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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル57巻2号

2023年02月発行

雑誌目次

特集 嚥下機能に着目した理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.126 - P.127

 食事は,栄養摂取し生命を維持するだけでなく,食べる楽しみ,社会的つながりなど,心理的・文化的にも意義深い活動である.それを支える嚥下運動は,食物を口腔に取り込み,咀嚼し食塊を咽頭へ移動し,嚥下反射で消化器へ送り込む複雑な機能連携から成り立ち,その障害は低栄養・誤嚥性肺炎の直接の原因となる.嚥下運動に影響する因子には姿勢・呼吸・筋力などが含まれ,理学療法士がかかわる機会も増えている.多職種アプローチとしての嚥下リハビリテーションと,嚥下機能への理学療法の取り組みをまとめる.

嚥下機能と全身機能の関連—誤嚥のメカニズム

著者: 杉山岳史

ページ範囲:P.128 - P.135

Point

●世界規模での高齢化の進行に伴い摂食嚥下機能障害患者の急激な増加が見込まれている

●誤嚥性肺炎の発症要因は,咽頭機能のみに依存せず認知機能,栄養状態,ADLとも関連する

●間接嚥下練習に該当する理学療法は,頸部周囲の機能だけでなく基本動作能力の改善により摂食嚥下機能を改善させる

フレイルとオーラルフレイル

著者: 長谷川翔平 ,   戸原玄

ページ範囲:P.136 - P.141

Point

●全身のフレイルには栄養・口腔の問題がかかわっている

●オーラルフレイルは,一状態ではなく,健康な状態から要介護状態になるまでのすべての過程を含む

●開口運動,顎引き運動,舌抵抗運動などの実施しやすい口腔周囲筋力トレーニングがある

摂食嚥下機能とチームアプローチ

著者: 森光大

ページ範囲:P.142 - P.149

Point

●多職種がそれぞれの方向から,本人の「できること」と「できないこと」,「それらのレベル」をアセスメントする

●食環境・姿勢・自助具・食形態・介助方法などをセットでプランニングする

●対象者の幸せをめざして,好きな食べ物が食べられるように多職種で検討と工夫を繰り返すことが重要である

嚥下機能に着目した理学療法評価

著者: 久保高明 ,   宮本明

ページ範囲:P.150 - P.155

Point

●嚥下機能評価は,理学療法評価と共通するものが多い

●フィジカルアセスメントやスクリーニング検査でおおよその嚥下機能を把握する

●場所を問わず評価できることは非常に大事である

嚥下機能に着目した理学療法—嚥下関連運動機能

著者: 吉田剛

ページ範囲:P.156 - P.163

Point

●嚥下筋の活動は姿勢や呼吸,頸部・体幹機能の影響を受けるため全身的な視点で評価する

●頸部周囲筋の筋緊張を整え,全身機能を改善することで嚥下の局所機能の改善を図る

●嚥下筋の働きを運動学的に捉えた運動療法を構築し,嚥下チームに貢献していく

嚥下機能に着目した理学療法—姿勢と呼吸

著者: 内田学

ページ範囲:P.164 - P.170

Point

●摂食嚥下リハビリテーションにおける理学療法士の役割は,食事を摂取している環境のなかで適切な姿勢を保持させるための介入である

●不良姿勢と嚥下障害には密接な関係性があり,実際に食事を摂取している環境のなかでは多くの不適応が生じている可能性がある

●嚥下理学療法は,摂食嚥下リハビリテーションの土台をなしており,多職種連携にも参画しなければならない

嚥下機能に着目した在宅理学療法—評価と実践

著者: 高橋浩平 ,   高橋萌

ページ範囲:P.171 - P.178

Point

●在宅要介護高齢者では嚥下障害を伴っていても,嚥下評価や介入が不十分なことがあるため,多職種と連携しながら嚥下機能に対する評価,介入をしていく必要がある

●日々の観察や嚥下スクリーニングで嚥下障害が疑われた場合,嚥下機能を阻害する因子などを評価する

●理学療法は嚥下機能の改善に有用であることが示されているため,姿勢や呼吸,身体機能などの視点から嚥下機能に介入する

嚥下機能と栄養—予防理学療法

著者: 原山永世 ,   鈴木裕也

ページ範囲:P.179 - P.186

Point

●嚥下障害の原因は多岐にわたり,多職種で適切な評価が重要である

●運動療法では,運動に伴うエネルギー消費が生じる.嚥下障害の状態に合った栄養療法を適切に検討し,不適切な栄養管理にならないようモニタリングする

●サルコペニアやオーラルフレイルによる嚥下障害に対する栄養療法や運動介入の予防的理学療法のエビデンスが蓄積され始めた.エビデンスに基づいた理学療法士の積極的な関与が期待される

