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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル56巻8号

2022年08月発行

雑誌目次

特集 住まいとくらし—理学療法士の環境づくり

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.884 - P.885

 障害者や高齢者の生活は毎日絶え間なく繰り返されており,理学療法の最終的な目的はそこにある.理学療法士は,環境整備だけでなく,人的にも時間的にも幅広い視点で評価し,予防し,指導し,くらしにかかわっている.本特集では,訪問や通所の事例を通して,現在の生活範囲やスケジュールといった生活状況,欠かせないサービス,生き甲斐,家屋環境や福祉用具などについて具体的に紹介するとともに,理学療法士の視点から,住宅と生活における問題を検証し,どうかかわり,どう導いたか,さらには将来を見据えた見解などについて述べていただいた.

脳卒中患者の住まいとくらし—軽度者と中重度者

著者: 桑山浩明

ページ範囲:P.886 - P.895

Point

●身体機能の予後予測も踏まえて,生活の予後予測も捉えていく

●本人や家族,そして地域の自立・自律を促し,暮らしやすい社会へ

●多様性の理解と創造性の必要性

高齢者二人暮らしの住まいとくらし—通所リハビリテーションを通して

著者: 佐藤博之

ページ範囲:P.896 - P.904

Point

●高齢者二人暮らしの増加に伴う高齢者二人暮らしをどう支援していくかが課題である

●サービス利用者の支援を行いながら,配偶者の支援の必要性が高い

●将来施設入所のケースが多いため,当初より施設に慣れておくことが大切

脊髄損傷者の住まいとくらし

著者: 延本尚也

ページ範囲:P.905 - P.913

Point

●脊髄損傷完全麻痺者(以下,脊損者)は,残存機能や動作能力,生活様式に応じた適切な環境設定を行うことで,ADLの自立や積極的な社会参加が可能となる

●適切な環境設定を行うためには,脊損者特有の動作方法を十分に理解しておく必要がある.特に,四肢麻痺かつ膀胱直腸障害を有する頸髄損傷者の場合には,トイレ環境の整備が重要となる

●福祉サービスを含めた実際の住環境,くらしを知ることで,眼前の脊損者の在宅・社会復帰支援に役立てることができる

障害児の住まいとくらし

著者: 中村信夫

ページ範囲:P.914 - P.922

Point

●障害児のくらしを支えるためには家族の休息の保障が必要であり,障害児通所支援はその一端を担っている

●F-words評価を用い,障害児の未来像について家族の思いと支援者の考えを擦り合わせることで,家族も支援者も同じ目標に向けて進むことができる

●子どもたちや家族の活動と参加を促進し,くらしをより豊かにするためには多職種・多施設での協働が効果的である

福祉用具・住宅改修と理学療法士の役割

著者: 白銀暁 ,   太田智之

ページ範囲:P.923 - P.929

Point

●理学療法士には,福祉用具・住宅改修の導入提案とその後のフォローアップに加えて,特に,制度を横断的に活用する際の「調整役」が期待されている

●自治体にとって「申請がない」ことは「必要がない」ことを意味するため,関連制度の適用に向けた積極的な取り組みが重要である

●関連制度の見直しには現場からのエビデンス(根拠)が求められているため,特に困難を経験した事例などについては学術論文(事例報告,症例報告など)として積極的に公表していく必要がある

高齢者・障害者の住まいと地域づくり

著者: 城岡秀彦

ページ範囲:P.930 - P.936

Point

●高齢者や障害者の暮らしは,住まいだけではなく地域ぐるみで考える必要がある

●近年,高齢者や障害者の生活を地域で支えるまちづくりの実現に向け,さまざまな取り組みが行われている

●地域づくりにおいても,高齢者や障害者の有する課題を見きわめ,情報を統合・解釈し,有効な対応策を見出すという理学療法士の専門性を発揮することができる

Close-up 急性期の退院支援—理学療法士だからこそのかかわり

退院支援に生かす動作・移動能力の予測

著者: 岩﨑寛之 ,   井上真秀 ,   藤野雄次 ,   高橋秀寿

ページ範囲:P.938 - P.941

はじめに

 急性期病院ではリハビリテーション開始後に直接自宅への退院が可能か,回復期リハビリテーション病院などへの転院が必要かを早期に判断することが求められ,自宅退院する場合には再発予防などに対するケアも理学療法の重要な責務である.

