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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル57巻7号

2023年07月発行

雑誌目次

特集 腎臓リハビリテーション

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.762 - P.763

 今日の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を有した患者へのかかわりは,安静や運動制限ではなく,むしろ多職種による連携を基盤とした運動療法や生活指導が腎機能改善やQOL向上に有効であるとされている.本特集では,慢性CKDにおける保存期,透析期,移植期といった時期別に展開される腎臓リハビリテーションの最新知見を専門の先生方にご解説いただき,腎臓リハビリテーションにおける理学療法士のかかわりをup to dateする機会としたい.

腎臓リハビリテーションのUp To Date

著者: 松永篤彦

ページ範囲:P.764 - P.769

Point

●2022(令和4)年度診療報酬改定によって「透析時運動指導等加算」(75点,指導開始から90日間)が認められた

●腎臓リハビリテーションの目的は,保存期慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者においては腎保護,透析患者においては運動耐容能,身体機能およびADL,QOLの改善を通して生命予後を改善することである

●腎臓リハビリテーションの治療指針に向けたエビデンスは整いつつあるが,保存期CKDおよび透析患者ともに虚弱高齢者に対するエビデンスはいまだ不十分である

保存期慢性腎臓病患者における運動療法

著者: 西澤肇 ,   平木幸治

ページ範囲:P.770 - P.777

Point

●保存期慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者の運動療法は腎重症化予防を図ることができる可能性が示されている

●保存期CKD患者の運動療法は診療報酬上の問題により在宅で行う運動指導が現実的である

●保存期CKD患者のアドヒアランスを高めるためには歩数計を用いた運動指導が効果的である

透析場面における監視型運動療法

著者: 森山善文

ページ範囲:P.778 - P.784

Point

●透析患者の運動耐容能は低下しており,骨格筋異常の問題が大きい

●透析中に行う運動療法は安全性や継続性において有効性が高い

●レジスタンストレーニングは適切な負荷をかけて行う必要がある

腎移植患者における腎臓リハビリテーション

著者: 西山裕貴 ,   臼井直人 ,   原田大樹

ページ範囲:P.785 - P.792

Point

●移植腎の長期生着,生命予後改善には,生活習慣病や心血管疾患などの合併症の予防と身体機能・身体活動量の維持・改善が重要であり,運動療法が有用な可能性がある

●腎移植術後は早期にリハビリテーションを開始し,退院後も運動療法や身体活動量を高める取り組みを継続する

●透析期から移植後の長期にわたるシームレスな運動療法,疾患管理指導を行っていくことが理想である

腎臓リハビリテーションとチーム医療—透析患者の生活を支える

著者: 井本洋史 ,   有元克彦

ページ範囲:P.793 - P.799

Point

●慢性腎臓病患者の多くは,日常生活活動に介助を必要としている

●理学療法士は機能・能力を把握し,予防的介入を行う必要がある

●生活を支援するためには,地域で見守ることが大切である

腎臓リハビリテーションと栄養管理

著者: 黒住順子 ,   菊川智

ページ範囲:P.800 - P.807

Point

●慢性腎臓病患者はサルコペニア・フレイルを発症しやすい

●サルコペニア・フレイル・protein-energy wasting(PEW)の予防・改善には運動療法と栄養管理の併用が重要である

●運動療法には,適切な蛋白質摂取と十分なエネルギーの確保が重要である

高齢透析患者における運動器重症化予防のための生活指導と支援

著者: 河野健一

ページ範囲:P.808 - P.812

Point

●高齢透析患者はフレイル・サルコペニアの有病率が高く転倒リスクも高い

●入院期のリハビリテーションにおいて最大限入院前のADL獲得をめざす

●透析時運動療法だけでなく非透析時の個別的な運動指導や生活指導を敢行する

思春期・若年成人透析患者におけるQOL向上のための生活指導と支援

著者: 三浦健一郎 ,   服部元史

ページ範囲:P.813 - P.818

Point

●思春期・若年成人の透析患者のQOLを低下させる要因として,身体機能の低下,成長障害,うつ,不安,自己肯定感の低下などの精神心理的問題,学業成績を含む認知機能の障害,就業の問題などがある

●医師,看護師,ソーシャルワーカー,臨床心理士を含む多職種の連携が重要である

●適切なスクリーニングと評価により,早期の生活指導や支援に結びつける必要がある

Close-up 体外衝撃波療法—スポーツ理学療法での最新治療

石灰沈着性腱板炎に対する集束型体外衝撃波療法

著者: 坂井周一郎 ,   光井康博 ,   宮本梓 ,   樋口一斗 ,   吉田禄彦 ,   原光司 ,   百武康介

ページ範囲:P.820 - P.826

集束型体外衝撃波療法(F-ESWT)

 集束型体外衝撃波療法(focused extracorporeal shock wave therapy:F-ESWT)は,運動器疾患に対する物理療法の一つとして近年注目されている.