Close-up 運動制御

筋シナジーと運動制御

著者: 神﨑素樹

ページ範囲:P.188 - P.193

冗長自由度の簡略化

 われわれが何気なく行っているさまざまな身体活動は,実はきわめて複雑な運動制御の結果達成されている.ヒトは身体活動を形成するために必要な空間自由度よりも多い関節自由度をもち,関節運動を生む筋はさらに膨大な自由度を有している.このような冗長多自由度がわれわれの多様かつ柔軟な身体活動に必要であることは言うまでもない.

 では,ヒトはいかにしてこのように膨大な自由度を制御し,多様な環境にも適応できる運動を生成しているのであろうか.このベルンシュタイン問題下で中枢神経系が個々の筋に逐一指令を送っていると,処理すべき情報量が膨大となる.そこで,いくつかの筋をまとめて支配する神経制御機構である筋シナジーという概念が提唱された1).中枢神経系は個々の骨格筋に対して直接骨格筋ではなく,複数の筋をまとめた少数の筋シナジーに運動指令を送ることにより制御を簡略化しているのだ.

体幹の運動制御

著者: 成田崇矢

ページ範囲:P.194 - P.199

はじめに

 運動制御とは,随意運動をするために必要なさまざまな機能を調整することと定義される1).予測/フィードフォワード機能2)や固有感覚3),筋力4),反射5)などの運動制御機能は高齢化などにより低下し,機能低下は,腰痛の発症6)や再発の原因になるとされている.腰痛患者に理学療法を行うには,それぞれの機能について理解する必要がある.そこで,本稿では,体幹部の運動制御に影響を及ぼす機能を整理し,評価と運動療法について説明する.

片麻痺歩行の多関節運動制御

著者: 森公彦 ,   中條雄太

ページ範囲:P.200 - P.205

片麻痺歩行における多関節運動制御障害の視点

 筋シナジー構造の理解は,片麻痺歩行の改善のための治療戦略に有益な情報を与える.筋シナジーとは,多数の筋の活動にみられる協調構造であり,いわゆる複数の筋の同時活動である.ヒトでは,1つの関節運動を実行するために無数の筋の組み合わせが存在し,筋と関節は一対一の関係ではない.しかし,すべての筋が独立して制御されているのではなく,冗長で複雑な筋骨格系を円滑に制御するために自由度を低減化していると考えられている.これが「筋シナジー仮説」である.

 歩行時の筋活動におけるリズムとパターンを制御する脊髄神経ネットワークであるcentral pattern generator(CPG)は,筋活動パターンとその重みづけに基づいた筋シナジーの形成に重要な役割を果たす1).この筋シナジーの解析として,多チャンネル表面筋電図を用いて筋活動のパターンと歩行能力向上に必要な標的となる運動制御の問題を明確にする非負値行列因子分解(non-negative matrix factorization:NNMF)や主成分分析などの次元削減アルゴリズムにより,低次元の構造が抽出される.NNMFにより,ヒトの冗長で複雑な多関節運動を制御する筋シナジーが,計測された膨大な多数の筋活動データから複数の機能的単位(モジュール)として同定される2)

連載 とびら

「理学療法×(かける)○○」のキャリアデザイン

著者: 西川正一郎

ページ範囲:P.123 - P.123

 私が理学療法士という職業を知ったのは,今から30年ほど前に祖母がくも膜下出血で倒れたことでした.高校で何も考えずにいた私が「自分の手で直接仕事ができる」この仕事に興味をもったことが始まりでした.

