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特集 疾病・介護予防のための運動療法
—エディトリアル—疾病・介護予防のための運動療法の基礎
著者: 白谷智子1
所属機関: 1苑田第二病院
ページ範囲:P.1394 - P.1396
文献購入ページに移動運動療法は運動器だけでなく,心肺,免疫,代謝,認知などさまざまな機能に対して効果をもつことが明らかになってきた.それは機能の改善だけでなく,予防の効果もある.
運動不足によりインスリンシグナル伝達が抑制され,インスリンの血糖値低下作用が効きにくい状態(インスリン抵抗性)になる.そして組織内に脂質が過剰に蓄積することにより,脂肪毒性により細胞内ストレスや慢性炎症を引き起こす1).その結果,炎症経路のネットワークが活性化され,インスリン抵抗性,アテローム性動脈硬化症,神経変性の発症や腫瘍増殖を促進し,さらに2型糖尿病,心血管疾患,大腸癌,乳癌,認知症などの「運動不足の疾患群」の発症につながることが示唆されている2).運動不足による筋力の低下とインスリン抵抗性低下が同時に起こる1)と,相乗的に無症候性ラクナ梗塞のリスクが高まる3).また,2型糖尿病患者が高齢になると認知機能障害の危険性が高まる4,5).これらを踏まえると,「運動不足の疾患群」の発症を予防することが重要と考えられる.運動は抗炎症効果があることが推測されており,これら疾患予防の効果に期待が高まる.
以下に抗炎症効果を発揮するメカニズムを理解するための基礎をまとめた.
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