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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル57巻1号

2023年01月発行

雑誌目次

特集 多様化する急性期理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.4 - P.5

 2014年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法律)によって制度化された「地域医療構想」は,将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数を4つの医療機能ごとに推計し,病床の機能分化と連携を進め,効率的な医療提供体制を実現する取り組みである.4つの医療機能の1つである高度急性期では早期リハビリテーションの推進が期待されており,急性期理学療法においても新たな役割や扱うべき新しい課題が誕生している.本特集では,急性期病院での理学療法士の役割が広がるなかで,変化の著しい急性期理学療法の多様化についてまとめた.

—エディトリアル—多様化する急性期理学療法

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.6 - P.11

地域医療構想と病床機能の変更

 日本における少子高齢化,総人口の減少,人口構造の変化(特に生産年齢人口の減少)の問題は,医療制度の持続可能性に大きな影を落としている.団塊の世代が75歳以上を迎え,後期高齢者数が大きく膨れ上がり,医療・介護・福祉など社会保障費が増大するとされる2025年,そして,生産年齢人口が急減する一方で高齢者数がピークを迎える2040年には,医療の需給バランスはさらに崩れるとされ,それらを見据えた検討が進められている.

 人口構造の変化には地域格差があることから,地域の医療需要に応じた医療提供体制の整備が求められ,2014年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」に基づく,「地域医療構想」が制度化されている1).地域医療構想は,将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床推計から,病院を4つの医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)に分け,病床の機能分化と連携を進め,効率的な医療提供体制を実現する取り組みである(図)1).2021年10月時点で,二次医療圏(一般の入院に係る医療を提供することが相当である単位)を1つの構想区域とし,335ある各構想区域で高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4機能ごとに医療需要と病床の必要量を推計し,地域における必要な医療機能や病床を確保するとされている.そのため,地域医療構想調整会議の議論によっては,理学療法士の勤務する病院が病院機能を転換したり,ほかの医療機関と再編統合したりする結果,診療密度が特に高い医療を提供する高度急性期機能病院で勤務することになるかもしれない.

救命救急集中治療室における早期離床・リハビリテーション

著者: 松嶋真哉

ページ範囲:P.12 - P.19

Point

●早期離床・リハビリテーション加算の算定要件が拡大され,集中治療室において理学療法士の需要が増加することが予測される

●加算を利用し早期離床・リハビリテーションを充実させるためには,多職種で構成されたリハビリテーションチームの形成,成熟が必要である

●多種多様な集中治療室の患者に対応するために,専門資格の整備や教育体制の充実など,理学療法士の質保証が優先課題である

小児集中治療室(PICU)における早期離床・リハビリテーション

著者: 熊丸めぐみ

ページ範囲:P.20 - P.25

Point

●重症小児に対する早期リハビリテーションの安全性は確認されているが,効果についてはいまだ不明な点も多い

●小児には発達の臨界期があること,身体的な機能障害がその後の発達や精神・心理面などに影響を及ぼす可能性があることを考慮すると,重症小児に対する早期リハビリテーションは大変重要な役割をもつ

●小児集中治療室(PICU)退室後の生活を考慮しながら,個々の成長発達段階に合わせたリハビリテーションを多職種チームで提供していくことが重要である

熱傷センターにおける早期離床・リハビリテーション

著者: 久保貴嗣 ,   大須賀章倫

ページ範囲:P.26 - P.35

Point

●広範囲熱傷・気道損傷患者の病態,病期の理解が重要となる

●広範囲熱傷・気道熱傷患者への理学療法により呼吸器合併症,関節拘縮,瘢痕形成を予防し日常生活活動を維持できる可能性がある

●日本熱傷学会より2021年に「熱傷診療ガイドライン 改訂第3版」が公開された.ガイドラインを活用した質の高い診療・リハビリテーションが求められる

プレハビリテーション—がんの外科領域

著者: 井上順一朗

ページ範囲:P.36 - P.43

Point

●がんに対する胸腹部手術ではさまざまな術後合併症を発症するリスクが高い

●高齢がん患者では,術前より老年症候群やフレイル,サルコペニアを有している可能性が高く,術後合併症のリスクがさらに増大する

●がん周術期では,多職種医療チームによる周術期管理やプレハビリテーション,リハビリテーションが重要である

プレハビリテーション—整形外科領域

著者: 和田治 ,   飛山義憲

ページ範囲:P.44 - P.49

Point

●人工膝関節全置換術のプレハビリテーションは術前エクササイズ(preoperative exercise)と術前教育(preoperative education)から構成される