 理学療法士免許を取得後,社会人となって初めに感じたことは,理学療法の技術・知識も研鑽しなければならないが,組織の一部もしくは社会の一部として働くためにはもっと分野の違う多くの知識や考え方が必要なことでした.私は専門学校時代に独学でコンピューターに関する知識を得ていたこともあり,病院に就職してからもその知識を活かした業務管理を社会人1年目から担ってきました.それからは病院におけるレセプトの流れ,単位数の管理,人の流れ,利益の管理など,「経営」に関することの理解ができたのです.これも,「理学療法士×(かける)パソコン」という「×○○」なスキルがあったからこそと思います.専門学校卒だった私は,7年目に通信制の大学に通い,経営情報学を学び,社会の仕組みや手法を知ることで,「理学療法士×パソコン×経営情報学」となり,経営に関する理解の効率性が上がったように感じました.

「経営者」の視線・第2回

貢献の輪を広げて

著者: 池畑健太

ページ範囲:P.208 - P.209

はじめに

 理学療法士が日本に誕生し,60年が過ぎた.そのなかで理学療法士の役割も多様化し,さまざまな分野で活動するようになるとともに,理学療法士の人数も増加し続けている.役割や人数が増えれば増えるほど,それらを管理する役割,すなわちマネジメントが重要になってくる.特に経営において開業権のない理学療法士は,看護師を含めた有資格者をマネジメントしながら事業を発展させていく必要がある.また近年,一人職場は皆無と言ってよく,複数の理学療法士が勤務している組織がほとんどであるためマネジメントの必要性は高まっている.しかし,われわれ理学療法士がマネジメントを学ぶ機会は非常に少ないため,育成や管理に悩む管理職が多いのではないだろうか.

臨床研究のススメ—エビデンスを創ろう・第2回

シングルケースデザイン

著者: 久保田雅史

ページ範囲:P.211 - P.217

はじめに

 シングルケースデザインは,一般的にsingle case experimental design(SCED)と表され,少数の症例(1〜3名程度)を用いて理学療法の有効性を検証するために用いられる実験方法である.理学療法士自身がエビデンスを構築し,最良の根拠を患者・利用者と共有し,意思決定していくことが求められているなかで,理学療法の有効性を検証する手段の1つである.

 近年,シングルケースデザインの重要性が再確認されてきている.その理由の1つ目としてthe Oxford Centre for Evidence-Based Medicine1)においてシングルケースデザインの1つであるN-of-1 trialが,ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の系統的レビューと並んで最高位のLevel 1に位置づけられたことが挙げられる.2つ目に,シングルケースデザインの質を評価するツール,ガイドラインなどが整備され,研究デザインの基準が明確となってきている点が挙げられる2〜4).3つ目として,後述するが,統計的手法が発展してきている点も挙げられる.理学療法士にとって身近で,臨床現場で活用しやすいのがシングルケースデザインであり,エビデンス創りにぜひ活用していきたい.

臨床に役立つアプリケーション活用術・第2回

自助具に関するアプリとウェブサービス

著者: 林園子

ページ範囲:P.218 - P.219

はじめに

 筆者は2018年より,3Dプリンタで自助具をつくりデータを共有する取り組みや,各種サービスの開発を進めている.本稿では,3Dプリンタで自助具を作製する際に有用なアプリケーション(以下,アプリ)やウェブサービスについて解説をする.

臨床実習サブノート 退院後から振り返るゴール設定—推論を事実と照合して学ぶ・第9回

施設入所 歩行自立

著者: 濱原健太郎 ,   野口大助 ,   野尻晋一

ページ範囲:P.220 - P.227

患者 熊本太郎さん,70歳台男性

疾患名 左内頸動脈閉塞を伴う心原性脳塞栓症

家族構成 次男との二人暮らし.次男は仕事のため日中はほとんどの時間を一人で過ごす.長男,長女ともに世帯持ちで県内在住.

既往歴 2019年X月Y日に右中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症を発症.左半側空間無視および注意機能障害が残存.服薬管理はできず家族の支援が必要.

介護保険 要支援1(入院前)→ 要介護3(退院時)

経過 発症後4か月間入院し,退院後に介護老人保健施設へ入所し3か月経過.今後は有料老人ホームへ入所予定.

施設入所目的 家族の十分な支援が得られず,自宅退院ができない.今後の生活の場を決めるために短期の入所.

現在のADL 歩行は遠位見守り.日常生活活動(ADL)は全般に介助が必要.

