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雑誌目次

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理学療法ジャーナル57巻9号

2023年09月発行

雑誌目次

特集 運動器理学療法をどう捉えるか—統合的戦略で自らの思考の枠を乗り越える

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 運動器理学療法は,運動器の機能障害に対する検査・測定を介し,それらの結果を総合的に解釈して,患者の望む結果に向けた治療,および関連する活動制限や社会的活動への不参加の改善を目的とした一連の過程を示します.関節などの局所や一つの組織の評価・治療や,関節可動域制限や筋力低下といった結果として描出されている事象のみに焦点を絞るのではなく,機能障害を生じた根本的要因に対して理学療法を適切に実施していく必要があります.本特集では,運動器理学療法を実施するうえで評価や治療に重要な考え方を,それぞれの先生の視点で述べていただきます.

—エディトリアル—運動器理学療法におけるパラダイムシフト—統合的戦略で自らの思考の枠を乗り越える

著者: 常盤直孝

ページ範囲:P.1030 - P.1032

Point

●運動器理学療法は,構造破綻により生じた構造機能を改善するものである

●全身的な機能傷害が局所に与える影響を考えることが肝要である

●クリニカルリーズニングを中心に据え,運動機能に影響しているすべての要因を考慮し,推論を展開していく

運動器理学療法におけるクリニカルリーズニング

著者: 白尾泰宏

ページ範囲:P.1033 - P.1037

Point

●患者を生物心理社会モデルとして理解することが重要である

●クリニカルリーズニングでは,組織の治癒過程を理解し,問診から仮説立案,客観的評価でその仮説検証を行い,患者に仮説を説明し,経過に合わせて修正を加えながら治療展開する