 F-ESWTの効果には,短期的な作用としての除痛効果と長期的な作用としての組織再生が挙げられる.除痛効果としては,疼痛を誘発している自由神経終末を破壊するとされ,複数回の照射での自由神経終末再生遅延1),CGPRやsubstance P に代表される疼痛にかかわる神経伝達物質の減少2)も報告されている.組織再生作用は,endothelial nitric oxide synthase(eNOS),血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF),proliferating cell nuclear antigen(PCNA)などの産出に伴う血管新生やコラーゲン,transforming growth factor(TGF)-β,インスリン様成長因子(insulin-like growth factor:IGF)産生に伴う腱再生効果3)が挙げられる.

足底腱膜炎に対する体外衝撃波療法

著者: 内野真明 ,   佐々木和広

ページ範囲:P.827 - P.830

 足底腱膜炎は,長時間の立位や走行の際に足底腱膜が踵骨の付着部で反復的な微小外傷を受けることによって引き起こされ,起床時の歩行開始時や連続歩行時の足底の痛みを呈する1).主に立ち仕事や長距離歩行を必要とする職業に多く,アスリートではランナーに多いとされている.ランナーに多い理由としては,ランニングにより足底腱膜への負荷が体重の約3倍に増加することに加え,長期にわたる運動負荷により下腿三頭筋や足部内在筋の柔軟性が低下し,衝撃吸収機能も同時に低下するためと考えられている2)

 治療の第一選択は保存療法である,インソールやヒールカップなどの装具の使用,コルチコステロイドの局所注射,リハビリテーションが行われることが多い3).このような治療を行うことで約9割の患者で症状が改善するが,残りの1割は症状が残存し難治例となる4)

上腕骨外側上顆炎に対する体外衝撃波療法

著者: 大槻哲也 ,   杉浦史郎 ,   西川悟

ページ範囲:P.831 - P.834

上腕骨外側上顆炎

 上腕骨外側上顆炎は上腕骨外側上顆の前腕伸筋群起始部のうち,短橈側手根伸筋(extensor carpi radialis brevis:ECRB)の腱付着部症であり,加齢による付着部の変性に伴う腱線維の微小断裂などが明らかにされている1,2).腱付着部(enthesis)は関節の運動によるエネルギーを伝達する構造で,力学的破綻を防ぐために主に線維軟骨で形成されていることから構造的に血管・神経に乏しく,損傷に対する修復能が低いとされる.上腕骨外側上顆炎はこのenthesisに損傷が繰り返されることで発症すると考えられている3)

 本疾患はテニスやゴルフなどのスポーツや手関節伸展や前腕回内の動作,把握動作を繰り返す日常動作などで発症し,日常診療でもよく遭遇する.

連載 とびら

利他的/利己的なライフワーク

著者: 壹岐英正

ページ範囲:P.759 - P.759

 あなたには「ライフワーク」はありますか?

 「ライフワーク」とは「生涯にわたって行う仕事」を意味します.そして「仕事」とは「働く」という言葉から「傍(はた)を楽(らく)にする」といった意味に捉える考え方があります.つまり仕事は,他者のためにといった「利他的」なものと捉えることができます.

単純X線写真 読影達人への第一歩・第4回

無気肺

著者: 及川真人 ,   花田匡利 ,   名倉弘樹 ,   竹内里奈 ,   神津玲

ページ範囲:P.751 - P.756

【症例情報】

●患者情報:60歳台,男性.

●現病歴:癒着性イレウスのため当院救急搬送.保存的加療で腹部症状の改善を認めず,腹腔鏡下にてイレウス解除術施行.術後の炎症反応遷延と酸素化障害残存のため,術後第4病日に理学療法紹介.

理学療法開始時所見

●自覚症状:安静時よりNumerical Rating Scale(NRS)4/10(やや強い)の術創部痛あり,咳嗽時には7〜8/10まで増強.また体動時にめまいと嘔気あり.