My Current Favorite・11

臨床理学療法研究者の育成

著者: 玉利光太郎

ページ範囲:P.210 - P.210

現在の関心事は?

 「50%」と「95%」.何の数字だと思いますか? これについては,後で説明します.

 私の現在の関心事は,国内外の臨床理学療法研究者の育成です.現在の日本の理学療法教育は大学院教育が普及し,優れた臨床研究が国内外のジャーナルに掲載されるようになってきました.しかしそれはまだ緒についたばかりであり,研究に対するハードルがまだまだ高いのではないでしょうか.

私のターニングポイント・第37回

多くの理学療法士から影響を受けて

著者: 八木優英

ページ範囲:P.228 - P.228

 私は現在,京都大学大学院医学研究科予防理学療法学講座で勤務しています.予防理学療法学講座では,理学療法による障害予防効果の確立を目標とし,そのために必要な運動機能評価システムの構築や運動介入効果の検証を行っています.これまでに3つのターニングポイントがありましたので,ご紹介します.

 1つ目は,高校生のときに足関節外側靱帯を断裂し,患者として理学療法を受けたことです.担当の理学療法士が足の治療に加えて,私の気持ちが前向きになるようなアドバイスをくださいました.また同室の患者さんが偶然にも理学療法士で,理学療法の面白さや難しさを教えていただき,そのときにやりがいのある面白い仕事だなと感じました.そして,理学療法士になりたいと強く思い,理学療法士をめざしました.

原著

鏡視下腱板修復術後における複合性局所疼痛症候群様症状の発症に影響する術前因子—決定木分析による検討

著者: 今井孝樹 ,   流合慶多 ,   富永章寛 ,   河上淳一 ,   烏山昌起 ,   原田伸哉 ,   工藤憂 ,   永松隆

ページ範囲:P.229 - P.234

要旨 【研究の目的】複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)は鏡視下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:ARCR)後の合併症の1つである.本研究は,複数因子が影響するという仮説をもとに決定木分析を用い,発症予測因子を明らかにすることを目的とした.【方法】ARCRを施行した203例を対象とし,CRPS評価および術前肩関節機能評価として,関節可動域,等尺性筋力,疼痛,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(Japanese Orthopaedic Association Score:JOAスコア)を使用した.CRPS様症状を目的変数,単変量解析にて危険率5%未満の項目を説明変数とし,決定木分析を行った.【結果】CRPS発症率は23.1%であり,CRPS様症状発症の影響因子として術前JOAスコア,術前自動・他動外転可動域,術前他動結帯可動域,術前夜間時痛が選択された.最終的に6グループに分類でき,予測確率は0〜75.0%であった.【結論】術前に2ないし3項目の評価を組み合わせcutoff値に従い分類することで,より明確な発症予測が可能である.

報告

速さ-正確性トレードオフを示す運動調整課題データを統合的に分析する方法の検討

著者: 平井達也 ,   室谷健太 ,   石川康伸 ,   吉元勇輝 ,   若月勇輝 ,   青山満喜

ページ範囲:P.235 - P.239

要旨 【研究の目的】速さ-正確性のトレードオフを示す下肢運動調整課題のデータを統合的に分析する方法を検討することであった.【対象と方法】若年群20名,中年群20名,高齢群58名を対象とし,高齢群を非転倒群46名,転倒群12名に分類した.PC画面上の円図形を下肢でトレースする課題実施時の運動時間と目標線からの逸脱面積を算出した.対象者ごとに運動時間と逸脱面積をZスコア化した後,主成分分析により第1主成分スコアを算出した.第1主成分スコアを従属変数,年齢と転倒の有無を独立変数とした分散分析を行った.【結果】年齢要因および転倒要因の有意な主効果が認められた(すべてp<0.05).【結論】本研究の結果は,トレードオフを示す運動調整課題データを主成分分析により統合することで,加齢と転倒の影響を表現できることを示唆する.