●術前エクササイズでは,大腿四頭筋筋力と可動域の改善を目標としたエクササイズ指導を実施する

●術前教育では患者の手術に対する期待値の調整や,術後のイメージ,退院後の生活に関しての患者理解を深めることを目的とする

プレハビリテーション—心臓外科術

著者: 阿部隆宏

ページ範囲:P.50 - P.55

Point

●わが国における心臓外科術件数は年々増加しており,なかでも高齢患者が増加している

●プレハビリテーションは,術前に身体機能向上を図ることで手術侵襲による影響を最小限にし,心臓外科術後の回復を促す手段である

●高齢患者はフレイルを高率に合併するが,フレイルを合併した高齢患者に対するプレハビリテーションのエビデンスは十分ではなく,これからの課題である

急性期遠隔理学療法

著者: 青山大輝 ,   池松幸二 ,   霜田晃佑 ,   宮本亮 ,   石井宗吾郎

ページ範囲:P.56 - P.62

Point

●遠隔リハビリテーションはさまざまな疾患に対して有益であることが検証されている

●新型コロナウイルス感染症患者に対する急性期遠隔リハビリテーションの有効性を示唆する報告が存在する

●遠隔理学療法は今後のリハビリテーション領域の発展に貢献することが期待できる

急性期病院での労務管理・メンタルヘルス・ハラスメント対策

著者: 平田和彦

ページ範囲:P.63 - P.69

Point

●急性期病院においては早期リハビリテーション治療によってpatient flow management(PFM)の改善を図ることが重要である

●キャリアラダーは,人事制度と結びつけることで明確なキャリアアップを提示でき,職員の意欲を向上させる

●管理職は,職員一人ひとりの「働きがい」に目を向け,職員が最高のパフォーマンスを発揮できるよう日々支援していく必要がある

—Topics—急性期病院でのゲーミフィケーション応用の可能性

著者: 澤龍一 ,   齊藤正和

ページ範囲:P.70 - P.73

Point

●ゲーミフィケーションとは「モチベーションの向上」と「継続性の促進」を促すデザイン手法の一つである

●アクティブビデオゲームを活用した運動療法の有用性検証が研究ベースで進んでいる

●入院関連能力低下を予防するためにはリスクを考慮したうえで身体活動を促す必要があり,アクティブビデオゲームを応用できる可能性を模索中である

Close-up パラリンピックブレイン

パラアスリートの脳研究

著者: 中澤公孝

ページ範囲:P.76 - P.80

はじめに

 筆者の研究グループは,「パラアスリートの脳は神経リハビリテーションの最良モデルである」との視点からパラアスリートの脳の特異性と,それをもたらす神経メカニズムについて研究している.

 オリンピック選手に代表されるエリートアスリートの脳構造・脳機能に特異的な適応が観察されることは旧知の事実であった1).しかしパラアスリートに関しては多くの研究者の注目を集めることがなく,ましてやニューロリハビリテーションとの関連からこれを取り扱う研究は筆者が知る限り皆無であった.

 パラアスリートは例外なく何らかの障害を有する.障害は先天性にせよ,中途にせよ,中枢神経系内に障害由来の可塑的変化を誘導する.この点において,障害がないアスリートと障害があるアスリートには決定的な違いがある.すなわち,パラアスリートの脳においては,傷害由来の可塑的変化と競技トレーニング特異的な可塑的変化があいまって,障害がないアスリート以上に特徴的な変化が中枢神経系内に生じると考えられる.それらの長期にわたる相乗作用の結果が障害特異的かつ競技特異的な脳再編として表出するのであろう.

 さらに,パラアスリートにみられる脳再編は,競技パフォーマンスを最大化するための限界に近い身体トレーニングに加え,勝利や記録突破をめざす高いモチベーションが強く影響していることが容易に想像される.これらがいかなる神経メカニズムのもとに生じるのかを解明することは,リハビリテーションにおいて,より効果的,効率的な機能回復を促す介入法の開発につながるのである.

 リハビリテーションへの再生医療の本格的導入がまさに始まろうとする今日,人間の中枢神経が本来有する再編能力をいかに引き出すのか,この課題解決に向けた基礎研究を加速することが急務と言える.このような視座に立つとき,パラアスリートの脳が神経可塑性とそれを基盤とする神経再編能力を実証する存在であることに気がつく.パラリンピックブレインの表出形は障害特性,競技特性に応じて多様であるが,その背後には統一的な原理が存在するはずである.それを探究することこそ,パラリンピックブレイン研究の本質的意義と言える.

