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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル57巻3号

2023年03月発行

雑誌目次

特集 システムとしての姿勢制御—メカニズムの解明から臨床応用まで

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.256 - P.257

 安定した姿勢バランスは日常生活活動の基盤となる.一方で,過度な姿勢の安定性要求は,動きの自由度の制限を来す.ヒトの活動場面では,姿勢は常に変動することから,動的な姿勢制御が求められる.したがって,日常生活においては,柔軟性を保ちながらもロバストに安定させることができる神経メカニズムが不可欠となる.安定かつ柔軟なヒトの姿勢制御には,さまざまな要因がメカニズムとして関与することから,システムとして姿勢制御を捉えたうえで,理学療法評価・実践しなければならない.本特集がその足がかりになればと願っている.

—エディトリアル—システムとしての姿勢制御—メカニズムの解明から臨床応用まで

著者: 森岡周

ページ範囲:P.258 - P.259

 「立つ」,「歩く」といった基本的動作能力の改善・向上を目的に理学療法が展開されることは言うまでもない.なかでも安定した立位姿勢の実現は,歩行を含めた日常生活を支える身体運動・動作の基盤となるが,神経疾患や運動器疾患を呈した場合,あるいは加齢によって姿勢バランスの安定性が失われてしまうと,結果として,日常生活における活動を阻害してしまう.

 他方,姿勢動揺が減少し,見かけ上安定しているようにみえても,それだけでは姿勢制御が正常化しているとは言えない.例えば,パーキンソン病では健康な若年者よりも姿勢動揺が減少することが報告されている1).一方で,パーキンソン病では動揺周波数が高周波化するといった質的な変化がみられることがわかっている2).動揺周波数の高周波化は姿勢制御における関節の剛直化を示すと言われており3),最近では,このような関節の剛直化は,過度な意識に基づく姿勢制御によって起こると言われ,むしろ柔軟的な制御を奪ってしまうと問題視されている.こうした問題を捉えるために,姿勢制御評価においては,動揺の増大/減少といった量的指標のみならず,動揺速度や周波数といった質的指標も捉えるべきであると言われるようになってきた.そして,姿勢動揺の減少のみを目的としたステレオタイプな理学療法の呪縛を解く必要もあると言えるであろう.

システムとしての姿勢制御戦略

著者: 宮田一弘

ページ範囲:P.260 - P.266

Point

●ヒトの姿勢は,複数の制御システムが相互作用することで発現されている

●Balance Evaluation Systems Test(BESTest)は6つの制御システム(生体力学的制約,安定性,予測的姿勢制御,反応的姿勢制御,感覚機能,歩行安定性)で構成されるバランス評価尺度である

●制御システムを考慮した評価,介入を実施することが重要である

予測的および反応的姿勢制御戦略

著者: 萬井太規

ページ範囲:P.267 - P.274

Point

●予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustments:APAs)は,予測される姿勢動揺の相殺と効率的な重心の移動を目的に,姿勢動揺の予測の確度が高いほど効果的に調整される

●反応的姿勢制御は,姿勢動揺に関する種々の感覚入力をもとに,姿勢安定性の復元を目的に,ゴール志向に影響する予測,指示,注意,あるいは心理状態(不安など)に合わせて調整される

●APAsに対してはAPAsの低下を可能な限り抑制した条件下での反復練習が,反応的姿勢制御に対してはperturbation-based balance training(PBT)を実生活に類似した種々の課題設定で行うことが重要である