症例報告

イラストやオノマトペを活用した運動学習により片麻痺機能と自立度の改善を認めた慢性期失語症患者の1症例

著者: 村部義哉

ページ範囲:P.241 - P.245

要旨 【はじめに】運動学習の第一段階は,言語的情報処理を中心とした認知段階であるが,言語機能が障害される失語症患者では,言語的情報処理の認知的負荷の軽減が必要であると考えた.【症例】左脳出血発症後約5年が経過した70歳台女性.失語症と右上下肢の不全麻痺により,移乗・移動の安全性が低下していた.【介入と結果】運動学習を促進する手段として,発症前の運動感覚の想起と,それに該当するイラストやオノマトペを設定した.2回/週,60分/回の頻度で5か月間介入を実施し,移乗・移動の介助量の軽減を認めた.【結語】失語症患者の運動学習を援助する方法として,イラストやオノマトペを用いた運動感覚の簡略化による認知的負荷の軽減が有効となることが示唆された.

新型コロナウイルス感染症—現場からの報告

新型コロナウイルス感染症流行に伴うコロナフレイル予防の取り組み

著者: 石光雄太

ページ範囲:P.246 - P.247

 世界規模で爆発的な速度で拡大した新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は直接的な感染症状や治癒後の後遺症以外にも,間接的な影響として外出自粛に伴う不活動や食生活の乱れなど日常生活に影響を与えていることが報告されている1,2)

 第8期宇部市高齢者福祉計画3)によると山口県宇部市では2020年4月時点で高齢化率33.1%と全国平均を上回っている状態である.さらに日常生活圏域を6つに区分し,調査されており,各地の高齢化率が最小30.6〜最大49.7%と,どの地域でも高齢化が進んでおり,その幅も広いことがわかっている.介護度も経年的に高まっており,市全体で健康増進に向けて日々取り組んでいる.2020年6〜7月の同市における調査4)では地域在住高齢者中心の116名を対象としCOVID-19が日常生活に与えた影響を調査した.友人・家族とのコミュニケーションが全体の55%,運動機会や量が45%の者で減少しており,COVID-19に伴うフレイル,コロナフレイルリスクであることが示唆され,早急な対策が肝要と考えた.

書評

—トーマス・W・マイヤース(Thomas W. Myers)(原著)板場英行,石井慎一郎(訳)—「アナトミー・トレイン[Web動画付]第4版—徒手運動療法のための筋膜経線」

著者: 成田崇矢

ページ範囲:P.207 - P.207

 本書の初版は,2001年に発行された.この「アナトミー・トレイン:筋膜経線」というものに触れ,今まで,筋,骨,関節と別々にとられていた治療概念に「つながり」を意識した人も多かったと思われる.今回の第4版でも,多くの最新情報が掲載されている.「筋膜(fascia)」という用語は,日本において急激に広まっているものの,未知の部分も多い.本書は,まさに電車のように,とどまることなく最新の情報を取り入れて進化している.

 特筆すべき点は,著者トーマス・W・マイヤース氏は,間違いなく臨床家であるという点である.それは,「治療の核心は手技の応用にとどまらず,聴く,見る,感じる,そして理解する能力にある.少なくともこれが本書の根幹である」と言い切っている点と,ある一定のルールに従えば「読者が本書に記載していない列車を加えることができる」と著者の考えがすべてではなく,読者自身が創意工夫により新たな発見をしてもよいと自由度を与えている点からもうかがえる.まさに本書の根幹は臨床にあり,単なる解剖書とは異なり,本書にあふれる概念を理解すれば,間違いなく臨床の一助になるというのが,読後に抱いた第一印象である.

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目次

ページ範囲:P.124 - P.125

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.227 - P.227

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.250 - P.251

編集後記

著者: 永冨史子

ページ範囲:P.252 - P.252

 昨年の話で恐縮ですが,記録的に暑い夏でした.年末は寒い冬となりました.月と地球と天王星が重なる皆既月食を観る機会にも恵まれ,次回は400年後とのこと.なぜそれがわかるのかもわからない私ですが,自然は私たちの力の及ばないところで動き,生きていると感じます.

 さて,今月の特集テーマは,「嚥下機能に着目した理学療法」です.リハビリテーションの歴史のなかで嚥下へのアプローチは比較的新しい領域ですが,さまざまな職種の参画により急速に発展しています.嚥下機能は栄養摂取と生命維持に重要であると同時に,食べる文化・楽しみとして生活を彩ります.各専門分野の基礎知識と治療的取り組みをご執筆いただきました.食べる楽しみを取り戻すための,日常の理学療法に役立てていただければと思います.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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