●バイタルサイン:鼻カニュラを使用して酸素2L/分投与下で経皮的酸素飽和度(SpO2)95%,心拍数102回/分,体温38.5℃.

●身体所見:呼吸数20回,触診にて左の下部胸郭で胸郭拡張が減少.聴診では肺野全域で肺胞呼吸音が減弱しており,左背側では気管支呼吸音を聴取.腹部は膨満で触診上やや硬く,打診にて鼓音を認めた.四肢末梢は温暖で足背に浮腫あり.

●血液・生化学検査所見:白血球7,800/μL,ヘモグロビン9.8g/dL,C-reactive protein(CRP)29.1mg/dL.

臨床研究のススメ—エビデンスを創ろう・第7回【最終回】

システマティックレビューとメタアナリシス

著者: 森山英樹 ,   髙村大祐 ,   井上翔太

ページ範囲:P.837 - P.840

エビデンスレベル

 臨床研究がどのくらい信頼できるか,すなわちエビデンスの強さは,研究デザイン(研究の種類)により決まっている.それがエビデンスレベルであり,専門家の意見,症例研究・ケースシリーズ,コホート研究・症例対照研究・横断研究,非ランダム化比較研究,ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の順に高くなる.ところが,RCTは治療効果を立証するための最良の方法であるにもかかわらず,同じ研究テーマであっても異なる結論が得られることがある.これを補完するものが,RCTのシステマティックレビュー(systematic review:SR)を行い,それをメタアナリシス(meta-analysis:MA)により統合したものである.それゆえ,SRとMAは,エビデンスレベルの最上位に位置づけられる研究デザインとなっている.

インシデント,ヒヤリハットから学ぼう・第1回【新連載】

インシデントは予防できるか?—インシデントから学ぶこと

著者: 谷口千明

ページ範囲:P.841 - P.845

インシデントとは

 インシデントとは,医療事故および事故につながる恐れのあったもの(ヒヤリ・ハット)のことである.「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある」—これは,労働災害における怪我の程度を分類し,その比率を表したハインリッヒの法則といわれるものである.ハインリッヒの法則は,重大な事故の背後には一定数の軽微な事故や「インシデント」があるということを示している.

 さて,昨今では医療法などの法的根拠に基づき,医療安全管理のための指針の整備や職員研修などが義務づけられており,各施設でもそれらについて取り組まれていると思う.そのなかの一つに,「インシデントレポート(ヒヤリ・ハット報告)」がある.インシデントレポートとは,個人を罰することではなく,事故の再発防止に活用することを目的とし,事象における問題を分析し,改善することで事故を未然に防ぐという意義がある.

難しい症例のみかた・第1回【新連載】

病棟で作製した長下肢装具がうまく使えず,訪問リハビリテーションで歩行再建に挑戦した症例

著者: 中谷知生

ページ範囲:P.847 - P.849

はじめに

 重度の運動麻痺を呈する脳卒中症例の立位・歩行トレーニングにおいて,長下肢装具を使用する機会は多い.長下肢装具は下肢関節の運動自由度を制限することで立位歩行動作の難易度調整が可能であるが,当然ながらその効果は麻痺側下肢に装着したうえで,理学療法士が適切な介助を提供することで得られるものである.

 今回「難しい症例のみかた」というテーマで事例を紹介するにあたり,宝塚リハビリテーション病院(以下,当院)で長下肢装具を本格的に導入した当初,歩行トレーニングの質の担保に難渋した症例を紹介する.なお本稿は個人情報にかかわる一部情報を改変している.

腰部脊柱管狭窄症に腰椎椎間板ヘルニアを合併し,下肢の神経麻痺を呈した症例の治療経験

著者: 葉清規

ページ範囲:P.850 - P.853

はじめに

 腰部脊柱管狭窄症および腰椎椎間板ヘルニアは,臨床で遭遇する機会が多い疾患である.腰部脊柱管狭窄症の特徴は,中高年に多く,殿部から下肢に痛みやしびれがあり,それらの症状が立位や歩行で増悪し,座位や前屈姿勢で軽快することなどが挙げられる.病態として椎間板の膨隆を伴うことがあり,腰椎椎間板ヘルニアの症状と明確に区別することが困難な場合もある.また,画像所見と理学所見が一致しないこともある.

