨 【目的】臨床現場のニーズに合わせたウィメンズヘルス理学療法のカリキュラムを提案することをめざし,臨床と教育現場の実態を調査した.【方法】臨床現場におけるウィメンズヘルス理学療法の処方件数および養成課程で習得する知識としての重要性の認識,養成機関における講義の開講状況を調査した.【結果】臨床現場では「骨粗鬆症」,「失禁」,「予防・管理」,「乳がん術後の機能障害およびリンパ浮腫」の処方件数が多く,これらは理学療法士の知識の重要性とも一致していた.教育現場では半数以上の養成機関で「加齢に伴う筋骨格系の問題に対する病態,評価および治療」,「基礎知識」の講義を開講していたが,「女性特有の悪性腫瘍」や「失禁」を扱う講義の開講は少なかった.【結論】加齢に関する内容は臨床現場でのニーズに合った教育が実施されている反面,悪性腫瘍や失禁についての講義は少ないため,教育現場ではこれらの講義を提供する必要があることが示された.

パーキンソン病とその関連疾患における日本語版Characterizing Freezing of Gait Questionnaireの尺度特性の検討

著者: 近藤夕騎 ,   望月久 ,   滝澤玲花 ,   吉田純一朗 ,   鈴木一平 ,   加藤太郎 ,   板東杏太 ,   西田大輔 ,   水野勝広

ページ範囲:P.603 - P.609

要旨 【目的】日本語版Characterizing Freezing of Gait Questionnaire(C-FOGQ)の尺度特性を検討することで,日本語版C-FOGQが効果判定の指標として有用かを明らかにすることを目的とした.【方法】すくみ足を訴えるパーキンソン病とその関連疾患入院患者40名を対象に,日本語版C-FOGQを2回測定し,信頼性およびすくみ足に関連する項目との相関を検討した.【結果】日本語版C-FOGQは,臨床的に許容できる範囲の再現性はあること,既存のすくみ足の質問紙よりも測定誤差が少ないことを確認できた.一方で,日本語版C-FOGQにおけるSection Ⅱの最小可検変化量の値が大きい結果となった.また,すくみ足に関連する評価項目との有意な相関は認められなかった.【結論】介入効果の主要な判定指標として日本語版C-FOGQを使用する場合,最小可検変化量が高値を示すという尺度特性を考慮したうえで使用しなければならない.

書評

—中山恭秀(編集)—「3日間で行う理学療法臨床評価プランニング 改訂第2版」

著者: 網本和

ページ範囲:P.561 - P.561

理学療法の臨床現場は行列のできるレストラン

 評者は20年近く大学病院の臨床現場で勤務しておりました.現在のように時間単位の単位制ではなく,多くの症例を同じ時間帯に担当し,さらに新規に処方された症例の評価を行うという離れ業的な業務をこなしておりました.当時から思っていたことは,このような忙しい臨床現場は人気のあるレストランによく似ている,ということでした.同時にいくつもの料理の注文を受けた場合,どの料理から取り掛かるか,いつ完成させどの器に盛りつけていくかなどの流れを瞬時にイメージしていかなければなりません.料理に取り掛かる前の下ごしらえもまた重要であることは言うまでもありません.振り返れば理学療法の臨床現場も同様で,初回評価から治療プログラムそして退院先の推定など,一連の「流れ」をイメージすることで最適な理学療法サービスを提供できると思います.

 中山恭秀先生の編著『3日間で行う理学療法臨床評価プランニング 改訂第2版』はこのような「流れ」に重きを置いた書籍です.中山先生の書かれた初版の序に「臨床における重要な能力」として「評価をどのように組み立てるかというプランニング力」があると指摘されています.この点まったく同感です.前置きが長くなりましたが,そろそろ本題に入りたいと思います.

—安倍浩之,中川法一(編集)—「インソールマニュアル—姿勢と歩行を快適にする運動連鎖アプローチ 第2版」

著者: 鈴木重行

ページ範囲:P.577 - P.577

 2012年に初版が発刊されて以来,約10年の歳月を経て,待望の第2版が発刊されることになった.この間,著者らは数多くの人々に本書に紹介されているインソールを作製し,その効果を実感するとともに,多くの論文からエビデンスを注入し,改良を加えながら経験を重ねてきている.これらの集大成が本書にまとめられており,インソールをスポーツ選手や患者様に提供する機会のある医師,セラピスト,義肢装具士にとって必読の書となっている.

 本書では,インソール作製ならびにインソール作製のための評価には解剖学,運動学の基礎のなかでも,特に足部の異常から波及する運動連鎖を静的,動的の両面から理解することが非常に重要であると論述している.殊に,距骨下関節の過度の回内が足部のみならず,膝・股関節,骨盤,脊柱など全身のアライメントに影響することを強調している.

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目次

ページ範囲:P.494 - P.495

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.513 - P.513

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.612 - P.613

編集後記

著者: 福井勉

ページ範囲:P.614 - P.614

 人の動きを観察していると,その精緻さとは別に多種多様な動機があることがわかります.手を伸ばして何かを取ろうとする人もいれば,無意識で行われる動きが美しさを醸し出すこともあります.乳児の手の動きに見られる可愛い動作からトップアスリートのパフォーマンスまで動作は幅広く,動くこと自体が目的のこともあります.この動作をつくる関節や筋には一定の活動ルールがありますが,運動遂行に不都合があるとバリエーションが縮小します.動作分析は隣接関節との関係性や,拘束条件から考察を広げる際に,原因探究の重要な要素を占めます.

 また動作分析にはある「意図」をもつことが基本であるため,モーションキャプチャーによる計測がいくら客観的であっても,意図なき計測は意味をなさない場合があります.本特集ではその「意図」をお示しいただき,われわれの臨床活動のヒントとすることをめざしました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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