文献詳細
Close-up 身体内滑走
文献概要
はじめに
ヒトの上肢機能には,投げる・支える・持つなど,さまざまな場面で多様な機能が必要となる.そのため,肩関節は上腕骨,肩甲骨,鎖骨,脊椎,肋骨が複合体として機能し,大きな可動域と安定性が求められる.
そのなかで,重要な役割を果たすのが肩甲骨である.上肢は肩鎖関節部のみで体幹と連結しており,肩甲骨は胸郭上に浮遊し不安定な状態となっている.そのため,肩関節の問題として肩甲骨の動きが取り上げられることは多い.例えば,Kiblerら1)は肩甲骨の生理・力学・運動の制御不能を表す状態をscapular dyskinesis(SD)と表現し,さまざまな疾患と関連することを報告している.SDが障害の原因か障害の結果として生じるのかは双方考えられるが,肩関節障害において肩甲骨の動きが無視できない問題であることは明らかである.このような点から,肩甲骨に求められることは肩関節のさまざまな機能を維持するために胸郭上をうまく動くことである.本稿ではこの動きを肩甲骨の身体内滑走とし,これらの機能や問題について論述する.
*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年6月30日).
ヒトの上肢機能には,投げる・支える・持つなど,さまざまな場面で多様な機能が必要となる.そのため,肩関節は上腕骨,肩甲骨,鎖骨,脊椎,肋骨が複合体として機能し,大きな可動域と安定性が求められる.
そのなかで,重要な役割を果たすのが肩甲骨である.上肢は肩鎖関節部のみで体幹と連結しており,肩甲骨は胸郭上に浮遊し不安定な状態となっている.そのため,肩関節の問題として肩甲骨の動きが取り上げられることは多い.例えば,Kiblerら1)は肩甲骨の生理・力学・運動の制御不能を表す状態をscapular dyskinesis(SD)と表現し,さまざまな疾患と関連することを報告している.SDが障害の原因か障害の結果として生じるのかは双方考えられるが,肩関節障害において肩甲骨の動きが無視できない問題であることは明らかである.このような点から,肩甲骨に求められることは肩関節のさまざまな機能を維持するために胸郭上をうまく動くことである.本稿ではこの動きを肩甲骨の身体内滑走とし,これらの機能や問題について論述する.
*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年6月30日).
参考文献
1)Kibler WB, et al:Scapular dyskinesis and its relation to shoulder injury. J Am Acad Orthop Surg 2012;20:364-372
2)Inman VT, et al:Observations of the function of the shoulder joint. J Bone Joint Surg 1944;26:1-30
3)McClure PW, et al:Direct 3-dimensional measurement of scapular kinematics during dynamic movements in vivo. J Shoulder Elbow Surg 2001;10:269-277
4)村田 亮,他:肩甲骨関節窩の動的安定化機構としての機能について(第1報).肩関節2010;34:709-712
5)森岡 周:リハビリテーションのための神経生物学入門.pp97-104,協同医書出版社,2013
6)矢内利政:投球動作における体幹(骨盤・胸郭・肩甲骨)の3次元ムチ運動.体育の科学2011;61:484-490
7)Hodges PW, et al:Feedforward contraction of transversus abdominis is not influenced by the direction of arm movement. Exp Brain Res 1997;114:362-370
掲載誌情報