 自宅退院には歩行獲得が重要で,特に脳卒中は運動障害などを伴うことで要介護の主たる要因となる1).脳卒中の病型別における退院時の予後は,modified Rankin Scale(mRS)にてmRS 2以下まで回復するのは一過性脳虚血発作が93%,ラクナ梗塞73%,アテローム血栓性脳梗塞53%,心原性脳塞栓症40%,脳出血32%と報告され2),病型による差が示されている.

 一方で,病巣や損傷範囲によって神経学的重症度が異なることから,早期の歩行獲得を必ずしも病型で判断することはできない.また,神経学的重症度に加え,リハビリテーションの提供量やその内容,社会背景などの環境要因も自宅退院に大きく影響する.本稿では急性期病院から自宅退院し得る重症度とその予後予測,自宅退院に影響を与える環境要因について概説する.

高齢症例の退院支援—家族の介護力の評価

著者: 宮田千華 ,   森下誠也

ページ範囲:P.942 - P.945

急性期における退院支援の必要性

 急性期は疾患に対する治療がメインとなるため,リハビリテーションを主目的とした入院となることは少ない.しかし,高齢者は数日の入院であったとしても身体機能や活動性の低下を来す危険性がある1).そのため,患者の入院前の情報や退院後の生活に影響する介護力に関する情報収集について,いかにその内容に応じた支援内容の提案や理学療法プログラムの実施につなげるかが,早期退院と退院後の在宅生活継続のカギとなる.

再発・増悪・転倒の予防と退院前指導

著者: 松木良介

ページ範囲:P.946 - P.951

はじめに

 呼吸器,循環器,代謝疾患などの慢性疾患の急性増悪による入院では能力障害が軽微であることが多い一方で,退院後の疾病マネジメントが重要となる.最近,増加傾向である心不全は退院後の再入院率も高く,退院後のセルフケアが重要とされている1).近年は,入院期間の短期化が進み,入院期間中に心不全のセルフケア指導に費やせる時間は十分でない.限られた時間のなかで効率的に退院指導を行うには多職種連携が重要である.多職種連携においては,理学療法士だからこその指導ポイントと他職種とオーバーラップしながら指導を行う必要があるポイントがある.本稿では心不全の退院前指導について事例を挙げながら紹介したい.

連載 とびら

わからないと言える勇気と雰囲気

著者: 河野純子

ページ範囲:P.881 - P.881

 理学療法士になって20年以上が経ちました.最初の2年間は介護老人保健施設での勤務,その後急性期病院に戻り,集中治療(intensive care unit:ICU)病棟や呼吸器内科などの内科系疾患を中心に担当しました.2016年にはADL維持向上等体制加算を導入することになり,対象病棟である消化器内科病棟を2年,呼吸器内科病棟を1年,専従療法士として担当しました.その後再度ICU病棟配属となり,早期離床・リハビリテーション加算算定に向けた取り組みを行いました.

 数年ぶりに戻ったICU病棟は,手術や術後の治療スケジュールがかなり早くなっており,ベッドや多くの医療機器も変わっていました.顔見知りの医師や看護師も異動され,以前担当していたときよりもさまざまな点が異なっており大変戸惑いました.本当はすぐにでもSOSを出したい状況でしたが,職場ではベテランの立場となり,ICU病棟での経験もあるが故に,見知らぬ若い人々に「わからないから教えて」と言うことに躊躇しました.しかし初心に戻り,入職した当時に上司から言われた言葉を思い出しました.

画像評価—何を読み取る? どう活かす?・第8回

慢性閉塞性肺疾患

著者: 有薗信一 ,   片岡健介

ページ範囲:P.877 - P.879

症例情報

患者:69歳,男性

診断名:慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)

現病歴:3年前から自分のペースで平坦な道を歩いていても息切れするため,立ち止まることが多くなってきた.2か月前から,平坦な道を100m,あるいは数分歩くと息切れで立ち止まるようになり,当院を受診した.

既往歴:18〜66歳まで40本/日の喫煙歴あり.

身体所見:身長157cm,体重50kg,SpO2 94%,呼吸数16回/分,胸部聴診での異常音なし,呼気延長あり.