 本稿では,腰部脊柱管狭窄症に腰椎椎間板ヘルニアを合併し,下肢の神経麻痺を呈した症例の理学療法経験より,その治療経過で難渋したポイントと工夫した点について述べる.

中間管理職の悩み・第1回【新連載】

管理職は何をすればよいのでしょうか?

著者: 村永信吾

ページ範囲:P.854 - P.855

はじめに

 中間管理職は,組織運営の要となる非常に重要なポジションです.身体に例えると「腰」のような位置づけで,上部と下部を連結しそれぞれの相反する動きを吸収しつつ連動し,ダイナミックな身体活動をするために不可欠な役割と言えます.「腰」はストレスにさらされやすく,痛めると上部と下部の連動が妨げられ,思うように動けなくなります.つまり,組織の活動性は,「腰」の役割となる中間管理職の動きが鍵と言えます.本稿では,中間管理職を理学療法部門のトップ(部課長)とスタッフとの間に位置している管理職(主任など)と想定して説明します.

臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう・第4回

評価③ 協調運動機能検査,バランス検査

著者: 田中和彦

ページ範囲:P.857 - P.861

はじめに

 臨床実習において理学療法評価は学生が実施可能な基本技術の水準で,「水準Ⅰ」の「実施」です.指導方法は,水準Ⅰの実施項目であっても最初は臨床実習指導者の実施を見て説明を受ける見学,一部介助の共同参加,そして臨床実習指導者のもとでの実施の手順を踏むことで学生の理解を深めて成功体験へとつながります.水準Ⅰでも患者の状態や学生の成長に合わせた指導が必要です.

 協調運動機能とは,「動作に対して運動に関与する筋群の調和がとれた働きにより,運動を円滑かつ正確に遂行する能力」です.協調運動は,固有感覚系,小脳系,錐体路・錐体外路系などが関与します.その一部が障害されると円滑な運動が行えなくなります.評価は主に座位や背臥位で行い,評価手技が定められています.本稿では臨床実習の協調運動機能検査の指鼻指試験を用いて,学生と臨床実習指導者が臨床参加型実習の理解を深め,相互によりよい臨床実習を展開できるように,そのポイントを解説します.

私のターニングポイント・第42回

落とし穴がふさがった

著者: 鈴木聖子

ページ範囲:P.846 - P.846

 う〜む……,やっぱこれだな.

 わたしのターニングポイントは出来事ではなくて,思いの変化です.それはとても地味です,でも振り返るとその変化はわたしをうんと楽にして,じわじわと凍み豆腐に出汁がしみ入るように,理学療法士としての姿勢にも影響を与えています.

My Current Favorite・16

情報を意思決定に活かす

著者: 佐々木康介

ページ範囲:P.856 - P.856

現在関心のあるトピックス

 私たちが日々接する膨大な情報をどのように選択・解釈し,意思決定に活用していくかという点に関心をもっています.

報告

主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチングの有効性—第2報—セット数の検討

著者: 清野浩希 ,   梅原弘基 ,   仲島佑紀 ,   倉田直紀 ,   藤井千夏

ページ範囲:P.863 - P.868

要旨 【目的】即時的に可動域を改善するために,主観的伸張感で実施時間を設定した(以下,主観法)静的ストレッチング(ストレッチ)を実施する場合,何セットが有効であるかを明らかにすること.【方法】対象は,外来患者24名とした.ストレッチ課題は,ハムストリングスのストレッチとした.主観的にハムストリングスが伸びたと感じるまでを1セットのストレッチ時間とし,4セット実施した.効果検証は,膝関節他動伸展角度(knee extension angle:KEA)とし,ストレッチ前後に測定した.対応のある一元配置分散分析および多重比較検定により,KEAをセット間で比較検討した.【結果】ストレッチ前,第1セット後,第2セット後の間に有意なKEA差を認めた(p<0.001).また,第2セット,第3セット,第4セット間に有意なKEA差を認めなかった.【考察】主観法によるストレッチにより十分な効果を得るためには,2セットが有効であることが示唆された.