随意的姿勢制御戦略—随意的な身体重心位置移動の制御メカニズムと理学療法

著者: 冨田洋介

ページ範囲:P.275 - P.282

Point

●ヒトは静止立位保持においても全身の関節が協調的に作用することで身体重心位置のわずかなゆらぎを生み出している

●随意的に身体重心位置を移動した後に運動を停止するには,まず力学的な安定性を一時的に低下させ,力学的安定性を再獲得する必要がある

●上肢リーチ課題は指先位置の制御と身体重心位置の制御の両者を要するため,機能的な運動制御をトレーニングする課題として有用となる

姿勢制御における感覚戦略

著者: 光武翼

ページ範囲:P.283 - P.290

Point

●感覚戦略は環境や状況に応じて視覚,体性感覚,前庭覚の比重を変化させることで姿勢を制御する役割を担う

●視覚,体性感覚,前庭覚は姿勢安定性に影響しており,各感覚情報に焦点を当てた評価は姿勢安定性を把握するうえでも重要である

●各感覚刺激に対する姿勢制御反応に一貫性は認められておらず,対象者の優位な感覚情報を模索する必要がある

注意操作を用いた姿勢制御アプローチ

著者: 植田耕造

ページ範囲:P.291 - P.297

Point

●姿勢脅威や姿勢制御障害により注意の内的焦点化が起こる

●健常若年者や高齢者では身体への内的焦点化と比べ外的焦点化,さらに二重課題により姿勢動揺の減少を認める報告がある.一方,脳卒中患者では対象者の特徴により適応が変わる

●姿勢脅威により変調する姿勢制御や心理面の一部は二重課題時に軽減する可能性がある

接触操作を用いた姿勢制御アプローチ

著者: 石垣智也

ページ範囲:P.298 - P.305

Point

●固定物に軽く接触することで得られる姿勢や動作の安定化をライトタッチ効果という

●さまざまな疾患や障害を有する者にもライトタッチ効果は認められるが,ライトタッチ効果を用いることがバランス能力の向上に有用かは明らかでない

●臨床応用にはライトタッチ効果を用いる目的を明確にし,対象者の臨床特徴,接触する対象物の特性や介助者の状況を考慮する必要がある

聴覚フィードバックを用いた姿勢制御アプローチ

著者: 長谷川直哉

ページ範囲:P.306 - P.312

Point

●感覚フィードバック練習に用いられる代表的感覚は,視覚,聴覚,体性感覚である

●聴覚フィードバックには,聴覚キュー,アラーム刺激,sonificationがあり,近年はsonificationを用いた研究が増加している

●聴覚フィードバック練習では固有受容覚との強いリンクが示唆され,運動学習に有利な可能性がある

ニューロモデュレーション技術を用いた姿勢制御アプローチ

著者: 犬飼康人

ページ範囲:P.313 - P.318

Point

●非侵襲的脳刺激法は中枢神経系に対する代表的なニューロモデュレーション技術である

●反復経頭蓋磁気刺激や経頭蓋電流刺激を用いて姿勢制御機能を改善させる取り組みが行われている

●前庭ノイズ電流刺激は姿勢制御機能を改善させる可能性がある,新たなニューロモデュレーション技術である

Close-up リウマチ今昔物語

関節リウマチの治療—変わったことと変わらないこと

著者: 神野定男

ページ範囲:P.320 - P.324

関節リウマチの診断の変遷と実際

1.分類基準の変遷

 関節リウマチの診断には,1987年の米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)による分類基準が長い間使われてきた.しかし,この基準では早期の患者を関節リウマチと診断できないことがあり,早期診断の基準としては不十分と指摘されていた.

 このような状況から,2010年にACRおよび欧州リウマチ学会が合同で新しい分類基準を発表した1).この基準では,少なくとも1つ以上の関節で腫れを伴う炎症[滑膜炎(関節の中の滑膜の炎症)]がみられ,その原因として関節リウマチ以外の病気が認められない場合に,① 症状がある関節の数,② リウマトイド因子または抗シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated peptide:CCP)抗体の発現,③ C-reactive protein(CRP)または赤沈といった採血での炎症反応,④ 症状が続いている期間,の4項目についてのそれぞれの点数を合計し,6点以上であれば関節リウマチと分類する.