肺機能:FEV1/FVC 20.0%と閉塞性障害を認め,%FEV1は25.4%の最重症であるⅣ期.

理学療法のスタート—こうやってみよう,こう考えていこう・第8回

質問・相談をためらわないで—答えに気づきや解決法が/ネット検索だけじゃない疑問解決の方法

著者: 岩﨑武史

ページ範囲:P.953 - P.957

新人さんではない指導者の方へ

 COVID-19の蔓延により,臨床実習は大きく影響を受けました.実習の制約は,学生が理学療法士へ,新人が理学療法士へ変貌する過程で大切なことは何かを振り返るきっかけになったとも言えます.

 新人理学療法士の緊張と戸惑いの要因は,技術的なことや患者さんとの対話など,さまざまです.しかしCOVID-19に臨床実習の機会を制約された本人たちは,それ以前の新人との違いを実感することはできません.私たち現場指導者は,新人なら当然のことまで「実習経験量のせい」と捉えてしまうかもしれません.本連載は,入職1,2年目の新人理学療法士を応援すべく,日常の臨床で出会うエピソードを提示し,理学療法のおもしろさ・難しさ・ポイントを伝えたい,と企画しました.

臨床実習サブノート 退院後から振り返るゴール設定—推論を事実と照合して学ぶ・第3回

職場復帰 車椅子自立—胸髄損傷者

著者: 井上靖悟 ,   辻川将弘

ページ範囲:P.960 - P.966

 本稿では,臨床実習で限られた期間の経験しかできない学生にとって,症例の経過を振り返ることにより長期的な視点を補完し,回復期における実習で退院後を見据えたゴール設定ができるようになることを目的とします.

私のターニングポイント・第31回

出会いと別れ

著者: 宮沢規章

ページ範囲:P.952 - P.952

 私は現在,病院の回復期リハビリテーション病棟で勤務しています.これまでの理学療法人生には2つの転換期があります.

 1つ目のエピソードとして,新人1年目の冬,脳出血を発症した主婦の方を担当したときのことです.歩けば歩くほど,またADLが自立すればするほど手が曲がっていき,上肢機能に主要な問題を抱えていました.わずかながら動きはあるのに,「なぜ曲がってしまうのだろう?」と悶々としながら過ぎていく日々でした.そして「自分に何ができるだろう?」と悩む反面,「新人だから」といった言葉を理由に深く考えることからなかば逃げ出していた自分がいました.

My Current Favorite・5

人と組織の可能性を最大化するための「組織行動論」

著者: 江草典政

ページ範囲:P.959 - P.959

現在の関心事は?

 現在の私の関心事は「組織行動論」です.読者の多くは現場で理学療法を実践されていると思いますが,私は療法士長として1日の多くを組織経営に充てる役割にいるので「現場の医療スタッフを介して患者さんや地域に貢献する」という臨床スタイルです.組織は人と同じように性格や癖を有した“生き物”です.患者さんにも人生があるように,組織にも人生があり,性格や癖があります.そんなことに気づいてからこの難しくも面白い世界に引き込まれています.

 今回はそのなかでも現場の皆さんにも役に立つであろう「組織行動論」について紹介します.

報告

急性期脳卒中片麻痺患者において体幹機能は麻痺側上肢の使用頻度に影響を及ぼす

著者: 内海裕也 ,   高瀬広詩 ,   田上友希 ,   小倉理代 ,   松﨑和仁

ページ範囲:P.967 - P.972

要旨 【研究の目的】急性期脳卒中患者を対象に,麻痺側上肢の使用頻度に影響を及ぼす要因に関して,体幹機能を含めて検討すること.【方法】徳島赤十字病院に脳梗塞または脳出血の診断で入院し,各種評価結果を後方視的に抽出し得た51名を対象とした.Motor activity log amount of use(MAL AOU)における全評価項目の平均点を症例ごとに算出し,3以上を麻痺側使用群,3未満を麻痺側不使用群に割り付け,麻痺側上肢の使用頻度にかかわる要因を検討した.また,receiver operating characteristic curve(ROC曲線)を用いて,Trunk Impairment Scale(TIS)のarea under ROC curveを算出した.【結果】麻痺側上肢使用頻度に関連する要因として,多変量解析において,TIS(オッズ比:1.35,95%信頼区間:1.03〜1.76)が選択された.また,TISのarea under ROC curveは0.87(95%信頼区間:0.79〜0.95,p<0.01)であった.【結論】急性期脳卒中患者において,体幹機能は麻痺側上肢の使用頻度に影響を及ぼす独立した要因であることが示唆された.