●理学療法士は,その結果に対し内省を繰り返しながら,正確かつ応用可能なクリニカルパターンを構築する

機能解剖と運動機能障害

著者: 山崎肇

ページ範囲:P.1038 - P.1042

Point

●運動機能障害を考えるためには,機能解剖の視点が重要である

●症状は「結果であって原因ではない」ことがあり,他部位からの影響を考える

筋機能が姿勢・運動に与える影響

著者: 加藤邦大

ページ範囲:P.1043 - P.1048

Point

●筋長検査では短縮,延長だけでなく相対的な硬さの違いによる相対的柔軟性も評価する

●徒手筋力検査では筋力低下の原因(萎縮,損傷,延長,収縮様式)を鑑別する

●共同筋間におけるインバランスを評価する

生体力学的要因が運動機能に与える影響

著者: 木藤伸宏 ,   小西玲依 ,   高野翔吾 ,   岩本義隆 ,   小澤淳也

ページ範囲:P.1049 - P.1056

Point

●運動系は身体やその構成部分の動き,あるいは動くことに関与する構造の機能的相互作用を生み出す身体の生理系(physiological system)である

●運動機能とは運動系の働きのことであり,運動機能障害とは運動系の機能が障害されている状態であり,キネマティクスパターンの変化として表現される

●運動機能障害は運動系が外力とバランスと協応して生成した関節と体節の定型的キネマティクスパターンからの逸脱として表現され,その改善が運動器理学療法の目的となる

メカニカルストレスと理学療法

著者: 金村尚彦 ,   久保田圭祐 ,   加納拓馬 ,   森下佑里 ,   岡優一郎 ,   小曽根海知 ,   峯岸雄基 ,   村田健児

ページ範囲:P.1057 - P.1063

Point

●適切な関節運動は,組織損傷に対する自己修復を促進させる

●適度な運動は抗炎症作用の増加,骨腱付着部の病理的変化の防止,神経損傷軸索の再生や神経可塑性を促す

●変形性膝関節症者の歩行中の筋シナジー解析では関節負荷の増大が示唆され,理学療法評価の新たな指標となる可能性がある

筋膜機能が運動機能に与える影響

著者: 田島嘉人

ページ範囲:P.1064 - P.1070

Point

●筋膜の定義と解剖,生理,病態を知る

●張力伝達と情報伝達の視点から運動機能における筋膜の役割を知る

●筋膜の臨床応用として,姿勢や動作への影響,評価,筋膜アプローチについて紹介する

心理的要因が運動機能に与える影響

著者: 相澤純也

ページ範囲:P.1071 - P.1076

Point

●心理的準備の状態は受傷前レベルでのスポーツ復帰の可否や,再受傷率に関連する

●心理的準備の状態は膝筋力,片脚立位バランス,片脚ホップ能力,下肢バイオメカニクスと関連する

●身体機能,バイオメカニクスの過大・過小,非対称性を改善し,心理的準備の向上をめざす

自律神経機構が運動機能に与える影響

著者: 堀本祥惟 ,   尾崎純

ページ範囲:P.1077 - P.1081

Point

●運動機能と自律神経機能には密接な関係がある

●持続的な交感神経緊張状態は,全身に影響を及ぼす

●自律神経の評価は,数値での評価だけでなく,全身状態や反応をみて行うとよい

感覚情報と運動機能

著者: 鈴東伸洋

ページ範囲:P.1082 - P.1086

Point

●運動やそのバランスの評価を行う際,どの感覚モダリティが脳内の身体認知に影響しているのかを考えることが重要である

●身体図式は,運動プログラムの生成において重要な役割を果たす

●理学療法では,適切な固有感覚入力を意識し,段階を踏んで hands-on,hands-offを行うことが重要である

Close-up 重力を意識する—人体機能・構造への影響

ヒトの身体構造と直立二足歩行の重力適応

著者: 荻原直道

ページ範囲:P.1088 - P.1095

はじめに

 約46億年前に誕生した地球に,最も原始的な生物が誕生したのが約38億年前である.その後多細胞生物が誕生し,植物・動物は陸に上がり,生物は多様に進化した.そのなかから哺乳類,さらには霊長類,つまりサルの仲間が誕生し,その一員として,常習的に二足で歩く霊長類,すなわちヒトが誕生した.

 地球上に誕生し,生活する以上,好むと好まざるとにかかわらず,われわれの身体には常に重力(地球の引力と地球の自転による遠心力の合力)が作用している.普段の生活においてわれわれが重力を意識することはほとんどないが,実際にはかなり大きな力が作用している.自分の体重と同じ重さの荷物を運ぶことを考えると,われわれの身体に作用する重力がきわめて大きいことに気づかされる.また宇宙飛行士が長い間宇宙空間に滞在すると,重力が身体に作用しないため骨や筋が衰えてしまい,地球に帰ってきてから長期のリハビリテーションに取り組まなくてはならない.このことからも,地球上で身体に作用する重力がいかに大きいかが想像できよう.

 進化は,環境への適応の結果,生物が世代を経るにつれて変化していく現象である.ヒトにおいてもそれは例外ではなく,われわれの身体は,進化の長い道のりのなかで,重力環境への適応の蓄積として形作られてきた.地球上で進化してきたわれわれ人類は,身体に作用する巨大な重力にどのように適応して,二足歩行する特異な霊長類として進化してきたのだろうか.本稿では,地球上に暮らす以上,逃れることのできない重力環境への適応という観点から,ヒトの身体構造と二足歩行の進化について概説する.

全身用立位CTを用いた重力下の人体の可視化

著者: 横山陽一 ,   山田祥岳 ,   山田稔 ,   池田織人 ,   陣崎雅弘

ページ範囲:P.1096 - P.1102

緒言

 ヒトは日常の多くの時間を立位で過ごし,立位で症状が増悪する疾患が数多くある.

 これまでcomputed tomography(CT)やmagnetic resonance imaging(MRI)といった横断像が撮影される画像診断では,臥位撮影により器質的疾患の定量・定性評価を行い,生命予後改善が目標とされてきた.

連載 とびら

人は物語を生きている

著者: 小林浩介

ページ範囲:P.1025 - P.1025

 Da-Da-Da-Dum! ベートーヴェンの交響曲第5番,通称『運命』冒頭の4つの音は何を表現しているのか? 弟子のシンドラーが尋ねたところ,ベートーヴェンは「このように運命は扉を叩く」と答えたという.このエピソードが広まり,件の交響曲は『運命』と呼ばれるようになったのだが,後にシンドラーの作り話だったことが判明している.とは言え,ダダダダーン! には,運命が扉を叩く音を思わせる確かな感触がある.

 運命は突然やって来て,執拗に扉を叩き続ける.世の中には,運命に叩かれる前から扉を開けて,自ら新しい世界へ飛び出す人もいるだろうが,私は,ずっと受動的だった.完全なる無意志.いつでも運命のノックを待っていた.時に運命は,17歳だった私の前に理学療法の姿で現れて,どこまでも続く風景があることを教えた.

