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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル57巻8号

2023年08月発行

文献概要

症例報告

母趾MTP関節周辺の瘢痕組織との癒着によりクロスフィンガーを呈した長母趾伸筋腱断裂縫合術後の1症例

著者: 小瀬勝也1 赤羽根良和1 棚瀬泰宏1 山川祥平1 吉井太希1 藤田圭佑1 野々村諒太1

所属機関: 1さとう整形外科リハビリテーション科

ページ範囲:P.1001 - P.1006

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要旨 長母趾伸筋腱断裂縫合術後の理学療法は,およそ術後4週から開始し,縫合腱の再断裂や瘢痕組織の形成を予防しつつ滑走性を改善することが重要とされている.今回,創部の感染により術後7週から理学療法が開始され,術後12週にクロスフィンガーを呈した症例を経験した.本症例のクロスフィンガーは,腱と瘢痕組織間の滑走障害が起因となり母趾metatarsophalangeal(MTP)関節軸は外側に偏位するとともに,母趾を屈曲すると母趾は外反方向に牽引され生じていた.理学療法では超音波画像診断装置を用いて経時的に確認しながら,瘢痕組織から縫合腱の浮き上がりを促した後に遠位滑走を促し,慎重に屈曲可動域を増加させた.以上の理学療法を実施した結果,術後16週でクロスフィンガーは消失し,組織間の滑走性と母趾屈曲時の遠位方向への滑走性も改善した.腱の滑走性の獲得に併せた段階的な屈曲可動域の獲得が,クロスフィンガーを軽減させたとともに二次的な関節障害を抑止し,治療を進展させる手段と考えた.

参考文献

1)赤羽根良和,他:長母趾伸筋腱断裂における理学療法の試み—伸筋腱の修復時期で分類した治療プログラムについて.愛知理療士会誌2004;16:43-46
2)整形外科リハビリテーション学会:関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション—下肢,改訂第2版.pp286-289,メジカルビュー社,2014
3)齋藤慶一郎(編):リハ実践テクニック ハンドセラピィ.pp116-119,メジカルビュー社,2014
4)青木隆明,他(監修),松本正知(著):骨折の機能解剖学的運動療法—その基礎から臨床まで 総論・上肢.pp24-27,中外医学社,2015
5)青木光広,他:右示指MP関節橈側側副靱帯損傷によるクロスフィンガーの1症例.北整・外傷研誌2007;23:53-55
6)佐々木大雄,他:陳旧性PIP関節掌側脱臼骨折の1例.東日整災外会誌2018;30:110-113
7)渡邉耕太,他:足趾の解剖・バイオメカニクス.Orthopaedics 2010;23:1-6

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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