症例報告

精神心理学的評価が左腓骨遠位端骨折保存療法後の複合性局所疼痛症候群の遷延する疼痛の訴えに有効であった理学療法の経験

著者: 上山淳 ,   佐藤浩之 ,   佐藤文哉 ,   平野弘之

ページ範囲:P.973 - P.978

要旨 【目的】左腓骨遠位端骨折の保存的治療中に複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)を続発し,CRPSで観察される徴候が改善したのにもかかわらず,受傷後半年にわたり疼痛だけが遷延した症例を経験した.疼痛遷延の原因に心因性素因があると考え,精神心理的評価を行い,その結果を踏まえた介入が有効だった.【症例】62歳女性.左腓骨遠位端骨折にCRPSが続発した.【経過】理学療法後も荷重時の疼痛が遷延し,精神心理的評価と精神心理側面に配慮したリハビリテーションアプローチを行った.【考察】CRPSには精神心理的側面や心理社会的側面が関与するといわれている.患者が自分の痛みを客観的に捉えるようにすることが大事である.そのために理学療法評価と精神心理的評価の結果を伝える一方で,医師やセラピストが痛みの改善の保証を与えるように心がけたことが有効だった.

重症新型コロナウイルス感染症肺炎の回復期理学療法においてベッド上での下肢エルゴメーターによる運動療法と深吸気練習が有効であった1例

著者: 佐々木順一 ,   武部晃平 ,   徳安宏和 ,   木下香織 ,   田邊翔太 ,   秦公平

ページ範囲:P.979 - P.983

要旨 【はじめに】重症新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)肺炎に対し,ベッド上でのエルゴメーター(以下,エルゴ)運動と容量型インセンティブ・スパイロメトリー(incentive spirometry:IS)を用いた深吸気練習を回復期理学療法で行い,職場復帰に至ったので報告する.【症例】糖尿病,肥満のある54歳男性.発熱で発症しポリメラーゼ連鎖反応検査にてCOVID-19と診断された.入院後,急激に呼吸状態が悪化し,長期人工呼吸管理となった.発症から14日目に理学療法開始.発症後67日目に人工呼吸器離脱となったが,intensive care unit-acquired weaknessと後遺症によるめまいのため離床に難渋し,ベッド上でのエルゴ運動を実施.めまいの軽減に伴い,離床が進み発症後107日目に自宅退院となる.退院後も外来理学療法を継続し,容量型ISでの深吸気練習を8週間実施した.【結果】呼吸機能の改善に伴い,身体機能の改善を認め発症後198日で職場復帰に至った.【考察】重症COVID-19肺炎の理学療法において,ベッド上でのエルゴ運動と容量型ISを用いた深吸気練習は有用である可能性が示唆された.

臨床のコツ・私の裏ワザ

ドローインにおける腹横筋の収縮効率向上のためのコツ

著者: 有吉悠

ページ範囲:P.984 - P.985

ドローインを実施してきて感じたこと

 腹横筋は体幹を安定させる重要な筋の一つです.腹横筋の起始は第7〜12肋軟骨・胸腰筋膜・腸骨稜内面・鼠径靱帯,停止は剣状突起・白線・恥骨になります.腹横筋は,下位肋骨を下方に引き下げ,両側性に働くことで腹囲減少および腹圧上昇を生じさせ,胸腰筋膜と前方の筋膜を緊張させる作用を有します.

 腹横筋の収縮機能低下に対し実施される運動として,一般的に「ドローイン」が認知されています.腹横筋の収縮機能が低下している対象者へ,深呼吸を利用し呼気時に腹部を凹ませるような意識的な指示および運動を実施していますが,なかなか腹横筋の収縮機能を引き出しづらい,または感じ取りづらいという困難さを感じていました.そこで,より効率よく腹横筋の収縮を促せるドローインのコツはないか模索したところ,以下のような方法が有効だと考えました.