単純X線写真 読影達人への第一歩・第6回

気胸

著者: 中尾周平 ,   窪薗琢郎

ページ範囲:P.1019 - P.1023

症例情報

●患者情報:40歳台,女性,就労あり,喫煙歴5本/日×7年間.

●現病歴:X−1年4か月,職場の健康診断で結節影を指摘され,X−4か月,再検査にて増大を認めたため,当院呼吸器外科紹介受診.左下葉肺癌と診断され,今回手術目的で入院となった.術式は胸腔鏡下右肺S6拡大区域切除術を予定している.

●身体所見:身長155cm,体重52.8kg,Body Mass Index(BMI)22.0kg/m2.血圧130/80mmHg,心拍数80回/分,酸素飽和度(SpO2)98%(room air),体温36.4℃,呼吸音清,副雑音なし,末梢冷感なし,末梢浮腫なし.

●血液生化学検査:白血球(WBC)5,860/μL,ヘモグロビン(Hb)13.1g/dL,推算糸球体濾過量(eGFR)100.2mL/分/1.73m2,C-reactive protein(CRP)5.58mg/dL,アルブミン(Alb)4.0g/dL.

●術前呼吸機能検査:%肺活量106.6,一秒率77.60,肺拡散能力105.5.

インシデント,ヒヤリハットから学ぼう・第3回

歩行に関連した転倒のインシデント—回復期リハビリテーション病棟における理学療法場面を中心に

著者: 三浦創

ページ範囲:P.1103 - P.1106

はじめに

 われわれ理学療法士にとって,理学療法中の転倒を防ぐことは,重要なリスク管理の一つである.転倒は患者に外傷のみならず,恐怖心に伴う活動制限をもたらす可能性があり1),活動を拡大していく場である回復期リハビリテーション病棟では,最大限防止に努める必要がある.本稿では,回復期リハビリテーション病棟において実際に発生した理学療法中の歩行に関連する転倒の事例を取り上げながら,理学療法中の転倒に対するリスク管理について述べる.

難しい症例のみかた・第3回

脳出血後に自宅退院し抑うつ状態となっていた80歳台男性へのアプローチ

著者: 尾川達也

ページ範囲:P.1107 - P.1109

 本稿では,訪問リハビリテーションに従事するなかで経験した,難渋症例について解説する.筆者自身,本症例との理学療法経過のなかで多くの学びが得られたので,その学びも含めて共有していきたい.

中間管理職の悩み・第3回

女性管理者としてのワークライフバランスのとり方に悩んでいます

著者: 上薗紗映

ページ範囲:P.1110 - P.1111

ワークライフバランス,私の場合

 私の管理職人生のスタートは,前職である平川病院に着任したところからスタートしました.

 管理職ど素人から開始し,研修などを受けながら知識・スキルを増やしていきましたが,同時に進めていたのが業務の一極集中を避ける組織の仕組みづくりです.管理職である自分の仕事をできるだけ手放し,権限移譲をしていきました.意図は「自分がいなくても仕事が回る組織にすることが管理職の最終ゴールである」といったことにあります.そして,期せずしてこのスタンスは後に自分自身を救うことにもなりました.

臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう・第6回

評価⑤ 日常生活活動評価,手段的日常生活活動評価

著者: 福原隆志

ページ範囲:P.1113 - P.1117

はじめに

 日常生活活動(ADL)とは,生活のなかで日常的に行われる一連の活動のことであり,食事,更衣,整容,排泄,入浴といった多くの人が共通して行う活動に加え,食事の用意,自動車の運転,パソコンの操作,というように個別性が大きく表れる活動でもあります.リハビリテーションは関節可動域(range of motion:ROM)や筋力といった項目ごとの改善はもちろんですが,楽に立ち上がる,歩けるようになるというように,しばしばADLの改善を目的として行われます.そのためADL評価は理学療法士にとって非常に重要な評価と言えます.

 一方,学生にとってADL評価は「難しい」と感じる評価の一つです.理由として,ADLは複数の動作・要素の組み合わせで成立しており,さまざまな評価結果を統合し考える必要があること,さらに本人の身体機能や能力だけでなく,周囲の環境の影響を大きく受けることも要因の一つと考えられます.本稿では,診療参加型臨床実習を進めるうえで,学生および実習指導者が説明すべき・学生が知っておくべきポイントについて説明します.