関節リウマチの理学療法—変わったことと変わらないこと

著者: 島原範芳 ,   佐浦隆一

ページ範囲:P.325 - P.328

関節リウマチ診療のパラダイムシフトと理学療法を含むリハビリテーション医療の変化

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis)診療の治療目標は,1980〜1990年代の痛みの軽減から,2000年代のアンカードラッグであるメトトレキサート,生物学的製剤の導入による関節破壊の進行抑制を経て,臨床的・機能的・構造的寛解の達成となった1〜9).この大きな変化はパラダイムシフトと呼ばれ,理学療法を含むリハビリテーション医療にも大きな変化をもたらした.

 20世紀の関節リウマチのリハビリテーション医療の目的は,「関節を守り」,「生活を護る」ことであった.「関節機能と日常生活能力の改善と維持」を目的に,関節保護の厳守や日常生活動作の指導といった患者教育と疾患活動性に合わせて運動の負荷量や頻度を調整した理学療法(運動療法)が主体となり,疾患活動性の増悪期には関節機能の維持と廃用予防を目的に,適切な安静や愛護的な運動療法が行われた.そして,寛解期には関節保護を考慮しながら,積極的な運動療法を実施して身体機能の改善・維持を図った.

関節リウマチの作業療法—変わったことと変わらないこと

著者: 田口真哉 ,   佐浦隆一

ページ範囲:P.329 - P.334

はじめに

 2000年代初めからの薬物治療の劇的な進歩は,関節リウマチ(rheumatoid arthritis)のリハビリテーション治療の目的や目標を大きく変えた.作業療法も例外ではなく,従前の疼痛緩和や変形など二次障害の予防に加えて,低疾患活動性,あるいは寛解をめざす薬物治療中の機能維持や向上,そして,健常者と同じような日常生活の享受,社会活動への参加のための関節リウマチ患者の包括的支援が目的となった.

 と言っても,薬物治療が奏効しない,あるいは長期罹患により障害をもつ関節リウマチ患者の身体機能と日常生活活動の維持を目的とする作業療法の必要性が失われたわけではない.寛解あるいは低疾患活動性をめざす薬物治療が主流となっても,生活に密着し動作にこだわる作業療法士が関節リウマチのリハビリテーション治療のなかで担う役割は,ライフステージへの支援も加わり,その重要性は増し,そして,関節リウマチ患者のみならず,関節リウマチ医療チームに加わっている多職種からの作業療法への期待も大きくなっている.

 そこで,本稿では,筆者らが経験してきた関節リウマチの作業療法の変わらないこと,変わったことを紹介したい.

連載 とびら

すべての学生は有能で能動的な学び手である

著者: 有馬慶美

ページ範囲:P.253 - P.253

 今から30年ほど前,教員になりたての私は,いわゆる「ダメな学生」に悩んでいた.いや,悩んでいたというよりは,悩みたくないから距離をおき,一般に「よい学生」とされるほうばかりを見ていたというのが正しいのかもしれない.「よい学生」は,期待する以上の努力をし,成果を見せてくれる.それに対して,「ダメな学生」は度々遅刻をし,授業中は居眠りをし,教員への態度も悪かった.本人にやる気がないのなら働きかけても無駄だと思っていたのである.

 そんな折に,勧められて読んだのが稲垣佳世子氏らの『人はいかに学ぶか—日常的認知の世界』(中央公論新社)である.この本に大きく影響を受けて,今の私の教育姿勢がある.

「経営者」の視線・第3回

心に響くサービスをめざせ

著者: 宮脇敬 ,   松岡栄二郎

ページ範囲:P.336 - P.337

はじめに

 「心に響くサービス」と言っても漠然としすぎていて,わかっているつもり,しているつもりになりがちではないでしょうか.では,知識や臨床経験,研究からの論文作成,また手技(以下,技術と総称)を極めることで「心に響くサービス」を提供するのは可能でしょうか.本稿では,病院経験5年と在宅現場で17年目の経験を踏まえた私見をもとに考察します.