 本稿では,筆者らが近年研究対象としてきたパラアスリートのなかから,パラリンピックスイマーの例を取り上げ,水中環境での運動能力と陸上での運動能力の相違,そしてそれをもたらす神経機序についての仮説を述べる.さらに,その仮説に基づいて実施された脳卒中片麻痺患者のニューロリハビリテーションの例についても紹介する.

パラアスリートにみるヒト脳の適応可能性—理学療法士の立場で考える

著者: 中西智也

ページ範囲:P.81 - P.86

はじめに—ヒト脳適応可能性は未知なるままである

 障害からの機能回復を実現するためには,残存した脳領域や経路の可塑性を最大限に発揮させ,新たな神経ネットワークを再構築する必要がある.しかし,どの経路がどの程度可塑性を有し,かつ後天的に新しい機能を獲得し得るかは,実は一部しか明らかになっていない.すなわち,障害後にどのような神経ネットワークを再構築すれば,最大限の機能回復が実現できるかという神経学的な根拠,およびその方法論は依然,学術的に確立していないのが現状である.ニューロリハビリテーションの理論は発展してきたものの,まだ序章に過ぎない.本稿では,実際の脳損傷者やパラアスリートの脳画像データをもとに,脳適応の多様性と研究の現在地,今後の展望について述べる.

連載 とびら

一人の人間としての自分が理学療法士であるということ

著者: 三浦正徳

ページ範囲:P.1 - P.1

 私が理学療法士として勤めるようになって四半世紀が過ぎた.私が初めて理学療法の現場に触れたのは,養成校1年次の見学実習である.真冬の雪深い時期だった.交代浴療法の冷水をつくるため,スコップを持ち外の雪をバケツいっぱいに入れた指導者が「理学療法士は白衣の土方」と笑いながら話してくれたのが懐かしい.「理学療法士は知恵と熱意と創意工夫で使えるものはすべて使い,汗をかいて治療にあたる」,そんなことを伝えてくださったように思う.私が学生から新人期を過ごした1990年代中頃〜後半は,まだ,どこかそんな牧歌的空気が流れる時代だった.それから考えると,今の理学療法士を取り巻く環境の変化には隔世の感を覚える.

 今や理学療法士が理学療法士として活躍できる場や機会は各段に広がった.医療機関や各種施設,教育機関で働くのはもちろんのこと,地域での活動もあれば行政で働く人もいる.起業をする人も増えた.それに伴い,理論的枠組みの発展や領域知識,知見の進歩もめざましい.書店には理学療法に関連する多くの本が並び,インターネット上には情報が溢れる.その点では,25年前とは比較にならないほど充実している.

「経営者」の視線・第1回【新連載】

私が中・大規模病院の理学療法科のトップに任命されたら—組織マネジメント,経営の定石を起点に

著者: 山根一人

ページ範囲:P.88 - P.89

はじめに

 筆者は1990年に株式会社アール・ケアを創業し約33年間,経営に邁進してきた.介護保険事業全般を行うなかで,現在の弊社のリハビリテーション専門職は,約85名.総社員数は430名超となる.「経営者の視線」,「経営に必要なこと」を語れば数十時間は必要となるため,本稿では筆者が中・大規模病院の理学療法科のトップに任命されたと仮定し,組織運営の概要のみに触れ,要所で具体列を列挙してみる.

臨床研究のススメ—エビデンスを創ろう・第1回【新連載】

臨床研究の誕生

著者: 山科俊輔

ページ範囲:P.90 - P.93

はじめに

 理学療法の臨床判断方法の1つにevidence based medicine(EBM)という考え方がある.EBMは“医療上の判断根拠を生物医学的知識/病態生理”や“経験豊富なエキスパートあるいは大学教授などの権威者の個人的な意見”よりも“臨床研究論文の結論”を重視し,目の前の対象者に最良の医療を提供することとされている1)

 近年,米国では臨床研究を蓄積することにより,ガイドラインにおける理学療法の推奨度が高いものとなっている2).2021年に刷新された日本理学療法士協会監修の理学療法ガイドライン第2版の一部では,いくつかのステートメントにおいて,「理学療法により有意な改善がみられるが文献数が少なく判断できない3)」といった文言もある.今後,理学療法の治療水準を担保していくためにも,臨床研究の知見からガイドライン策定につなげていく必要がある.まさに,臨床家が臨床研究を実施していくことが必須の課題と言える.本稿では,臨床研究を着想する際のポイントについて解説する.