症例報告

変形性股関節症に対する人工股関節全置換術後に発症した外側型弾発股の画像評価と理学療法評価の統合と解釈

著者: 丹羽結生 ,   松本正知 ,   和田満成 ,   稲垣忍 ,   田口敦也 ,   松田理

ページ範囲:P.869 - P.874

要旨 人工股関節全置換術後に外側型弾発股を呈した症例を経験した.過去には手術療法の報告のみであったが,今回,理学療法にて症状の改善に至った.そこで,行った画像評価と理学療法評価,理学療法について具体的に報告する.症例は70歳台の女性で,術後4週経過し,大転子周辺に疼痛と弾発現象が出現し跛行を認めた.X線像で大転子の外側変位と脚延長を認め,超音波検査にて大転子と瘢痕と思われる組織間での弾発現象と,同組織から創部までが一塊となった状態が観察された.理学療法評価では,主に伸展と内転可動域が制限されていた.これらの情報を3方向からシェーマ化し,術前後の形態変化が股関節周囲の軟部組織に与える影響,瘢痕と思われる組織とその周辺の状態,これらと跛行との関連を推測し理学療法を立案した.発症後22週で,瘢痕組織は残存したが症状と歩容の改善を認めた.本症例は術前後の形態変化と軟部組織の状態を三次元的に捉えたことが有効であった.

紹介

当院における急性期脳卒中患者に対する歩行練習支援ロボットの実施状況—チェックリストを用いた運用

著者: 本間大智 ,   加藤直也 ,   高橋俊子 ,   片桐夏樹 ,   山口智史

ページ範囲:P.875 - P.877

はじめに

 近年,脳卒中患者に対するロボット支援歩行練習が注目されている.ロボット支援歩行練習は,通常の練習よりも歩行自立度を改善するため,歩行困難者への実施が推奨1)されている.

 一方,急性期の臨床における歩行ロボットによる歩行練習の報告は非常に少ない.そこで,歩行ロボットの適応や歩行練習実施のための手順を標準化し,急性期の臨床で活用可能とするため,山形市立病院済生館(以下,当院)で運用しているチェックリストを紹介する.

書評

—杉田之宏,藤原俊之(監修)高橋哲也,藤野雄次(編)—「回復期リハビリテーションで「困った!」ときの臨床ノート」

著者: 上野勝弘

ページ範囲:P.836 - P.836

 回復期リハビリテーション病棟は2000年4月に始まり,これまで多くの脳血管疾患や整形疾患の患者さんに対して,回復期のリハビリテーションに取り組んできました.そして,この22年間に高齢化は進み,患者さんが抱える障害像は多岐に変化してきています.

 2022年度の診療報酬改定では,「回復期リハビリテーションを要する状態」の対象に「急性心筋梗塞,狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が追加され,心大血管疾患リハビリテーション料が算定可能となりました.また,重症患者の受け入れ割合が高められたこともあり,今後,回復期リハビリテーション病棟では,重複疾患・障害を有する重症度の高い患者さんを受け入れ,質の高いリハビリテーションを提供し,アウトカムを出すことが求められています.

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目次

ページ範囲:P.760 - P.761

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.853 - P.853

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.880 - P.881

編集後記

著者: 村永信吾

ページ範囲:P.882 - P.882

 今年のゴールデンウィークはコロナウイルス感染症2019対策の規制緩和もあり,多くの観光地で以前の賑わいを取り戻しました.その一方で,従業員不足によりホテルや飲食店が閉鎖に追い込まれている実態が報道で明らかにされていました.要因は異なりますが,少子高齢化の影響が,医療者や介護者の人材不足問題として浮上してくることが予想されています.このニュースを通して,医療福祉領域における人材確保と人材育成に早急に取り組んでいくことが,地域医療を守るうえでの重要な課題であることを再認識することとなりました.

 さて,本号の特集では,「腎臓リハビリテーション」に関する最新の取り組みを紹介しています.松永論文では,「透析時運動指導等加算」の目的や経緯そして今後の課題について,西澤論文では,保存期慢性腎臓病(CKD)における運動療法の重要性と意義について,森山論文では,透析中の監視型運動療法について,西山論文では,今日のトピックである腎移植と運動療法への取り組みをご紹介いただきました.井本論文では,透析患者の退院後の生活支援をチーム医療の側面から,黒住論文では,CKD患者の栄養管理的側面からお示しいただきました.河野論文では,高齢透析患者の移動能力の維持の重要性を,服部論文では,思春期や若年成人の透析患者のQOL向上をめざした取り組みを紹介していただきました.いずれの論文も実践的でわかりやすく,一読することで腎臓リハビリテーションの全体像を理解できる内容になっています.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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