臨床研究のススメ—エビデンスを創ろう・第3回

尺度研究—信頼性と妥当性

著者: 楠本泰士

ページ範囲:P.339 - P.343

はじめに

 「海外で使用されている英語の評価法を自分で日本語訳して使った」,「自分で日本語訳した英語の評価法を使用して,英語論文で発表する」,「英語の評価法のまま,日本人の患者さんに使用する」,これらは誤った手順,考えである.

 2022年度,実際に出版されている理学療法士の論文のなかにも上記のように,誤った使用法で公表されている論文がある.使用する評価法が信頼性や妥当性を担保しているかを確認することは,臨床研究を始める前に,評価者が確認するべきことである.

臨床に役立つアプリケーション活用術・第3回

動画活用と編集

著者: 森尾裕志 ,   関根悟

ページ範囲:P.346 - P.347

 本稿では理学療法士に有用な動画の活用と編集法について,「教育」,「研究」,「臨床」の観点から述べる.

臨床実習サブノート 退院後から振り返るゴール設定—推論を事実と照合して学ぶ・第10回【最終回】

施設入所 車椅子自立

著者: 安部泰広 ,   森陽亮

ページ範囲:P.348 - P.352

はじめに

 Aさんが脊髄小脳変性症31型(spinocerebellar ataxia type 31:SCA31)を発症したのは20年前でした.以来,在宅生活を続けていましたが,徐々に一人で身の回りのことをするのが困難となり施設入所となりました.入所後の生活は,介助してもらう部分もありますが,介助に依存し過ぎてもいません.車椅子操作が自立するなど,自分でできることも多く,自立した生活を送っています.また,集団での時間だけでなく,個人的な時間や空間もあります.まずは,施設生活について紹介します(図1).

私のターニングポイント・第38回

大きな影響を与えてくださった2人の理学療法士との出会い

著者: 鬼頭大輔

ページ範囲:P.335 - P.335

 私は理学療法士として働き始めて14年目になります.日々の業務に追われ,あっと言う間に過ぎてしまったように感じていました.今回このような機会をいただきあらためて振り返ると,さまざまな方との出会いがあり,自分に大きな影響を与えてくださっている方が多くいたことに気づけました.そのなかでも理学療法士人生のはじめに出会った2人の理学療法士とのエピソードを紹介します.

 1人目は,私が高校生の頃に出会い,理学療法士をめざすきっかけとなった理学療法士の方です.当時,高校生だった私は小学生から続けていた野球に熱心に取り組んでいました.私はもともと身体が硬い体質でけがをしやすく,腰を痛めてしまい,あるクリニックに通うことになりました.その当時は練習を休んだり,早退したりしながらクリニックに通っていたので,練習に参加できない焦りや,痛みやけがに対する不安が強い状況でした.そんなときに,担当の理学療法士の方が笑顔で話しかけてくれたり,励ましてくれたりしたことにより,精神的にとても楽になったことを覚えています.高校生だった私は,将来の仕事や職業なんて考えたこともありませんでしたが,そこで働いている担当の理学療法士の方を見ていると,素敵な笑顔と会話で多くの患者さんを励まし,施術によって患者さんから感謝をされている姿がとても印象的で,すぐに憧れを抱くようになりました.この方との出会いにより「私も理学療法士になってあの人のように人の役に立ちたい」と思い,理学療法士をめざす最初のきっかけとなりました.

My Current Favorite・12

理学療法の在り方「ケアとセラピー」

著者: 廣濱賢太

ページ範囲:P.345 - P.345

現在の関心事は?

 理学療法における「ケアとセラピー」が現在の関心事です.私が理学療法士となった頃は自己研鑽を積み,多くの知識と高い技術によってよい治療を提供できる理学療法士になりたいと漠然と考え,セラピーによって治す力こそが理学療法士の力量と考えていました.しかし,現在は適切なタイミングでケアとセラピーを巧みに使い分けることが非常に重要であると考えています.