臨床に役立つアプリケーション活用術・第1回【新連載】

動作分析アプリ Kinovea

著者: 多米一矢

ページ範囲:P.94 - P.95

 近年,動作分析アプリケーション(以下,アプリ)は数多く普及しており,従来に比べるとより簡易的に動作分析が行えるようになった.また,スマートフォンやタブレット端末で瞬時に分析結果を表示できるため,臨床現場のみならずスポーツ現場でも取り入れられ,より身体機能と障害の因果関係を把握することができるようになってきた.本稿では,臨床や研究に使用しやすい動作分析アプリKinoveaについて紹介する.

臨床実習サブノート 退院後から振り返るゴール設定—推論を事実と照合して学ぶ・第8回

在宅復帰 歩行外出自立

著者: 古川美緒子 ,   渡邊慎平 ,   高野義隆

ページ範囲:P.96 - P.101

患者 川邊美恵さん(仮名),70歳台,女性.

病歴 X年Y月Z日,脊髄梗塞を発症.左下肢麻痺,右下肢感覚障害,神経因性膀胱あり.既往歴には高血圧,脂質異常症,骨粗鬆症がある.

家族構成 夫はすでに他界し,長女と二人暮らし.長男家族は市内に在住している.

入院前の生活 車の運転をしており,ジムでのトレーニングを日課としていた.外出する機会が多く,デパートでのショッピングや,友人とのランチなど,好きなことを楽しみながら活動的に過ごしていた.

現在の生活 新潟リハビリテーション病院(以下,当院)回復期リハビリテーション病棟でのリハビリテーション後,自宅へ退院し2年が経過した.日常生活は自立しており,簡単な家事を行えるようになった.一人でショッピングに行けるようにもなった.

私のターニングポイント・第36回

出会いと体験によるパラダイムシフト

著者: 唐木大輔

ページ範囲:P.87 - P.87

 「唐木さんの患者有名になってるよ」,「いつまでたっても荷重がうまくできないって」.

 臨床2年目の秋,近隣の回復期リハビリテーション病院に勤める理学療法士養成校時代の同級生から言われた言葉だ.

My Current Favorite・10

行動経済学でスタッフ・患者が能動的に動ける環境づくり

著者: 久川裕美子

ページ範囲:P.102 - P.102

現在の関心事は?

 私の最近の関心事は行動経済学です.人間の「心の動き」から,意思決定プロセスや行動を分析しよう,という学問です.経済に関連する学問ですが,心理学が基礎となっているため,「人がどう(主体的に)動くか」をテーマにしているわれわれの仕事にはヒントになることも多いと思います.無意識に臨床現場で実施していることにも,実はもうすでに理論的な背景がきちんとある,ということも知りました.私は中間管理職でもあるので,スタッフが能動的に動ける環境づくりを行うためにも,必要な学問なのではないかと感じています.

報告

腰痛患者のドローイン動作における腹横筋と内腹斜筋の筋厚変化率

著者: 池田俊史 ,   吉川優樹

ページ範囲:P.103 - P.107

要旨 【目的】超音波画像診断装置を使用し,腰痛患者のドローイン動作における腹横筋・内腹斜筋の動態を検討することを目的とした.【方法】対象は腰痛群18名,健常群17名で,腰痛群は3か月以上腰部に痛みが持続している,もしくは軽減と増悪を繰り返している状態とした.測定筋は腹横筋と内腹斜筋とし,測定には超音波画像診断装置を使用した.プローブの位置は前腋窩線における肋骨縁と腸骨稜の中央部とし,安静吸気終息時とドローイン時の腹横筋と内腹斜筋の左右の筋厚を計測した.運動課題は ① 安静吸気,② ドローインとし,ドローインは「息を吐きながらお腹を凹ませてください」と指示した.【結果】両群で安静時およびドローイン時の筋厚に有意差はみられなかった.腰痛群では腹横筋の筋厚変化率が有意に小さく(p<0.05),内腹斜筋の筋厚変化率が有意に大きかった(p<0.05).【結論】慢性腰痛患者のドローインでは腹横筋の筋活動が低下し,内腹斜筋が優位に働いており,腹横筋の選択的収縮は十分に行えていないと考えられた.

症例報告

回復期脳卒中患者に対する末梢神経電気刺激とGame-Based Exercisesの併用がバランス能力に与える影響—ABABデザインを用いた1症例での検証

著者: 奥野博史 ,   渕上健 ,   北裏真己

ページ範囲:P.109 - P.112

要旨 【目的】本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間の末梢神経電気刺激(peripheral nerve stimulation:PNS)とGame-Based Exercises(GBEs)の併用がバランス能力に与える影響を検討することである.【方法】脳卒中患者1名を対象に,ABABデザインを用いた.A期はGBEsのみを20分実施し,B期は1時間のPNS後にGBEsを20分実施した.主要な評価はMini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest)を行い,各期前後で比較した.【結果】GBEsのみを行ったA期に比べ,PNSを先行したB期においてMini BESTestの改善が大きかった.【結論】1時間のPNS後にGBEsを行うことで,GBEsの効果を高め,バランス能力を向上させる可能性を示唆した.