書評

—斎藤和夫,飯塚照史,下田信明(編)秋山洋輔(編集協力)—「—動画で学ぼう—PT・OTのためのハンドセラピィ[Web付録付]」

著者: 網本和

ページ範囲:P.958 - P.958

 あるとき評者は,深酒のあと家路につき硬いカバンを肘伸展位で押さえながら,電車で90分ほど爆睡してしまったことがありました.危うく最寄り駅を寝過ごす寸前で目覚め急いで電車から立ち上がり降りようとしたときカバンを取り落としてしまったのです(!!).右手関節が背屈できないためでした.いわゆる圧迫による橈骨神経麻痺だったのでしょう.翌日になっても手背のしびれと背屈困難が続き,もとの職場の手の外科外来で診てもらい,対処法は背屈保持のスプリントでした.そのとき初めて作業療法士の先生にお世話になり,プラスティックを自在に操り素早くぴったりのスプリントを作成してもらい,数週間後に回復したのです.そのときの見事な職人技は今でも忘れることができません.PT・OTはその治療において文字どおり「手」を使って,さまざまな障害や困難に対して対応しています.その「手」が使えなくなったら,まさにお手上げです.さまざまな疾病,外傷などによって起こる「手=ハンド」の治療に特化したのがハンドセラピィと言えます.

 斎藤和夫先生,飯塚照史先生,下田信明先生の編集による本書『動画で学ぼう PT・OTのためのハンドセラピィ[Web付録付]』はそのようなハンドセラピィについてわかりやすくしかし詳細に解説された,一言でいうと「美しい」書籍です.「機能解剖」に始まり,「評価」,「治療」,「症例」の各章で構成され,加えて「ハンド」にまつわるショートストーリーが「コラム」欄で語られます.一つだけ内容を紹介するとすれば,「ROM測定」,「筋力測定」,「感覚検査」など基本的な評価項目の解説の前に「ハンドセラピィ評価」が置かれていることが類書にないユニークさを際立たせています(「ハンドセラピィ評価」って何? と興味をもたれた方はぜひ本書をご覧になってみてください).

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目次

ページ範囲:P.882 - P.883

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.913 - P.913

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.988 - P.989

編集後記

著者: 金谷さとみ

ページ範囲:P.990 - P.990

 医師不在の地域では経験を積んだ訪問看護師が重宝されますが,実は理学療法士も経験豊富な人材が求められています.「維持期」とは,あくまでも発症してからの病期別分類であり,その対象者が安定しているという意味ではありません.予防と急性期と慢性期が混在し,患者を取り巻くさまざまな要素を踏まえて総合的に考え,その判断に基づいて理学療法を提供する必要があり,場合によっては中心的な立場に置かれ,他職種にアドバイスすることも多く,簡単ではありません.

 今回の特集は「住まいとくらし—理学療法士の環境づくり」であり,主に地域で活躍する先生方の取り組みです.一見すると理学療法とかけ離れているようにみえるこれらの取り組みが,実はきわめて理学療法的な発想から生まれているという点に着目してお読みください.桑山論文では,脳卒中患者が自宅で新たな生活をスタートする際に,理学療法士が本人や家族に寄り添い,身体だけでなく心の動きに合わせている様子もあり……,そこに専門性を感じます.佐藤論文では老々介護の要介護高齢者の生活の様子が紹介されています.一口に「退院支援」と言っても,よりよい生活に行き着くためには,多くの人間が繰り返し,かつ長きにわたってかかわる必要があるとわかります.優しくなければ続きません.延本論文からは,脊髄損傷者の心身機能を十分に把握している理学療法士だからこその細やかな支援が伝わります.中村論文からは,重症児デイサービスの管理者という立場から,障害児の心身だけでなく,家族とのかかわり,さまざまな社会背景など,すべてを包み込んで子どもたちの成長を見届けている様子が伺え,感銘を受けます.白銀論文では,理学療法士の役割について,住宅改修や福祉用具の導入提案だけでなく,制度を横断的に活用する際の「調整役」として……,という言葉が新鮮に感じられました.城岡論文では,障害者や高齢者の生活は住まいだけでなく町ぐるみで考えるもの,ということをシンガポールでの経験を踏まえ,より具体的にお書きいただきました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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