私のターニングポイント・第44回

臨床のすべてがターニングポイント

著者: 大脇毅

ページ範囲:P.1112 - P.1112

 理学療法士は出会いが多い仕事です.その出会い一つひとつに感謝しながら,すべて私の成長の助けとなりました.当時,私は自費分野のリハビリテーションで働くにあたり,経営のことや患者さんとの人間関係の構築,自分の仕事に対する姿勢などに悩んでいました.ある時,患者さんから,「君の悩みの答えはすべて論語に書いてある」,「君は論語を読みなさい」と教えてくださり,毎日15分,論語を読む日々が続きました.この本との出合いが臨床を変えるきっかけでした.

 私は卒後10年目で独立し,今は自費のサービスに携わり5年目です.自費分野では患者さんの今後の予後を明瞭にし,サービス提供後に結果を出さないと納得されません.日々の臨床のなかで満足のいく結果に至らないこともありました.自分の至らない点を改善するため,日々,勉強会にも参加し,本も読みました.それでもなかなか成長できたと思えずに悩んでいました.

My Current Favorite・18

学会から始まった多施設共同研究

著者: 髙良光

ページ範囲:P.1120 - P.1120

現在の関心事は?

 私は以前からくも膜下出血後の急性期リハビリテーションについて興味がありました.くも膜下出血は脳卒中の一つですが,脳梗塞や脳出血に比べ症例数は圧倒的に少なく,少々マニアックな分野です.脳血管攣縮期の離床は安全か,有効性はあるのか,など臨床疑問があったため,単施設データを集めて細々と学会発表をしていました.

報告

吸気負荷法の違いによる横隔膜筋厚の比較

著者: 辻洋文 ,   吉川崚介

ページ範囲:P.1121 - P.1125

要旨 【研究の目的】本研究では,吸気筋トレーニングについて,吸気負荷法の違いによる横隔膜筋活動への影響を,超音波画像診断装置を使用して比較することを目的とした.【方法】健常男性6名を対象とした.吸気負荷法は,吸気負荷閾値装置を使用した吸気法(以下,スレショルド法)と腹部に巻いたバンドに抗して腹壁を膨隆させる呼吸法(以下,腹式呼吸法)とし,自然呼吸と合わせて3条件で比較した.各条件で超音波診断装置を用いて,安静呼気終末位と最大吸気位の横隔膜筋厚を測定し,横隔膜筋厚変化率(change ratio of diaphragm thickness:ΔTdi%)を算出した.統計処理は各条件のΔTdi%を反復測定分散分析の後,Holm法で多重比較検定を行った.【結果】腹式呼吸法は自然呼吸,スレショルド法に比べてΔTdi%が有意に大きかった.【結論】腹式呼吸法は,スレショルド法に比べて横隔膜筋活動の増幅が可能な負荷方法と考えられる.

健常高齢者におけるPosner課題反応時間の信頼性の検討

著者: 秋山和也 ,   竹内真太 ,   西田裕介

ページ範囲:P.1127 - P.1132

要旨 【目的】高齢者の空間性注意を評価するために,Posner課題反応時間を用いた空間性注意の評価が有用と考えられる.本研究の目的は,Posner 課題反応時間の健常高齢者での信頼性を明らかにすることとした.【方法】対象者は健常高齢者20名とし,Posner 課題を1セッション160試行,合計2セッション実施し反応時間を測定した.統計解析はBland-Altman分析,級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)のcase 1,最小可検変化量(minimal detectable change:MDC)の95%信頼区間であるMDC95の算出を行った.【結果】Bland-Altman分析の結果,系統誤差は認めなかった.ICC case 1はすべての条件で0.70以上となった.MDC95は74〜92msであった.【結論】健常高齢者を対象とした160試行のPosner課題では高い信頼性を得られることが明らかになった.また,Posner 課題反応時間の健常高齢者におけるMDC95が明らかになった.本研究の結果は,空間性注意の評価方法の確立に貢献すると考えられる.

