理学療法ジャーナル57巻8号

2023年08月発行

Close-up 筋力評価—○○と組み合わせると何がみえる？

体重からみた筋力評価

著者： 山本利春¹

所属機関： ¹国際武道大学体育学部

ページ範囲：P.958 - P.963

下肢筋力と体重との関係からみた指標—体重支持指数（WBI）

　運動の基本は体重の移動であり，自身の体重を支えるだけの十分な脚筋力があるかどうかを評価する必要がある．特に大腿四頭筋は，歩く，走る，跳ぶなどといった身体活動における下肢の基本的動作の主動筋であり，体重の支持，重心の移動，膝関節の安定性に重要な役割を果たす．それゆえに大腿四頭筋の筋力不足は，スポーツに多く見られる膝関節傷害を中心とした下肢のスポーツ傷害の要因として重要視されている．この大腿四頭筋の筋力評価は，体重支持力の評価とも言える．自分の体重を支えるだけの十分な筋力があるかどうかを評価することはスポーツ活動（または荷重運動）を安全に効率よく行ううえで重要な要件となる．

　それではこの大腿四頭筋は，一般にどの程度の筋力を発揮できればよいのだろうか．スポーツ選手における大腿四頭筋の最大筋力（等尺性膝関節伸展筋力，膝関節70°屈曲位）と体重との関係は体重が重いほど筋力値が高く，両者は高い相関関係にある（r＝0.7166，図1^1））．筆者らは「ヒトは体重に見合った脚筋力を備えているのではないか」という関心のもとに，スポーツ傷害をもたない健常なスポーツ選手600例について，大腿四頭筋の筋力（等尺性膝関節伸展最大筋力）を測定し，体重で除して体重1kg当たりの筋力（kg）を算出してみたところ，その平均は1.00（±0.2）kg/kgとなった^1）．体重当たりの値が1.00ということは，片脚で発揮される大腿四頭筋の筋力が，ほぼ自分の体重値と同じであるということになる．

参考文献

1）黄川昭雄，山本利春：体重支持力と下肢のスポーツ障害．Jpn J Sports Sci 1986；5：837-841

2）山本利春：下肢筋力評価の指標—体重支持指数．臨スポーツ医2022；39：208-214

3）金久博昭：健康維持の体力からトップアスリートの体力まで—筋力からみて．J Training Sci 1992；4：31-38

4）黄川昭雄，山本利春，他：アスレチックリハビリテーションにおける下肢の機能および筋力評価．臨スポーツ医1988；5（Suppl）：213-215

5）山本利春：筋力評価とスポーツ復帰—WBIを中心として．福林　徹（編）：スポーツ外傷・障害とリハビリテーション．pp108-115，文光堂，1994

6）山本利春：アスレチック・リハビリテーションにおける筋力評価の留意点．J Training Sci 2002；14：75-84

7）山本利春：傷害予防の観点からみた柔道選手の階級別脚筋力と身体組成の評価．臨スポーツ医1996；13：262-266

8）Yamamoto T, et al：Importance of explosive muscle strength in achieving a return to competitive sports：evaluation of motor dysfunction in jump landing. Jpn J Orthop Sports Med 1998；18：320-327