報告

石灰沈着性腱板炎に対する超音波治療と拡散型圧力波治療の治療効果の比較

著者: 三船昂平 ,   小原弘行 ,   大森康高 ,   杉浦史郎 ,   豊岡毅 ,   中村恵太 ,   志賀哲夫 ,   高田彰人 ,   大山隆人 ,   石崎亨 ,   岡本弦 ,   西川悟

ページ範囲:P.353 - P.356

要旨 【背景】石灰沈着性腱板炎患者に対する超音波治療と拡散型圧力波治療(radial shock wave therapy:RSWT)の治療効果について,治療成績,治療期間,治療頻度を比較検討した報告は少ない.【対象と方法】石灰沈着性腱板炎と診断され,各治療前後での評価が可能であった18名(超音波群:1 1名,RSWT群:7名)において,治療成績,治療期間,治療頻度を調査し,比較検討を行った.【結果】治療成績は,超音波群で改善が2名,未変化が9名,RSWT群で改善が5名,未変化が2名とRSWT群が有意に改善していた(p<0.05).また,調整済み残差分析の結果,RSWT群は有意に改善し,超音波群は有意な改善が得られなかった.治療期間は,超音波群は57.3±34.9日,RSWT群は30.6±3.2日でRSWT群は有意に治療期間が短く(p<0.05),治療頻度は,超音波群で週に1.84±0.86回,RSWT群で週あたり1.09±0.1回とRSWT群で有意に少なかった(p<0.05).【まとめ】RSWTのほうが有意に治療成績が高く,治療期間が短く,治療頻度も低いため,RSWTは患者の負担が少なく有益な治療であると推察された.

症例報告

免荷式歩行器の前進負荷機能を用いた歩行練習により歩行能力が改善した既往症を有する腰部脊柱管狭窄症の1例—シングルケースデザインによる検討

著者: 吉川大志 ,   飯田健治 ,   國友公太 ,   島津尚子

ページ範囲:P.357 - P.362

要旨 【目的】既往症を有した腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis:LSS)の症例に対し,免荷式歩行器の前進負荷機能を用いた歩行練習により,歩行の安定性や歩行速度が改善したため報告する.【症例】既往に左片麻痺を有し,LSSの増悪にて歩行困難となった60歳台女性.X日にL4/5椎弓切除術を施行され,X+13病日に回復期リハビリテーション病棟へ入棟した.X+13病日の筋力はManual Muscle Testingで右股関節外転2,伸展3,腹筋群3,左下肢4であり,歩行は重度介助を要した.【方法】X+63病日からABAデザインによる免荷式歩行器の前進負荷機能を用いた歩行練習を導入し,歩行練習後に最大歩行速度,歩幅,歩行率,center of pressure 総軌跡長,trailing limb angleを計測した.【結果】免荷式歩行器を用いた歩行練習後に歩行の安定性が改善し,歩行速度が増加したことで歩行が自立した.【結論】既往症を有したLSS症例に対する免荷式歩行器の前進負荷機能を用いた歩行練習は,歩行能力の改善に寄与することが示唆された.

プラクティカル・メモ

骨折後の荷重量コントロールの一工夫—鉛直方向への操作を用いた軸圧荷重

著者: 眞本匠

ページ範囲:P.364 - P.365

はじめに

 下肢骨折後の理学療法では,骨癒合の促進や筋力増強などを目的として荷重練習を行うことが多い.荷重練習は,体重計に乗り重心移動をする方法が一般的である.しかしこの方法だと,全荷重指示にもかかわらず荷重が不十分となることや,対象者が荷重制限を遵守できず過度に荷重をかけることを経験する.また,軸圧方向への負荷は早期に新生骨の形成を促進し,ハバース系による再造形を活発にして骨癒合を導く1)とされているが,重心移動を伴う荷重では代償動作がみられ軸圧方向以外のストレスが加わることがある.これらの問題により,画一的な方法では目的の達成は容易ではない.そのため荷重制限指示に合わせて,軸圧方向へ荷重量をコントロールする方法が必要であると考えた.

 そこで今回,重心移動や姿勢変化を最小限にとどめて荷重量をコントロールできる方法を考案したので,以下に紹介する.本症例には,ヘルシンキ宣言に基づき事前に本研究の目的と内容を十分説明し,書面による同意を得て実施した.