症例報告

Anterior interval部の膝蓋下脂肪体に疼痛を呈した1症例

著者: 吉井太希 ,   赤羽根良和

ページ範囲:P.1133 - P.1138

要旨 【目的】非外傷性要因により,anterior interval部痛が惹起された症例経験について報告する.【症例紹介】症例は60歳台の男性である.主訴は歩行時のanterior interval部痛であり,下肢伸展挙上テスト(straight leg raising test:SLR)にて再現痛が認められた.そこで,SLR時のanterior interval とその周辺部に対し,超音波診断装置を用いて観察した.SLRの角度が増大するに伴い,大腿骨顆部は前方に偏位した.また,膝蓋下脂肪体は表層かつ脛骨側に押し出され,anterior interval内で膨隆した.Anterior interval の遠位部には瘢痕様組織が観察された.【運動療法と結果】運動療法では瘢痕様組織の柔軟性を改善させたが,歩行時痛は著変しなかった.次いで,SLR角度の増大に伴う大腿骨顆部の前方偏位に対して,半膜様筋を中心に伸張性を改善させたところ,歩行時痛は消失した.【結論】Anterior interval 部痛の多くには瘢痕組織が関与している.しかし,本症例は大腿骨顆部の前方偏位といった非生理的な運動が,anterior interval に侵害刺激を加え歩行時痛が惹起されたと考えた.

臨床のコツ・私の裏ワザ

効果的な呼吸理学療法に向けた医療機器活用のコツ

著者: 石光雄太

ページ範囲:P.1139 - P.1141

 慢性呼吸器疾患に対する酸素療法や薬物療法,運動療法を含む包括的呼吸リハビリテーションの導入は,自覚症状や運動耐容能の改善に有効である.一方,病状の進行に伴い重度の呼吸機能障害を呈した症例では,酸素療法や薬物療法だけでは十分に自覚症状が改善せず,呼吸困難から十分な運動療法を提供できない症例も経験する.

 近年では慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や間質性肺疾患に対し,高流量鼻カニュラ酸素療法(high-flow nasal cannula oxygen therapy:HFNCOT)により快適性を高めた状態で運動強度・時間を向上させるといった報告も増えてきている1,2)

書評

—伊藤俊一(監修),仙石泰仁,遠藤達矢(編集)—「—<PT・OTのための測定評価シリーズ> 3—MMT—頭部・頸部・上肢 第3版/—<PT・OTのための測定評価シリーズ> 4—MMT—体幹・下肢 第3版」

著者: 森山英樹

ページ範囲:P.1119 - P.1119

 理学療法士は日常的にMMTを行います.しかし,ちゃんとできていると自信をもって言える人がどのくらいいるでしょう.というのも,MMTは簡単ではないと思うからです.段階4での抵抗の中等度は曖昧で,主観に依るところが大きいのは,その最たるものです.ほとんどの方が学んだMMTの教科書—Danielsらの徒手筋力検査法は,第6版でのメイクテストからブレイクテストへの大きな転換をはじめ,信頼性や妥当性を高める方向で版を重ねてきたように思います.

 本シリーズ監修者の伊藤俊一先生は,長年,日本の理学療法の標準化に心血を注がれています.本書を含む「PT・OTのための測定評価シリーズ」はその一環と理解しています.本書は,Danielsらの徒手筋力検査法の最新版である第10版に準拠したうえで,固定と抵抗や代償運動の防止を明瞭に示し,実際の臨床現場に即した別法や注意点なども説明することで,実用的な測定の信頼性と再現性を高めたMMTの標準化の集大成をみせています.また,今回の改訂で編集者に加わった遠藤達矢先生は,学生時代から15年以上にわたる伊藤先生との師弟関係を受けてか,新たな加筆箇所も統一感をもって編集されています.

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目次

ページ範囲:P.1026 - P.1027

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.1081 - P.1081

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.1144 - P.1145

編集後記

著者: 福井勉

ページ範囲:P.1146 - P.1146

 東京には海外からの旅行者が戻ってきて,有名な観光スポットに限れば日本人より多いのではないかと思うほどになりました.海外の理学療法士と接する機会も,学会を中心に以前よりは格段に広がったのではないでしょうか.また理学療法士の国内認知度は,歴史の長い国と比較するとまだまだかもしれませんが,それでも以前と比較すると隔世の感があります.さて,そういったなかでわが国の理学療法はどのように発展してきているのでしょうか.

 本号の特集は「運動器理学療法をどう捉えるのか」という視点です.ゲストエディターの常盤直孝先生のアイデアをもとに,長い間スタンダードとして考えられてきた領域に加えて,近年注目されてきている新たな運動器理学療法の側面を加えて描いていただきました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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