紹介

結核に対する理学療法の紹介

著者: 垣内優芳 ,   片岡紳一郎 ,   筧哲也 ,   田中利明 ,   西原賢在

ページ範囲:P.113 - P.114

はじめに

 新型コロナウイルス感染症は,2019年から世界中で深刻な問題をもたらし,わが国においても緊急事態宣言が発出されるなどの流行状況が続いている.この新たな感染症に対する対応が世界中で続くなか,昔から知られている結核は,感染症法で2類感染症に位置づけられ,治療薬が存在するものの今もなお終息していない.神戸市立西神戸医療センター(以下,当院)は新型コロナウイルス感染症の受け入れ病院であるとともに,神戸市唯一の結核指定医療機関で,病床数475床中50床の該当病棟を有している.

臨床のコツ・私の裏ワザ

テニス肘に対する他関節からの運動療法

著者: 岡村俊

ページ範囲:P.116 - P.117

テニス肘に対する肩甲帯の運動療法

 過去にテニス肘の症例に対する他関節からの評価のコツを投稿しました1).今回はその評価からどのような運動療法を実施しているか紹介します.

 テニス肘に対するストレステストを行い,肩甲骨を固定して疼痛軽減・消失がみられた場合には肩甲帯の安定性向上を目的とし,運動療法を行います.代表的な運動療法として弱化しやすい僧帽筋中部・下部線維に対して図1aのような運動を行います.肩関節外転外旋位の状態で肩甲骨内転運動を行うことで収縮を促すことができます.また肩関節の安定性を高めながら上腕筋の運動療法を行う方法は図1bのように運動を行います.壁などに肘関節を当て,壁を押すことで前鋸筋の筋活動を高めながら前腕回内位での肘関節屈曲運動を行います.なお上腕筋の運動をする際は手関節背屈による代償運動が生じないように注意します.

書評

—木村彰男(監修)辻 哲也(編)水野勝広,村岡香織,石川愛子,川上途行(編集協力)—「リハビリテーションレジデントマニュアル 第4版」

著者: 山口智史

ページ範囲:P.75 - P.75

 神経疾患,整形外科疾患,内部疾患,悪性腫瘍など多種多様な疾患において,どのようなリハビリテーションが必要なのか? 最良のリハビリテーションを提供するには,どのような知識が必要なのか? 本書では,そういった不安や疑問を,日本のリハビリテーション医学・医療を牽引してきた慶應義塾大学リハビリテーション医学教室に携わるリハビリテーション専門医が明確にポイントを示しながら,図表とともにわかりやすく解説している.

 監修を務める木村彰男先生が序文で述べられているように,近年の医学・医療では,医療制度の改定により,疾患ごとの治療法や治療期間が制限され,画一的な医療が提供されるようになった.これはリハビリテーション医学・医療においても同様であり,日常生活動作の早期獲得のみを目的とした,生活動作の反復練習を主体としたリハビリテーションを目の当たりにすることがある.当然,生活動作の反復は重要であり,日常生活の自立度を高めるために必要である.しかしながら,リハビリテーション医学・医療の治療は,動作反復だけでよいのだろうか?

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.19 - P.19

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.120 - P.121

編集後記

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.122 - P.122

 理学療法ジャーナル第57巻第1号をお届けします.

 2024年4月に行われる,診療報酬,介護報酬,障害福祉サービス等報酬の同時改定,いわゆるトリプル改定の議論が各所で進んでいます.政府一般会計に占める社会保障関係費の割合は最も大きく,新型コロナウイルス感染症による経済損失もあいまって,社会保障関係費の増加抑制は待ったなしです.健康で医療や介護を必要としないことや,病気やけがをしても早期に在宅復帰や社会復帰する(納税者に戻る)ことができれば,結果的に医療・介護費用の増加を抑制することにつながることから,急性期病院での理学療法の重要性がますます高まっています.今後,急性期病院では365体制が確立し,理学療法士の働く場は本特集で挙げた救命救急集中治療室や小児集中治療室(pediatric intensive care unit:PICU)などにも拡大し,病棟の理学療法士フォーメーションは大きく変化していくことでしょう.早期退院,社会復帰のためには,術前理学療法(プレハビリテーション)も重要で,理学療法は後療法という時代は忘却の彼方となりました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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