学会印象記

—第9回日本小児理学療法学会学術大会—今,小児理学療法に問われるもの

著者: 曽我崇大

ページ範囲:P.338 - P.338

Web開催

 第9回日本小児理学療法学会学術大会が「今,小児理学療法に問われるもの—我々は,何をすべきか」というテーマのもとWeb開催(ライブ配信・オンデマンド配信)されました.

 本大会は,小児科医の荒井洋先生(ボバース記念病院),医療的ケア児の養育者である野田聖子衆議院議員の特別講演や,国際小児理学療法士組織(International Organization of Physiotherapists in Paediatrics:IOPTP)会長のSheree York先生による教育セミナーなどもあり,多岐にわたる内容でした.

—第9回日本予防理学療法学会学術大会—予防理学療法で地域をサポートする

著者: 岡﨑陽海斗

ページ範囲:P.344 - P.344

学術大会の概要

 第9回日本予防理学療法学会学術大会が白谷智子大会長(苑田第二病院)のもと,「共生のための予防理学療法の模索」をテーマに開催されました.本大会は,ハイブリッド形式の開催であり,web上での参加も可能であったことから,非常に多くの方が参加していました.予防に関する特別講演や教育講演,地域で予防事業に携わる高校生や活動団体の方々を招いて開催されたシンポジウムなどもあり,非常に内容の濃い学会でした.2日間を通して,現地およびweb上で活発なディスカッションが行われ,盛況のうちに閉会を迎えました.

書評

—渡邉英夫,平山史朗,藤﨑拡憲(著)—「脳卒中の下肢装具 第4版—病態に対応した装具の選択法」

著者: 遠藤正英

ページ範囲:P.319 - P.319

 脳卒中片麻痺患者の下肢装具は入院中から退院後まで必要なものであり,近年では『脳卒中治療ガイドライン』にも掲載され,臨床場面で多く使用されるようになった.しかし,筆者が就職した2004年当時の理学療法は,下肢装具の使用に積極的ではなく,どちらかといえば「下肢装具の使用は理学療法士の敗北」と揶揄されていた.筆者が就職した施設は,湯之児式装具を開発された浅山滉先生がいらっしゃったので,何の抵抗もなく下肢装具を使用することができた.しかし職員のなかには,下肢装具の使用を嫌う者も多く存在し,冷ややかな目で見られていたのを思い出す.そのような世の中だったため,下肢装具を学ぶにも参考となる書籍が少なく苦労した.

 下肢装具は,非常に多くの種類と機能,適応や使い方など多くの学びを必要とするため,初学者だけでなく,経験者においても壁にぶつかりやすい分野である.筆者も日本義肢装具学会学術大会に毎年参加し,下肢装具を知ることに努めたが,臨床での使用には難渋していた.そんな時,本書と出会うことができた.きっかけは,当院に出入りしていた義肢装具士に本書初版を紹介されたことであった.ハンドブックサイズで,多くの種類の下肢装具を写真付きで紹介し,機能や特徴に至るまで説明してあった.いまだに手にした時の衝撃は忘れることができず,バイブルとして暇さえあれば読み返したものである.本書のおかげで多くの種類の下肢装具の特徴を理解し,目の前の患者に適した選定をするための知識を得ることができた.

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目次

ページ範囲:P.254 - P.255

第34回「理学療法ジャーナル賞」発表

ページ範囲:P.290 - P.290

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.334 - P.334

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.368 - P.369

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.370 - P.370

 第57巻第3号をお届けします.

 特集テーマは「システムとしての姿勢制御—メカニズムの解明から臨床応用まで」です.ゲストエディターである森岡周先生の「エディトリアル」に熱い思いと内容が示されています.特に,259頁の「?」で記された8項目は,真に生体機構を理解して対象者に寄り添った実践によって成果を得ることができるのか? という理学療法の真髄が凝縮されています.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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